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VR映像を使用した次世代型教員研修の実証研究 ”途中経過”報告

全国の教育現場へICT導入支援サポートを提供している株式会社エデュテクノロジーは現在、VR映像の配信と教育効果を可視化するアンケート分析を組み合わせた、GIGAスクール構想・生徒一人一台端末に対応する次世代型教員研修の実証研究を進めています。

▷実証研究についての詳細はこちらをご覧ください。
https://note.com/edutechnology/n/nfb9bd88cbf02


この記事では、実証研究を進めていく中で2021年01月07日に行われた「VR映像を使用した次世代型教員研修の実証研究関係者会議」での全体報告からわかったことや今年度のまとめとして、これからの課題についてお伝えします。

今回の議題は「コロナ禍により集合形式の研修や公開授業の参加が難しくなった今、授業を遠隔から視聴し、リモートで参加できる形を模索するため、360度カメラで授業を撮影した実証研究について」でした。

実証に協力して頂いている学校からの進捗状況、教育センターからの報告、最後に今後の動きについて、放送大学 中川一史 教授をアドバイザーに迎え話し合いました。

■ 目次
全体報告からわかったこと
これからの課題
次回に向けて

1.全体報告からわかったこと


今回の実証研究に取り組んでいただいている学校(淡路市、埼玉県立越谷南高校、千葉県総合教育センター)から、この実証研究に対する報告をして頂きました。加えて、各教育センターから活用の可能性についてアドバイスをいただきました。

その報告内容よりわかった、360度カメラを使用し良かった点を以下の3点にまとめました。

1、児童生徒の反応を含めた授業全体の記録ができる

これまでは、先生が授業を行っている様子や児童生徒が授業を受けている様子など、定点のみの撮影しかできませんでした。

しかし360度カメラを使用することにより、先生が授業を進めている様子と同時にその時の児童生徒の様子など、教室全体を撮影し、記録に残すことができます。

見返したい場面を、色々な角度から繰り返し見ることができ、授業中の反応や動き、表情やつぶやきなども確認することができます。

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このように授業全体を記録として残し、先生方の授業テクニックだけではなく、児童生徒の反応も含め全体を見返すことができるため、計画通りの授業になっているかを確認することができます。また初任者や5年次の先生方の研修にも大変参考になると思われます。

2、発表を伴う授業では、発表者や先生だけでなく全体の段取りや聞いている児童生徒の様子を客観的に確認することができる

授業内での発表を記録する際に、固定カメラのみでは発表者を録画することしかできませんでした。

しかし360度カメラを使うことにより、聞いている側の児童生徒の様子や、ノートを取るタイミング、発表後、席に戻りどうしているかなど、固定カメラでは得られなかった情報を得ることができました。また、先生の発問に教室がどのように反応しているのかも捉えることができます。

このように授業を記録できるため、授業全体の段取りなどを見返す参考資料として、先生方に大きく貢献することが可能になります。

3、児童生徒が撮られていると意識せず、自然体で授業を記録することができる

授業を記録として残す際に、可能な限り児童生徒には、普段通りに授業を受けてもらいたいと思っている方も多いと思います。しかし、一般的なビデオカメラではどうしても意識してしまい、普段と異なる反応をしてしまいます。

360度カメラを使うことで、カメラを気にすることなく、自然な教室の雰囲気を記録することができます。

下の写真のように、360度カメラを教室の中央に配置し、途中で動かしたり、児童生徒に近寄ったりすることはないので、カメラを意識することなく、普段通りの授業の雰囲気を記録することができます。

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2.これからの課題や期待

360度カメラの使用を通して、改善点や今後の流れについて報告を頂きました。その報告内容よりわかった、これからの課題や可能性を以下の5点にまとめました。

1、授業の流れや撮影して欲しいポイントを授業者と事前に擦り合わせる必  要がある。事前に授業の狙いや活動内容を把握することにより、さらに効果的に撮影ができるようになるのではないか。

2、グループ活動を中心とした授業では、複数のグループが別々の動きをする。そのような場合、360度カメラ1台のみでは、個々のグループの変容を記録することができない。そして、活発なグループワークの際には、複数グループの音声が教室全体の音声としてまとめて収録されてしまう。
固定カメラや手持ちカメラなどを併用しながら撮影し、必要な場合はグループごとの音声収録も必要となる。

3、動画の不必要な部分をカットし、短く編集したほうが概要を把握するためには役立つことがある。しかし、その匙加減が難しい。授業者と相談しながら編集するために、その時間の確保も計画段階から想定しておく。

4、授業だけでなくホームルームや学活などに活用することができれば、運営が上手な先生を参考にすることができるので、今後の世代交代時のノウハウ共有に役立つと考えられる。積極的に撮影していきたい。

5、これからの探究型授業に向けて、臨場感が増すVRゴーグルを用いた研修は効果が期待される。ただし、目的や目指すところなど研修の導入について検討する必要がある。

今後は上記のような改善点を踏まえ、実証研究を進めていきます。

3.次回に向けて 

放送大学 中川教授より
コロナ禍で、様々な方式のオンライン研修で助言を行ってきましたが、やはりメリット・デメリットがあります。その中で、何のために撮影し視聴するのかという目的が重要で、目的によって優先順位を変えて撮影するのが良いのではないかと考えています。
360度カメラを使用することによって、どのようなアドバンテージがあるのか、目的や意味が今回の会議で明確になりました。今回の会議を踏まえ、今後検討が必要な内容が以下の3点です。

1、エビデンスとしての公表の仕方
2、映像を活用するシチュエーションの決定
3、日常的な活用方法の検討

コロナ収束後も教員研修はハイブリッドになっていくと考えられます。その際に、最も良い方法を今回の実証研究に参画しているメンバーで模索していきたいと思っています。


以上のように良かった点もたくさんあった反面、多くの課題を見つけることもできました。新型コロナウィルス感染症対策や緊急事態宣言発出により、実証研究を進めるにあたり難しい面もありますが、できることから引き続き取り組んでいきたいと思います。

また、冒頭で紹介しました次世代型教員研修のパッケージに含まれるアンケート分析に関しましては、正式サービスとして始動する準備が整いました。詳しくは別の記事でご報告とします。

今後本格化していく教育現場へのICT導入に貢献できるよう正しい情報を集め、よりわかりやすくご紹介していきます。


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