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ハイキング 蓬莱峡ウォーク


蓬莱峡 (ホウライキョウ)



昨日は天気が悪い予報だったので植物園でも
行くつもりだったのだが、呆れるほどの晴天
だったので予定を急遽変更して、蓬莱峡へと
向かう事にした。午後には雨が降る可能性も
あり、雨対応にも備えた装備を揃えたとこで
さあ出発である。


さて、この蓬莱峡は何処であろうか?あまり
一般的ではないトレッキングポイントとなる。
では、まずはそのロケーション解説をしよう。


蓬莱峡は六甲山の裏側、つまりは北側に位置
する峡谷となっており、有馬高槻構造線へと
沿って流れている太多田川(オタダガワ)の
上流部から、支流の座頭谷川との合流地点に
位置する峡谷となる。


この渓谷は、兵庫県の砂防の発祥の地として
重要な役割を果たしている場所。下流の二級
河川武庫川へ、太田田川から土砂流出による
河道閉鎖や氾濫するのを防止する為に、その
上流で砂防・山腹工事が明治28年に始まり
大正5年までは積極的に実施され、昭和には
河道侵食を防ぐ為の更なる床固工、ダム工が
営々と施行されてきたのである。このエリア
は兵庫県砂防事業の発祥の地でもありながら
現在においても下流の地域は、砂防施設より
安全性が守られている重要なエリアとなって
いるのである。


では、何故、砂防の為の床固工やダム工など
が必要なのかと云うと、この蓬莱峡の土壌に
問題があるからである。この土地を占有する
のは花崗岩(カコウガン)である。この土壌
は雨風でその形を変えていく。岩峰の稜線が
鋸歯状にギザギザに鋭く尖るのは、その土台
が風化していくからなのである。ちょこっと
登ってみると次から次から土壌が崩壊すると
云う断層破砕帯というものであり、地質学上
は『バッドランド(悪地)』と呼ばれている
地形なのだという。こんなにも険しい地形は
世界でも類のない特異エリアと言われている。


そんな鋸歯状の稜線があまりにも非現実的な
風景であることから、映画やテレビドラマの
ロケ地としてもしばしば採用された場所でも
ある。イチローが走るCMにも使われたこの
ロケーションは見応えのあるものとなる。




このエリアは座頭谷とも呼ばれ、京の地から
ここを通りかかった座頭(ザトウ)が、道に
迷った挙句、行き倒れになり手厚く葬られた
という言い伝えからこの名が付けられている。
この辺りは少し間違えたら直ぐに迷う事から
本来なら、ひとりで行く場所ではないのかも
知れない。



さて、実際のコースの説明に入るとしよう。
阪急の宝塚駅を降りてバスのロータリーへ。
2番乗場で『蓬莱峡経由有馬温泉行』の阪急
バスで揺られて約15分『知るべ岩』で下車。
帰り道もちゃんとチェックする。偶数時間の
半に下山のバスがある。2時間に一本なので
下山の時間をちゃんと見てやらないと2時間
待ちぼうけを喰らう事になる。






尼信の山荘の上流に架かる曲がり橋を渡るが
ここの入口はそう明記されていないので迷う
可能性がある。ハイキングコースとして正式
なルートになっていないからである。この橋
は別名、『万里の長城』と呼ばれて何となく
納得できる。橋の上から下を眺めるてみると
左手は堰堤が続く座頭谷川、右手が太多田川
の本流。この橋を渡った後はひたすらに細い
道を突き進むのである。



こんな道に盲目の身で迷い込んだらと思うと
恐ろしいばかりである。所々に迷わない様に
目印があるので助かるのだ。他のハイキング
コースとかなら、人が歩いてる姿があるけど
ここはスタンダードコースではなく、今回は
一組のカップルとすれ違った以外には誰にも
会う事はなかった。ひたすら黙々と歩く。




さて、この蓬莱峡は実を言うと以前の記事の
ホラーシリーズで書いたキイロスズメバチに
私が追いかけ回された場所である。その時は
逃げる事で精一杯であり、撮影した事のない
キイロスズメバチを少しでも撮影できたらと
の期待もちょっとはあり、スズメバチ探しの
目的もあってのリベンジ目的の登山であった。


あの時に私がキイロスズメバチに襲われた時
の理由はTシャツを川の冷水で洗った後に
バンバンと大きな音を立てて水気を切った事
に要因があったと思っている。スズメバチは
派手な動作や大きな音に対し刺激され襲って
きたのであり、その点を考慮して行動すれば
前みたいに襲撃はしてこないだろうと踏んだ
のである。だが、そんな期待には一切の反応
もなく、スズメバチ撮影な空振りに終わった
のであった。


手ぶらでは面白くないので、今回の蓬莱山の
自然観察記録は次に挙げておく。


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蓬莱峡で出会えた植物たち(あいうえお順)

■裏白 (ウラジロ)

羊歯(シダ)網に属する胞子植物であり、その
葉の並びがとても美しいものとなる。シダの仲間
の為、胞子により範囲拡大を図る植物であるが、
ソーラス(胞子嚢)を7月頭につけると同月中に
胞子を全てばら撒く。他のシダ類が裏側が綺麗で
ないのだが、このウラジロは7月を除けば裏側を
見ても真っ白で美しい。この事からウラジロの名
で呼ばれると同時に、正月の鏡餅の飾りとしての
蜜柑の台座に使われる。これは裏の白が清廉潔白
の意味にもなるのと同時に、葉の開いた120度
の角度が黄金比率を表しているからである。この
植物は園芸のプロも手懐けるのは困難な植物でも
あるのだ。



■大葉夜叉五倍子 (オオバヤシャブシ)

痩せた土地、荒れた地に根を張る植物として活用
されるものである。砂防用途に展開され土壌破壊
を抑制する力を持つ植物である。ここ蓬莱峡では
計画的に種子をばら撒かれたものと考えられる。


■狐ノ孫 (キツネノマゴ)

夏を感じさせる可愛いその花はキツネノマゴ。
咲いている花はひとつか、ふたつと控えめに咲く
のがこの植物の特徴。あまり、ワサッと沢山花を
咲かせるよりも地道に少しの花を咲かせて蜜との
交換で虫に受粉をお手伝いして貰う、そんな謙虚
な植物。草丈5cm程度とコンパクトさも良い。



■金水引 (キンミズヒキ)

名前に水引とつくいるが、水引とは別分類の植物
であり、こちらはバラ科の植物となる。自然環境
が残る場でしか見かけることのない植物となる。



■葛 (クズ)

この根は葛根湯(カッコントウ)の生薬としても
利用され、また葛餅(クズモチ)にも使われる。
勢力旺盛な蔓性植物で巨大な葉で他の植物を覆い
日照権を奪って育つ。樹木にも取り憑いて最大で
10mまでも蔓を伸ばす他の植物には厄介な存在
となる。クリスマスに飾られるリースにはこれの
頑丈な蔓が使われる事が多い。


■黒松 (クロマツ)

岩場の隙間から新たな幼木が育ちつつある。
マツボックリがそのままに残っていて可愛い。
このマツボックリの語源は、マツフグリとなる。
意味は興味があるならば、調べてみよう。



■谷空木 (タニウツギ)

田植えの時期に桃色の花を咲かせる事から田植花
(タウエバナ)とも呼ばれている植物となる。
今は花は終わってとても面白い事になっている。



■白膠木 (ヌルデ)

ウルシの仲間であり、ウルシほどではないが人に
よっては触れると皮膚がカブレてしまう植物。
茎にはウイングがついてる事から種類の特定など
が比較的簡単に出来るもの。ヌルデの名称は器の
製作工程にこの樹木の幹に傷を付け、そこからの
白汁を器に塗った事に由来する。



■鼠刺 (ネズミサシ)

現在は、杜松(ネズ)の名で呼ばれている訳だが
元々はその尖った針葉樹がネズミヨケになる事で
鼠刺 (ネズミサシ)と呼ばれていたのが略されて
短い名前となった。その実には渋めの紋章が銀色
に刻印されていてかっこいい。



■野葡萄 (ノブドウ)

更に季節が進むと、この実は桃、紫、青、水、緑
とカラーバリエーションが混在して華やいだ印象
を見る者に与えてくれてジュエルボックスの様に
なる美しい植物。



■葉団扇楓 (ハウチワカエデ)

楓の仲間の中では葉が大振りなタイプのもの。
このハンガーの様な種は真っ赤に色付いていて
目に鮮やかである。この種は葉が紅葉して全て
落ちてからしか落下しない。葉が落ち風が通る
状況下で、かつ一定量以上の風量があり初めて
落ちるのは遠くまで種を飛ばしたいという楓の
性質である。また、ハンガー状の種は一方から
種が落ちていく。そうでないとこの種の形状の
生み出す旋回能力を発揮できないからである。


■姫昔蓬 (ヒメムカシヨモギ)

鉄道草 (テツドウグサ)、明治草(メイジソウ)
の別名もあり、明治維新以降の鉄道の発展と同時
に日本の各地へと爆発的な拡大を見せた事からの
名となっている。


■水引 (ミズヒキ)

その小ぶりな花が茎に並ぶ様から、古来より日本
で使われている水引餝(ミズヒキカザリ)に似る
事からこの名称がついている。雑木林の中の暗い
中にひっそりと咲く姿がとても印象的な植物。



■山萩 (ヤマハギ)

秋の七草に数えられる萩(ハギ)とは本種を指す。
国内では全域に生息する植物であり、鑑賞植物と
しての価値も非常に高いものでもある。花の桃色
と葉の丸みが柔らかい印象で眺めてて和むもの。


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蓬莱峡で出会えた虫たち (あいうえお順)


■黄星丸浮塵子 (キボシマルウンカ)

見た目には天道虫(テントウムシ)などの甲虫類
に見えるものだが実は、浮塵子(ウンカ)に分類
される昆虫となる。テントウムシに擬態する事で
苦汁嫌いな鳥類からの捕食を避ける為の擬態より
身を守っているのである。



■斑猫 (ハンミョウ)

田舎道や登山道など、我々が歩くのに反応して
先へ先へと飛んでいくその様子からついた別名が
道教(ミチオシエ)となる。この蓬莱峡の地でも
同じ動作で一定距離を保った動きをする、美しい
翅を持った昆虫だが、幼虫も成虫も優秀な肉食系
で自分より大きいコオロギやバッタを捕獲する。


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■ タイムテーブル

■ 十三駅▶︎阪急宝塚駅 (阪急電車宝塚線)
 10:23▶︎10:53  

■ 阪急宝塚駅▶︎知るべ岩 (阪急バス)   
 11:07▶︎11:19

■ 蓬莱峡ウォーク
 11:20▶︎14:20   往復3時間 (ほぼ小走り)

■ 知るべ岩▶︎阪急宝塚駅 (阪急バス)
 14:30▶︎14:42

■ 阪急宝塚駅▶︎大阪ミナミ(阪急&大阪メトロ)

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