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父の影響で日本語教師へ|世界の日本語教師たち Vol3(後編)|芳賀久美子さん

  このedukadoページでは「世界の日本語教師たち」というテーマで、毎週世界を股にかけて日本語を教える先生たちの現場のリアルな声を取材した記事を配信したいと思います。第3回では、”父の影響で日本語教師へ”と題してお届けします。

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今回の日本語教師:芳賀久美子さん
日本語教師を始めて6年。幼少期はシンガポールの日本人学校に通い高校を日本で卒業。再びその後シンガポールへ。通訳や翻訳の仕事を経験した後、両親が経営するシンガポールの日本語学校に勤める。

インタビュアー:Jun
埼玉県在住のフラガール。国際観光専攻。
趣味は海外ドラマとJ-popアイドル観賞。
観光学を通じて世界を学ぶうちに、日本文化について深く知りたいと思いedukadoへインターンシップとして参画。現在はPRを担当。
多くの日本語教師へ取材する傍ら、日本語教育を取り巻く環境を改善すべく活動中。

⒊シンガポールの先生たち

ーシンガポールでは、ネイティブな日本人が先生
  シンガポールのMOE(教育庁)では、日本語教師の基準として基本的には”ネイティブな日本人”か、”高校の学歴が日本でなければならない”と定められています。学校では、それに沿って先生も雇っているという状況です。 
  父が学校を始めた当初は「教えたい」という気持ちでシンガポールにきている先生が多くいました。ですが、今はそういう理由でシンガポールにくる人は少なくなっています。今いる先生方は、旦那さまの仕事でシンガポールに住むことになった奥様を採用しているケースが多いです。

ー日本語教師は減少傾向
  教えたいという気持ちを持ってシンガポールに来る先生が減少している理由の1つは、シンガポールの外国人の受け入れが厳しくなっていることです。また、そもそも日本語教師をやりたい人自体が減っています。正直、他の仕事と比べて収入が少ないことも事実です。 

—どういう仕事か広めることが先生を増やすきっかけに
  1つはルールを緩めて興味がある人、教える技術がある人をどんどん歓迎できる社会にしていくことです。気持ちがあってもできない人がいると思うので、ある程度のハードルを緩めることも必要ではないかと思います。
  もう1つは、日本語教師がどういう仕事なのかを広めることです。どのような仕事なのか、どういう生徒がいるのかなど、具体的にイメージしやすい職業になれば、より身近な仕事として感じることができるのではないかと思います。

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(オンライン授業の様子)

⒋文化として日本語を学ぶ

ーJun:シンガポールでは世界の主流言語である英語、中国語がメインで使われています。また、水準も高くわざわざ日本へ働きにいく必要もないと感じます。その中で日本語を勉強する理由はどこにありますか。

芳賀先生:日本語を勉強しにくる人は色んなきっかけがあります。例えば、たまたま行った旅行先の日本人が優しくしてくれたこと、秋葉原の電化製品に感動したことなど、本当に様々です。日本は世界でもトップクラスの技術を誇るものがたくさんあるので、それらに興味を持つことが日本語を学ぶことに繋がっているのではないのかと感じています。
  また、日系の企業に働きたいということも理由の1つです。シンガポール国内の日本企業では、検定の基準があるので、習得のために学んでいる人も多いです。「ただ日本が好きだから」「どんな仕事でもいい」というだけでなく、「何か貢献したい」、「自分のやりたいことを活かしたい」というはっきりと目的を持っている人が多い印象です。

ーJun:働いている学校では文化学習はありますか?

芳賀先生:私の勤めている学校では、教えるということに集中していますが、他のところではイベントをやっているところも聞いたことがありますね。
  学校での授業だと限られた時間ですので、文化を教えるまでに至らない部分もあります。生徒によって、本当は教えて欲しいという声も聞いたことがあるので、言語という枠組みに囚われずに勉強することができると今後日本語教育のニーズも広がるのではないかと考えています。

ーJun:今後の日本語教育にどのようなイメージを持たれていますか

芳賀先生:今は韓国ブームですが、いずれ日本ブームも来るのではないかと考えています。世界中でとはなかなか難しいかもしれませんが、どこかの特定の国で日本ブームが起こることは可能性として十分にあると思います。そのときには学びたい人も教えたい人も自然に増えるのではないかと思っています。
  また、日本で生活していると英語の勉強をすることが主流です。近年では外国人も多く日本にきているので、そういう方々に日本語教育をさらに広めることができれば、より日本語教育の幅も広がると思います。

〜記者から一言〜

  後編で伺った、シンガポールで日本語教師として働く人が少なくなっているというのはとても意外な現状でした。一方でこれだけ理由が明確であるため、今後ルールや制度を改善できれば、教員人口を増やすことも可能であると感じます。この業界では、学びたい人が増えても教える人がいなければ成り立ちません。これまでのインタビューも踏まえ、教師の環境改善が日本語教育を発展させる上でまず最初に取り組む課題であると感じています。

次週は女性社会と言われる日本語教師の世界で活躍する、男性教師インタビューです。仕事をしながら養成コースに通われた先生のお話をお届けします。

インタビュー・文:Jun Sakashima


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