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vol.13 凪良ゆう「汝、星のごとく」を読んでみた(本屋大賞受賞作)

2023年本屋大賞受賞作

凪良ゆう「汝、星のごとく」(講談社)を読みました。

私にとって初めての凪良先生の作品になります。

文庫派の私は「流浪の月 」(創元文芸文庫)を先に読むつもりだったのですが、ネットで注文し届いたのは、「流浪の月  シナリオブック」・・・。

一応、中をパラパラめくったのですが、映画の俳優の方が読む台本のような感じで、何か違うなと…。

*流浪の月は2022年5月に広瀬すず主演で映画化されています 

買いなおすべきか迷っていたところ、ABCラジオ「今村翔吾×山崎怜奈の言って聞かせて」に凪良先生がゲスト出演し、先生の話が面白く、まずは最新の「汝、星のごとく」を購入して読むことに。


あらすじ

前情報としては、2度目の本屋大賞受賞作であるということのみ。

Amazonなどでレビュー数も非常に多いことは分かっていましたが、ネタバレは好きではないので、レビュー内容まではいつも見ないようにしています。

物語は、青野櫂(17歳)と井上暁海(17歳)の二人が愛媛県今治市を舞台にして進んでいきます。

青野櫂は相方の久住尚人とともに青年誌の漫画の連載を狙う将来有望な青年。

井上暁海は母親と父親の不仲に翻弄されている高校生。

青野櫂は母子家庭で、母親は男に依存しやすく、子供に愛情を注がない様子。

このときはまだ、ありがちな主人公とヒロインの青春物語なのかな、と思っていました。


読み進めていくと、この物語の中で最も刺さる言葉に出会いました。

もちろんお金で買えないものはある。
でもお金があるから自由でいられることもある。
たとえば誰かに依存しなくていい。
いやいや誰かに従わなくていい。
それはすごく大事なことだと思う。

何故あなたがこの言葉を言えるのか?という人が発した言葉なのですが、何のために働かなくてはならないのか、何故お金を稼ぐ必要があるのか、といった真理のようなことを言葉でした。

日頃感じているもやもやを言語化してもらえると、とても清々しい気持ちになり、感謝の気持ちさえ湧いてきます。


誰かに幸せにしてもらおうなんて思うから駄目になる。
自分で勝手に幸せになれ。
自分は自分を裏切らない。

これは青野櫂の言葉です。
男に依存しやすく、捨てられやすい母親に対しての思いなのですが、確かにそうだなと、半分だけ共感しました。

半分だけというのは、自分は自分を裏切らない、という文言です。

まず、1日の予定を立てても1日が予定通り進むことはない、そもそも予定を立てられないこともよくある、など自分は自分を簡単に裏切ることを良く知っているので、半分だけ共感しました。

青野櫂自身も「自分に言い聞かせる」という書き方がされているので、著者自身にも思い当たることがあるのかな、という思いで読みました。


内側から湧いてくるものを解体して再構築していくことで、
俺はいやでも自分という人間を理解させられる。

これも青野櫂の言葉です。
漫画の物語を書く際の葛藤を表現したものだったのですが、これは凪良先生の弱さであり、強さでもあるところが表現されていると思いました。

2006年にデビューされてから10数年もの間、ずっと葛藤されてきたのかと思うと頭が下がるばかりだなと。

また、ラジオに出演されているときには、今村翔吾先生と同じくらい話が面白く、かつ、おしゃべりで、本の内容の濃さとのギャップが凄いなと。


自分がどうありたいかの選択権は、いつでも自分の手の中にある。

これは、井上暁海の言葉です。

他人を必要とするかどうかを葛藤し、導き出した答えではあるのですが、これは理想であって、現実には難しいということも分かりつつ思っている言葉でもありました。

自分自身も10年以上スーパーで真面目に働いてはいましたが、「自分がどうありたいか」については、この時期には何ひとつ考えたことはなかったように思います。

「自分がどうありたいか」を考える今の時間も、なかなかしんどいのですが、選択権は自分が持っている、と思えれば少し気持ちが楽になる気がします。


まとめ

この作品は、長編ミステリーを読み終えたような爽快感もあるのですが、何より、この作品を書いた凪良先生は凄いなと思うばかりでした。

青野櫂目線のパート、井上暁海目線のパートに分かれて話が進むのですが、男性の気持ちと女性の気持ち、どちらにも共感することができ、出てくる周りの人たちの行動や言動にも理解できるところもあり、良い人たちばかりが出てくる話ではないのですが、心の底から読んでよかったと思える作品でした。

そして、「星を編む」(講談社)が続編として2023年11月に出されていることを読み終えてから知り、少し動揺しています。

この続きをどう描くのか、このエンディング以外の終わり方があるのか、もしくはスピンオフのようなものなのか、考えるだけでそわそわワクワクしてしまいます。

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