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「カラマーゾフの兄弟」に登場する食べ物について
去年「カラマーゾフの兄弟」を読んだ時に印象に残ったフレーズがいくつかあって、たとえばこれはイヴァンとアリョーシャが食堂で会話しているシーンのイヴァンの台詞。
たとえ物の秩序を信じないとしても、僕にとっては、春芽を出したばかりの粘っこい若葉が尊いのだ。瑠璃色の空が尊いのだ。時々なんのためともわからないで好きになる誰彼の人間が尊いのだ。そうして、今ではとうから意義を失っているけれど、古い習慣のため感情のみで尊重しているような、ある種の功名が尊いのだ。さあ、お前の魚汁が来た、しっかりやってくれ。
イヴァンとアリョーシャ、この兄弟の会話はとにかくおもしろい。少々意地悪で冷淡でひねくれたイヴァンと真っ直ぐなアリョーシャ。私はこの2人の会話ゆえに「カラマーゾフの兄弟」が日本でアニメ化したらいいのに、と思っている。
けど今日の主題はそれじゃなくて【魚汁】の部分だ。魚汁がどんな料理なのか分からないけれど、この異国情緒のある響きに好意を抱いた。
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私が読んだのは図書館で借りた岩波文庫版(米川正夫訳)で、その後、新潮文庫版(原卓也訳)を古本で手に入れたので、今手元にあるのは新潮文庫の方だ。新潮文庫版の当該箇所は「魚汁」ではなく「魚スープ」となっていてルビはない。
とにかくウハーとは魚のスープではあるらしかった。
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最近になってたまたま購入したこの本に、ウハーのレシピが載っているのを発見した。
「ウハーだ!」って思わず声が出てしまった。写真付きで載っている。本当に存在している料理だったんだ。最初から検索してみればよかったんだけど、日本語で「ウハー」と検索しただけでわりと情報が出てくることが分かった。
この本の情報とネットで得た情報を組み合わせたレシピでウハーを作ってみることにした。
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完成。
今回はスーパーに売っていた銀鮭を使ったけど、合わせる魚はいろいろあるらしくて、本には「サケ、タラ、マス、スズキなど」と書いてあった。タラもよさそうだな。
本物を食べたことがないので味の再現度は分からないけれど、魚の出汁にローリエとディルの風味が利いていてけっこう美味しくできたと思う。これはまた作りたい。何より、これをイヴァンやアリョーシャが食べていたのかと思うと、うれしくなる。
もう1つ、カラマーゾフの兄弟で気になった食べ物について。
それから、いいかい、チーズに、ストラスブルグの饅頭に、燻製の石斑魚に、ハムにイクラに……いや、もうみんなみんなあそこの店にありったけ註文してくれ、(中略)菓子に、梨に、西瓜を二つか三つか、それとも四つ――いや、西瓜は一つでたくさんだ。それからチョコレートに、氷砂糖に、果物入氷砂糖に、飴に――いや、あの時モークロエへ積んで行ったものはすっかり要るんだ。
「ストラスブルグの饅頭」も「燻製の石斑魚」も気になるけど、一番気になるのは「果物入氷砂糖」だ。お菓子だろうか。「果物入氷砂糖」に「モンパンシエ」とルビが振ってある、その言葉の具合が素晴らしいと思う。
ちなみにこのシーンは楽しげな料理注文場面などではなく、異様な興奮状態のドミートリー(イヴァンとアリョーシャの兄)がお使いの少年と役人のペルホーチンに捲し立てているところで、不吉な緊張感がある。
そこに登場する「果物入氷砂糖」、この字面だ。
新潮文庫版の当該箇所は「それにチョコレートと、ドロップと、ゼリーと、ヌガーか、」となっていて、おそらく果物入氷砂糖と対応しているのは「ゼリー」だろうと思う。食べ物の表記について新潮文庫版は「簡単に、分かりやすく」がモットーらしい。
「モンパンシエ」とカタカナで検索するとフランスの地名や人名ばかり出てきてしまう。それでいろいろと検索してモンパンシエの綴りが Монпансье だと突きとめた。
Монпансье の Wikipedia ページを見ていて発見したのがこの写真。
![](https://assets.st-note.com/img/1681543796149-MDprPDD97C.jpg?width=1200)
Author: B9hetare
CC BY-SA 3.0のもとで公表された Wikipedia の写真を二次利用しています。
сакума(サクマ)って書いてある! サクマドロップスじゃないか。
Google 翻訳に頼った内容を信じるならば、モンパンシエとは飴の一種で、いろんな色があり、フルーツの味がするらしい。
サクマドロップスもモンパンシエの一種ということなんだろうか。ドミートリーが注文していたのはこういう可愛らしい感じのお菓子なのか。
もし分かる方がいたら教えてください。
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