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【読書感想文】國分功一郎『目的への抵抗』新潮新書

東京大学の哲学の先生、國分功一郎の名著である。これも夫に勧められて読んだのだが、コロナ禍における政府による不要不急の外出の制限が、個人の自由の権利の阻害ではないかと警鐘を鳴らす本である。アガンベンという著名な哲学者を援用しつつ、移動の自由の制限が最大の自由の制限なのではないかと論じている。なぜなら、移動が自由にできなくなったら、奴隷状態と同じであるからである。逆に自由に移動できれば、奴隷状態にはならない。また、行政の権限が巨大で、立法府を凌駕しているとも警鐘を鳴らしている。学期末の自由時間に行われた特別講義という形をとっているので、読みやすいが、提起している問題は身近で、かつ深刻である。コロナ禍における不要不急の外出の制限は、必要かもしれないが、やはり大きな問題をはらんでいるのである。自由の問題と大きく関係している。すべてが目的のために制限されてしまえば、そこには自由がないのである。目的は遊びのための遊びを許さない。目的はすべてを目的化する。そこに自由はない。アーレントやベンヤミンなども登場し、國分氏は持論を展開する。私自身は、マスクの着用や不要不急の外出の制限について、深刻に考えたことがなかったので、目からうろこだった。みんなのために我慢するという発想が、あまりに日本的で、個人の権利というものをないがしろにしているという考えに思い至らなかったのだ。この本は、答えを与えるものではない。こういう考え方もあると、楔を打ち込む、一石を投じる役目を果たす本なのだと思う。哲学とは、永久に思索を続ける、答えのない営みなのかもしれない。

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