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これからの高等学校情報科における指導の充実に向けた体制づくりとは

令和 4 年 12 月 2 日、「新しい資本主義の加速」「コロナ禍からの需要回復、地域活性化」「防災・減災、国土強靱化の推進など国民の安全・安心の確保」 の 3 つの大きな柱のもと、文部科学省は総額 1 兆 4,426 億円の令和 4 年度 第 2 次補正予算を成立させた。本補正予算の事業内容を確認しても、当然のことながら GIGA スクール構想を発端とする「教育 DX 」の推進に向けて、様々な取り組みが展開していくことがわかる。

本稿では、補正予算額としては 1.4 億円と小規模ながらも、これからの時代を担う子供たちに必要な情報活用能力の育成に向けた高等学校情報科等の強化策をはじめ、本年度からの共通必履修科目「情報 Ⅰ 」の開始、令和 5 年度には選択科目「情報 Ⅱ 」の開設を控える高等学校情報科の指導体制等の充実に関する国の方針等について確認していく。

高等学校情報科における教員の採用・配置等の現状


令和 4 年 11 月 15 日に、各都道府県教育長等宛てに発出された「高等学校情報科に係る指導体制の一層の充実について」では、令和 4 年度より共通必履修科目「情報 Ⅰ 」の履修開始、次年度の選択科目「情報 Ⅱ 」の開設が迫る中で、高等学校における情報教育の現状を整理しつつ、更なる充実に向けた様々な施策等が示されている。

まずは、生徒の情報活用能力の育成をけん引する高等学校情報科における教員の採用・配置等について確認してみる。

共通教科情報科は、主として普通科高校に設置されており、調査結果に示されている当該教科の担当者数は、令和 3 年 5 月時点の文部科学省の調査における普通科高校約 3,700 校に加え、総合学科や定時制課程の担当教員、また、想定しにくいが複数人配置等を踏まえて算出されているものと考える。

注目すべきは、本年度から順次進行で実施している学習指導要領下の学びにおいて重要な役割を担う教科にあって、当該担当教員数 4,765 人の約 17 % が高等学校教諭臨時免許状(情報)、もしくは、情報の免許外教科担任の許可を受けた方が指導されている現状である。

引用元:(令和4年11月15日)(通知)高等学校情報科に係る指導体制の一層の充実について

多くの自治体において教科情報の教員が十分に採用されてこなかった現状において、これまで、そして現在の情報教育は臨時免許状や情報の免許外教科担任の許可を受けた方に支えられてきたことは間違いない。調査では現職教員約 1 万人が情報免許状を有しており、そのうち約 6,000 人が他教科の専任として教壇に立っている。

今後の学校教育において共通教科情報科が担う役割がより一層高まる中で、情報免許状を保有する先生方の配置検討や教科情報の教員採用の計画的な実施等、自治体は人的リソースに関する早急な対応が求められている。

情報科指導体制の充実に向けて


共通教科情報(議論当時は普通教科情報)は、更に遡ること平成 8 年 7 月の中央教育審議会が示した答申「 21 世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の中で、情報社会に対応した教育の必要性が指摘されたことをきっかけに、様々な会議体における審議を経て新設された。審議のまとめにおいて教科「情報」は、「情報手段の活用を図りながら情報を適切に判断・分析するための知識・技能を習得させ、情報社会に主体的に対応する態度を育てることを内容」 と整理され、平成 15 年度から高等学校において設置されている。

教科「情報」が新設された経緯を振り返ると、高等学校教育における共通教科情報科の役割は非常に大きいものであると改めて感じる。世界に溢れる様々な情報が情報通信機器を用いて見聞きすることが社会生活の当たり前となった今日にあって、平成 30 年度告示の学習指導要領は、より時代に即した指導内容へと改定されている。社会の要請に応える意味においても、これまで以上に共通教科情報科の指導の充実を図ることが求められる中で 「高等学校情報科担当教員の専門性向上及び採用・配置の促進について」 等を自治体宛てに通知していることは、共通教科情報科の重要性を周知していきたい文部科学省の強い意志の現れと感じる。

引用元:(令和4年11月15日)(通知)高等学校情報科に係る指導体制の一層の充実について

また、情報科指導体制の改善の一助となる「高等学校教科「情報」の免許保持教員による複数校指導の手引き」、「情報関係人材の活用促進に向けた指導モデル及び研修カリキュラムの手引き」を作成していることも、共通教科情報科の充実を図っていきたいという文部科学省の本気度を感じる。


指導体制の充実を図るためには、当該教科の教員の採用・配置だけでなく、情報教育を担う専門性や指導力を高めることが両輪となって取り組んでいく必要がある。令和 5 年度からは選択科目「情報 Ⅱ 」の開設がはじまり、時代に即した情報教育を担う新しい高等学校情報科が本格稼働していく状況において、これまで以上に当該教科教員の専門性や指導力向上を図ることが求められる。

今後、文部科学省では、一般社団法人情報処理学会等と連携して様々な研修用教材・講義動画等を 「情報Ⅰ」 の配信に続き「情報 Ⅱ 」においても提供するとしている。こうした動画教材は NHK 高校講座で高校生の視聴も可能とする計画である。

引用元:(令和4年11月15日)(通知)高等学校情報科に係る指導体制の一層の充実について

更に、高等学校情報科の指導内容の更なる高度化が求められる中で、専門性を有する教員の育成・確保、外部人材によるサポートを持続的に実施していく体制づくりの必要性を鑑み、各都道府県教育委員会が中心となり、域内の大学や高等専門学校、情報関連の専門学校及び産業界等と連携協力していく仕組みづくり(協議会の設置)に対し、文科省事業として支援していくことも明らかにされている。 (令和 4 年度第 2 次補正予算「高等学校情報科等強化によるデジタル人材の供給体制整備支援事業」)

最後に


これからの学び、何より生涯に渡って学び続けられる力の育成に向けた学校教育の実現が求められる。その中でも情報活用能力は、国民必須の素養と位置づけられるこれからの時代を生き抜くために必要な資質・能力である。こうした力の着実な育成に向けては、共通教科情報科がハブとなり 「主体的・対話的で深い学び」 や 「教科横断的な学び」 等の新たな学びを展開することが望ましい姿であると考える。

そのためには、自治体主導のもと、共通教科情報科の指導体制の充実を図ることが極めて重要である。また、文部科学省においても自治体の取り組みを後押しする追加の支援策を期待するところであるが、引き続き、共通教科情報科を含めた教育の情報化の充実の動向を確認していきたい。
文部科学省では「高等学校情報科に関する特設ページ」を公開している。ご興味ある方はこちらのページを参考にされたい。

株式会社エデュテクノロジーでは、学校教育における学習用端末を含めた ICT 機器の環境デザインや ICT 機器の有効な活用マニュアル等のハード設計から、ICT の強みを活かした授業デザイン等のソフトウエア設計までトータルに支援する ICT コンサルティングを提供している。長年培った経験とノウハウで、本稿で取り上げた1人1台端末の活用促進を含め、これからも児童生徒の学力向上に向けた「学びと ICT 」について学校、教育委員会へのサポートを行っていきたいと考えている。

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