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転職を経て再び日本語教師へ|世界の日本語教師たち Vol.4(後編)|上本洋平さん


 このedukadoページでは「世界の日本語教師たち」というテーマで、毎週世界を股にかけて日本語を教える先生たちの現場のリアルな声を取材した記事を配信したいと思います。
 第4回では、” 転職の経験から再び日本語教師へ”と題してお届けします。

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今回の日本語教師:上本洋平さん
大学で中国に留学。留学中に日本語教師のボランティアを行なったことをきっかけに帰国後、日本語教師養成講座を受講。シンガポールの日本語学校に就職。その後他の職業に転職するも、現在は再び日本語教師として都内の学校に勤務中。

インタビュアー:Jun
埼玉県在住のフラガール。国際観光専攻。趣味は海外ドラマとJ-popアイドル観賞。観光学を通じて世界を学ぶうちに、日本文化について深く知りたいと思いedukadoへインターンシップとして参画。現在はPRを担当。多くの日本語教師へ取材する傍ら、日本語教育を取り巻く環境を改善すべく活動中。

日本語教師の現状

—誰でもできる仕事ではない
  今課題に感じているのは日本語教師の地位の向上です。海外の学校にいた時から今でも“誰でもできる仕事”と誤解されている方が多くいます。最初のきっかけになった日本語教師のボランティアで言葉を教えたこともありますが、知識や経験がないと難しい仕事です。こういう認識が低賃金にもつながっていると思うので、改善していくべきだと考えています。

—低い賃金の背景
  日本語教師は専門職ですので、給料についてもう少し増やしてもいいと感じます。学校によっては教材も自腹で用意しなければならないところも多くあります。教科書だけでなく副教材、問題集などを授業で使うこともありますので、改善していきたい課題です。
 
  “貧困ビジネス”という言葉がありますが、多くの留学生が比較的物価が低い国から来るため、どうしても学費を抑えなければなりません。一方で、先生の数は一定数確保しなければならない。こういった観点で待遇が低くなってしまうのではないかと考えています。

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—オンライン授業の大変さ
  コロナの影響で私の学校でもオンラインでの授業を行いました。従来のような板書ではなく、パワーポイントでの授業に変わり、前もって教材の準備をする必要がありました。資料作りで教員の意外な技術を発見出来たのは面白かったですね。
  学生側のカメラは切っていたため表情が見えませんでした。そのため、授業時間に他のことをしてしまう学生や昼寝してしまう学生もいて集中力を保つことが難しいと感じました。

今後の日本語教育の在り方

—学ぶ環境づくり
  日本語を学びたい人が自由に勉強できる環境ができたらいいなと思っています。最初に教えたシンガポールの学校の話になりますが、シンガポールでは最終学歴が小学校卒業という人も結構います。その人は中国語の成績が高く、日本語検定もN2を習得し、通信販売のお仕事をしています。言葉を学んだことによって可能性が広がったということですね。日本語に限らず、学ぶこと全てに言える話ですが、今後はそういう人たちを救ってあげられるような環境になったら良いなと考えています。

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—どこにいても学べる世界に
  これからは教師が海外へ教えに行く、学生が日本に学びに来るではなく“居場所を問わずオンラインで学ぶ”ということが発展していくと思います。ですので、フリーランスでの教師需要が増えるのではないかと考えています。学生は母国で日本語を学び、本来の目的である就労のために日本に来日するようになるのではないでしょうか。オンラインとは反対に、従来のように日本語学校に通う外国人は減ってしまうかもしれませんね。

—日常から授業のアイデアを掴む
  日本語教師は色んなことにアンテナを張っておく必要があると思います。ですので、時間があればできる限り本を読む、映画を見ることをして欲しいなと思います。例えば、授業ではたくさん例文を使います。そこで、学生にささる文ができればスムーズに理解してもらうことができます。理解できれば、あとは練習するだけなのです。ですので、様々なものを見て活用して行って欲しいと感じます。

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—最後に伝えたいこと
  「健康管理には気を付けろ」です。例えば、自分が急遽授業に出られなくなった時、なかなか代行の先生を見つけることは難しいですが、見つかった瞬間、自分はお呼びで無くなってしまうというリスクもあります。“替わりはいないが代わりはいる”という精神で頑張っています。
  若い先生には“授業準備”と“睡眠”では“睡眠”を優先させるようにいいます。授業準備が少し中途半端になってしまっていても、学生と会話のラリーができれば授業ができますが、体を壊してしまってはそもそも教室に行くことすらできません。ですので健康管理には充分注意して欲しいです。
  最後に、今は圧倒的に女性社会の日本語教育業界ですが、今後男性教師が増えれば、また環境が変わるかもしれません。(バレンタインとかはありませんが笑)

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記者から一言

  日本語教師の待遇の話は多方面からお話を聞いてきましたが、教育にどこまでビジネスを取り入れるのか、主たる日本語学習者の多くが裕福ではない環境にある、ということが根底にあることが見えてきました。これらはすぐに解決できるものではなく、また個人の力だけで変えられる問題でもありません。オンライン学習も急速に発展してきている今だからこそ、このままの日本語教育を普及するのではなく、新たな学びのスタイルを構築することが教師にとっても学習者にとっても必要だと感じます。

  次回は、欧米の日本語学習者を中心としたオンライン授業で活躍する先生にインタビューをさせていただきました。お楽しみに!

インタビュー・文:Jun Sakashima

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