vol.11 辻村深月「傲慢と善良」を読んでみた
映画化決定
辻村深月さんの「傲慢と善良」(朝日文庫)を読みました。
文庫の発売が2022年11月なのにも関わらず、未だに書店で平積みされている所が多いので、ずっと気になっていた作品です。
辻村先生の作品を読むのは初めてになるのですが、「かがみの孤城」とどちらを先に読むかで迷っていましたが、映画化もされるということなので、まずはコチラから読むことに。
あらすじ
物語は、39歳の主人公である西澤架と婚約者の真実(まみ)との話。
真実が「あいつが家にいるので帰れない」というところから始まります。
辻村先生が、過去にどのような作品を書いたのか、この作品のカテゴリは何なのかを事前に調べることなく読み始めていたので、ミステリー要素満載のスタートは大歓迎でした。
読み進めていくと「婚活」の話が出てきます。
確かにそうだな、という一文がありました。
将来の結婚相手を探しに行くということが本来の目的であるのに、婚活をすること、それ自体に目的が変わってしまっている悲しさが、この一文にギュッと詰め込まれていて、一気に主人公に自分を重ねてしまうことになりました。
1度目、2度目あたりは、『ピンとこない』という言葉で片付けられても、3度目、4度目と回数を重ねるごとに、「出会うために出会う」ようになり、本当に心身ともにくたくたになります。
婚活をするという選択、婚活をしないという選択のどちらを取っても結婚まで結びつかなければどちらも地獄。
であるならば、婚活をして失敗するよりも、婚活をせず自分から傷つきにいかないという方が、まだ心穏やかに過ごせそうです。
100点満点?
これは主人公の思いが描かれた一文なのですが、なかなか耳が痛い言葉でした。
今は、行政書士になり個人事業主としてやっていく、ということが明確になっているのですが、まだ転職をしていない時期の自分を思い出し、ずっしりと重い言葉に聞こえました。
新卒での就職先は就職サイトにいくつも登録して、各社にエントリーし、面接・筆記試験を受け決まったところではあるのですが、完全に誰からの影響もなく「スーパーで働きたい」といった気持ちではなく、『妥協』によるところが大きかったと思います。
もっと大手を狙うべきだったのでは?
そもそも小売業に職種を絞っての就職活動自体が妥協なのでは?
そんな思いも今の私にはあるのですが、「当時の私」は自分が就職した会社は100点満点中100点の所でしたので、それはそれで幸せだったのかなという思いもあります。
刺さった小説
約500ページという少し分厚めの作品ですが、難しい言い回しがなく、スッと入ってくる言葉が多いので、物語の展開が気になり、どんどん読み進めることが出来ます。
本の解説をしている朝井リョウ先生によると、辻村先生の作品「島はぼくらと」「青空と逃げる」この2つの作品は、「傲慢と善良」に出てくる人物が登場するとのこと。
「かがみの孤城」を次に読もうと思っていたのですが、どれから読もうか少し考えてから決めようと思います。
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