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【読書感想文】福岡安都子『国家・教会・自由:スピノザとホッブズの旧約テクスト解釈をめぐる対抗[増補新装版]』

名著である。ただ、私がこの本に挑んだのは、個人的なわけがある。実は、筆者が個人的な知り合いで、最後にお会いしたのは、大学院の卒業式だが、実は高校の部活の後輩なのである。それで、難しいのは承知で、しかも、法学という私の苦手分野であることも認識したうえで、挑戦したのである。内容は、前半はレモンストラント派というオランダ16世紀の政治の一派の歴史的な動きを詳細に叙述する歴史的な部分である。わりにこの辺はよく理解できた。ただ、真ん中からの、ホッブズとスピノザの旧約聖書のテクストをめぐって、どこに共通点と相違点があるのかという分析は、詳細かつ複雑で、とても簡略に要約できるほど理解できたとはいいがたい。ただ、ホッブズは、主権者の権威を認めることで、内面の自由は保持した、スピノザは、神学の限界を定めて、哲学する自由を追究したというおおまかな流れだけ、かろうじて理解できた。最後の補論のグロティウスに至っては、とても理解できたとはいいがたい。やはりオランダの自由な哲学の気風の源になっている人の一人だということだけはかろうじて理解したが。ただ、どんな難しい読書でも、名著ならば、論理の展開を追うことで、知的な訓練を行うことができるというのはよくわかった。私自身も本を出版したいと考えているが、学術書とは本当に研鑽による積み重ねによるものなのだな、とても手が届かないと舌を巻いた次第である。福岡さんのこれからのご活躍に陰ながらお祈り申し上げたい。

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