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テンプレートデザインの危険性。

Adobe Illustratorを開くと、テンプレートデザインを見ることができて、これがなかなかよかったりする。

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上記:Illustratorのテンプレートデザインの一部


けれど、テンプレートを必要とする人に共通することが、これらのテンプレートを衰弱させ、悪趣味なものに変える。

それは、「デザインの理由が分からない」ということだ。

学生時代に習ったことだが、一般的に人は0.3mmの違いから違和感を感じるようになる。けれど、デザインを知らない人がテンプレートデザインを触ると、0.3mm以上動かすことになり、デザインは崩壊する。テンプレートの宿命だが、文章を入れ替えれば0.3mm以上変化し、さらに、効果的ではない改行や位置を変えられたり、カラーの変更を施されたりする。

デザインにはすべて理由があり、理由のないデザインはデザインとは言えない。これはデザインされたものはすべて、社会生活に作用するように作られているからだ。
例えば、丸の内のオフィス街のようにデザインされたものに、自然物のような複雑さはない。逆に人間の足が及ばない自然環境をGoogleで検索すれば、オフィス街との違いは明白にわかるだろう。さらに、自然物である人間の脳は未解明の部分が残されているし、宇宙については未解明の部分が多い。これは歴史的な平安京でも、現代のオフィス街でも同じことが言え、専門家がデザインをしているから理由が明確になり、人々の社会生活に混乱が生じないように設計される。ということは、デザインの理由と作用がわからないままデザイン行為を行えば、自ずと複雑になり、混乱などの不利益が生じるのは明らかだ。
つまり、デザインの理由や作用がわからないのなら、テンプレートデザインを触らない方が身の為なのだ。

これは、建築の分野になれば顕著となり、人の命が関わる以上、アーキテクチャデザイン(建築)を触る(設計・決定)のには資格が必要となる(敢えてデザインという単語を使った)。資格が必要とならない規模でも、無資格の人が作ろうとすれば、提出資料が増える。

建築の分野は法律で規定されているが、どの分野であっても、デザインを触るという行為には、危険が付き物だ。世の中にはプロダクトデザイン、グラフィックデザイン、Webデザイン、UI/UXデザインの他にも多くのデザインが枝分かれしている。危険なプロダクトはリコールの対象となり、グラフィックでもWebでも過剰な表現は規制の対象となる。法規の対象となるのは稀なことだが、これらはすべて理由があることを物語っており、専門家ではない人が触れば無秩序な危険物が出来上がる。

テンプレートを作るのはプロフェッショナルだが、テンプレートを触るのは素人かレベルの低い人であることが、テンプレートデザインを無意味なものにしている。「テンプレートを使えば安く済むかもしれない」ぐらいの気持ちに留めておいて、触ることは専門家に任せた方が、ビジネスの寿命が縮むことは少なくなる。ビジネスとデザインの関係性を侮ってはいけない。法人という法律上の人の命がかかっているのだ。

余談だが、一例として、私のYouTubeチャンネルで平面デザインにおける基本四原則を配信している。平面という二次元の世界でも、多くのルールの上でデザインが行われていることを理解する一助になれば幸いだ。

さらに言えば、これもテンプレートの宿命だが、誰にでも利用可能ということは、目的達成のための最良のデザインではないということだ。これは既製服とオーダーメイド服との違いと似ている。私自身、オーダーメイドでスーツを作ったことがあるが、そのときの着心地や動きやすさは、お直しした既製品のスーツと比べると、オーダーメイドスーツの方が格段に優れていた。私の体のために設計された服は、私にとって最良のスーツでもあったのだ。デザインはこれと同じだ。「お直し=調整」と考えたら、たとえテンプレートデザインであっても素人が調整することの無謀さがわかるのではないだろうか。そして、「オーダーメイド=オリジナルデザイン」と考えたら、事業にとって最良の選択となるのは、一からプロにデザインしてもらうことと言える。

少し長くなってしまったが、以上がテンプレートデザインの危険性だ。これを読んで、デザイン行為の意識が高まってくれたら幸いだ。

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