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ペンフィールド情調オルガンがほしい

ペンフィールド情調ムードオルガン。
ルビ機能実装、と聞いて最初に「入力してみたいな」と思ったのが「ペンフィールド情調ムードオルガン」。ルビ機能初めて使うんですけど、ちゃんと情調にムードってルビが振られていますか? 大丈夫ですか? うん、大丈夫みたいですね。

ペンフィールド情調ムードオルガンとはフィリップ・K・ディックのSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に登場する、人工脳刺激によって自分の気分を好きなように調整できる機械です。
ダイヤルを回して数値を合わせると、楽しい気分になったり、怒りが抑えられたりします。また「割りきった職業人的態度」や「テレビを見たくなる欲求」などというかなり具体的な「気分」に設定することもできて、作中の世界で一定以上の生活をしている層にとっては生活必需品に近いものとなっているようです。

初めてこの小説を読んだとき、とにかく印象に残ったのがこの情調ムードオルガンでした。
というのも、私の20代はまさに「気分」との戦いで、精神病院に入退院を繰り返すありさまだったので、情調ムードオルガンさえあればもうちょっと穏やかな日々が過ごせたのではないかなぁ、と。

いや、今でもやっぱりちょっとほしいかな、情調ムードオルガン。

でも情調ムードオルガンがある世界には情調ムードオルガンがあるなりの「不都合」があるらしくて、主人公リック・デッカードの妻イーランは情調ムードオルガンを使用することの不健康さに不安を覚えて、わざとダイヤルを抑鬱状態に合わせたりしています。(ちゃんとタイマーで数時間後に自動的に抑鬱状態を脱せられるような設定もしています。なんて皮肉な)

ペンフィールド情調ムードオルガンの技術は兵器にも応用されています。
ペンフィールドというのがそもそも何なのかよく分からないですが、作中ではペンフィールド式とかペンフィールド波とか表現されていて、そういう架空のエネルギーの波みたいなものがあるようです。 
そして相手が行動不能に陥るほど強いペンフィールド波を発生させることができる装置もあって、賞金稼ぎバウンティハンターである主人公リック・デッカードは人間そっくりの逃げ出したアンドロイドを捕まえるためにその装置を使用します。

さっき「兵器にも応用」と書いたけど、もしかしたら兵器が先で、日常生活で使う情調ムードオルガンが後なのかもしれません。そもそもこの小説で描かれているのは明らかにユートピアではなくディストピア世界で、私は月例検査を受けて適格者レギュラーであり続けることはおそらくできないし、アンドロイドを見分けるフォークト=カンプフ感情移入エンパシー度検査法を正しくパスできるという自信もなぜだかないです。

ペンフィールド情調ムードオルガンはとてつもなく怠惰で退廃的な、夢のある機械です。それでも私は、これがほしい。ほしいほしいと言いながら、今日もふらふらと日常を歩いています。

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最近、ペン画のタッチをちょっと変えてみたり模索中です。

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