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中高生の発達段階(2)

お待たせしました!
中高生の発達段階、第二弾です。

前回は、発達って何?どうして学ぶ必要があるの?ということや、発達のタテ糸、ヨコ糸についてお伝えしました。

前回については、以下の中高生の発達段階(1)をご覧ください。

今回は、メインテーマ、中高生の発達段階についてお伝えします。

中高生は、まさしく思春期を生きる人たちで、
脳がたくさん変化しながら成長し、定着していきます。
中高生は、もっとも大きく問題にぶつかる時期でもあります。
しかし、この時期にうまく大人が接してあげられずに、解決出来なければ、
その先の人生、青年になったときに
問題が大きくなり生きることが難しくなってしまうように
とても大切な時期でもあります。
思春期に、血気など性格を直せなかった人たちは、
青年になってから、残念ながら殺人などの事件を起こす人もいます。
でも、思春期にはそんな問題を起こす人は多くありません。

中高生は、頭は成長したけれども、
成長しきっていないから、とても曖昧な状況になります。
ただ、大人の言ったことを信じるようなそんな世代でもありません。

大人が、子供たちにただ良くしてあげるだけだと、
いつもしてもらうばかりで癖が悪くなっていってしまうし、
逆に良くしてあげないと性格が悪くなってしまいます。

このように、
子供たちのどこに合わせて対処したらいいのかわからなくなるような、
敏感で繊細な世代たちでもあります。

常に、大人たち、教師たちを悩ませるそんな世代でもあります。

しかし、中高生には、大人と違って、エネルギーが満ち溢れています。
世界でも、16歳の少年少女が、世の中を変える!と勇気を持って立ち上がり、
演説をするように、
一度火、使命感を受けたら、「私が歴史を打ち壊す!」と大きな力を受けて、
世界を覆すような力を持っています。
その演説、言葉には火があって、大人の心、たくさんの人の心を動かし、
政治家たちの演説よりも勢いがあります。
そのように、幼いけれども、世の中を変える力も持つ
そんな活気を持っているのが思春期の中高生たちの力です。

このように世界を変えていくようなそんな大きな行動家、思想家が
出てくるのが中高生の時期だとも言えます。

この貴重で重要な時期に、いい習慣を作れるように、教師はサポートし、
導いてあげる必要性があります。


さて、話が少しそれましたが、
中高生の持つ力について少し考えたところで、
今日は、3つの領域

■身体的発達
■知的・言語的発達
■精神的・社会的発達

について詳しくみていきたいと思います。

■思春期の身体的発達

本題に入る前に少し最近の子供たちの身体についてお話しします。
思春期の子供達にかかわらず近年では、子供達の身体が「老人化」しているのではないか、と言われています。

「老人化」とはどういうこと?子供なのに、と思われたと思います。

最近ゲームやインターネットが普及したこともあり、外で遊ぶ子どもが少なくなり、運動不足の子供達が増加しています。
そのため、筋力が不足していて、授業中身体を支えることができず、姿勢を維持できなくなってしまう生徒が増加しているそうです。姿勢が悪いと眠くなりますから、同時に授業への集中力は落ちているかも知れませんね。

また、筋力の低下に伴い、骨の強度も落ちるため、骨折をする児童生徒も増えているそうです。また、側湾症や腰痛を抱える子供の割合も増加しています。

これらの症状が高齢者に多く発症する、
「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」に似ているため、医学者たちが子供たちの体が「老人化」していると警鐘をならしています。

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さて、本題の子供の身体的発達についてですが、
次のスキャモンの発達発育曲線をご覧ください。

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これは、横軸に年齢、
縦軸に、成熟期を100%とした場合の発達の割合を示したグラフです。

1番上の、1番成長のピークが早くくるのが神経系です。
神経型は、器用さやバランス感覚、リズム感などの動きを司る神経系の発達のことです。”運動神経”などをイメージしていただけるといいかもしれません。

大体8歳で、ほとんど成人と同じくらいに発達していることがわかると思います。つまり、小学生の段階で、大人と同じ動きはできるけれども、筋力など力の面ではまだ大人に追いついていないという状態になります。

このグラフを見たとき
すぐに小学生で活躍するスーパーダンサーなどの姿を思い出しました。
小さなダンサーですが、動きはキレッキレで大人に負けない動きをしていますよね。それくらい、小学生でも動けるということになります。

真ん中のグラフが一般型といわれ、筋肉や骨格、体格のことです。
一度4歳くらいまでにピークがあり、また12歳を過ぎたくらいから第2次にピークがきます。いわゆる第二次成長期です。
思春期の子供たちは、第二次成長期を迎えるので、
急に身長が伸びたり、体重が増えたり、声変わりをしたり、
体の大きな変化をします。
一般的に、中学生までは、
大人並みの筋力トレーニングなどは骨格自体の成長を妨げてしまう可能性もあるので、避けた方が良いでしょう。
筋力トレーニングをするよりは、中学生は、心肺機能が発達する時期でもあるので、長距離走などの方が良いとされています。

適切な経験や活動を与えられるよう指導者も気をつけたいところです。

さて、最後の生殖型は
見てお分かりだと思いますが、
12歳、14歳ごろまで、ほとんど発達せず、思春期に急激に変化します。
第2次性徴とも言われます。
男性は男性らしい体に、女性は女性らしい身体に変わり、ホルモンバランスも変わり生殖器も成熟していきます。

近年では、第2次性徴がだんだんと早まり、10歳くらいで初経を迎える子もいると言われています。体の変化に伴い、性的な関心を抱くようになります。


■思春期の知的・言語的発達

ここでは主に脳の発達に焦点を当てて、見ていきたいと思います。
まず、以下のグラフを見てください。

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横軸に年齢、
縦軸に脳の発達段階をとったグラフです。

ここでは、
脳を五感など感覚のものと、思考の脳に分けて考えています。

感覚の脳の発達曲線は、
3歳くらいまでに大人と同じに発達してしまいます。
先程見た身体的発達の神経型のグラフとかなり形が似ていますね。

一方で、思考の脳については、
こちらはかなり一般型の発達の仕方に似ています。

つまり、小学生までは、感覚は大人とほとんど同じなのに、
思考力、論理的に考える力や、推論する力、抽象的なものを考える力、仮説する力はまだまだ発達していなくて、不十分なところがあるということです。

私は数学の教員をしているので、
これをすごく大きく感じることがあるのですが、
それは「論証・証明」という分野です。
一般的に、説明することを、
中学生の子供達は苦手とすることが多いのですが、
「論証・証明」は、まだ発展途上の中学2年生で学習します。

つまり、まだ論理的な思考力がついていない中、
ごりごりと論理的な思考力の練習をさせている感じなので、
お互いに少ししんどい分野なのです。。
子供たちの発達の段階を知りながら、
励ましながら進めていきたいと改めて思います。

また、
今までは純粋に信じていたものも、
この時期に入ると、疑ったり、
一度立ち止まって考えることができるようになってきます。

例えば、クリスマスの「サンタクロースがプレゼントをくれる」
という夢が壊れ始めるものこの頃かもしれません。

すなわち、サンタクロースが1人ならば、同時に多勢のところに、サンタクロースが現れることはできないはずだ、という仮説思考がこの頃から徐々にできるようになります。

今までの大人が「テキトーに」言い聞かせていたことに対して疑問を感じ、
どうして?なんで?と大人に矛盾をぶつけてくるため、
「反抗期」と言われることとも繋がってくるかもしれません。

また、今までは、「自分中心」にしか考えられなかった所から、少しずつ、
相手から見た自分など相対的に自分を捉えられるようになってきます。

このような思考する働きを大きく司るのは、
脳の「前頭葉」という所ですが、
コミュニケーションや行動抑制、意識・注意を集中することなど、
本当に重要な役割を担っています。

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人間の価値は「考え」で決まる、とも言われますが
その思考力・前頭葉が最高に発達する時期なので、
思春期は、
人生において、最も重要な時期だ、とも
いうことができるのではないでしょうか。


■思春期の精神的・社会的発達

ここでは、
精神的発達を子供の内面・精神世界で起こる変化
社会的発達を、他者との関係性の中で生じる変化
としています。

ここで、一度自分が中高生だったときのことを
思い出して欲しいのですが、本当にたくさんの悩みがなかったでしょうか。
私は、自分の人生で何をなせばいいのだろう?とたくさん悩み、考えた記憶があります。

思春期の悩みとしては、
一般にさまざまなことがあげられます。

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例えば、進路や就職などの進路の選択についての悩み
周囲からどのように見られているのだろうという友人関係の悩み

小学生など児童期とはまた違った深い人間関係を築ける年齢になってくる分、
人間関係の悩みは増えていくかもしれません。

そして、重要な問題は、
「私は一体何者だろう?」
「なぜ私は存在するのだろう?」という
アイデンティティの問題、存在理由を求める時期であるということです。

アイデンティティとは、一般的に、
「私は他の誰でもない自分だ」
「過去・現在・未来を通して私は私のままだ」
という確信を持つことと言われていますが、

そもそも人生をなぜ生きるのか?など、
根本的な問いを持ちやすい年齢でもあるので、
その答えを得られるように、
この時期に解決できるように大人はサポートしていく必要があります。

また、社会的な発達の一つとして、
親子関係が挙げられますが、
親子関係も新たな次元へと変化していきます
いわゆる親離れ、子離れが起こる時期です。

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児童期の子供たちは、
親が言ったことには従うのが当たり前で
親の枠組みの中で生活していますが、
思春期に入ってくると、
自我が目覚め、親の規律から離れて、
自分自身の規律を獲得していこうとします。


これは、成長段階として至って健全なことなので、
最近「私のいい子が変わってしまった😭」と保護者の方は感じる
かもしれませんが、実は、お子さんが成長しているという証拠なのです。
また、保護者の方の態度によっても、
この反抗期の現れ方は異なると言われています。

この時期、
子供の反抗的な態度に親御さんが落ち込んだりすることもあり、
「心理的離乳」の時期だとも言われています。
親子共々、依存関係から自立を目指す葛藤の時期です。

中高生に接する立場の方々は、
最初にも書きましたが、
よく接したらいいのか、あんまりよく接しすぎるとまた癖がついてしまってよくないし、とたくさん悩まれ研究されてきていると思います。

しかし、この時期を乗り越えると、お互いに認め合える
個人として認め合える仲間のようなよりよい関係性至ります
独立した個人としての親密な関係と言ってもいいでしょうか。

是非、現在を見るだけではなく
未来にも目を向けて、乗り越えていっていただきたいと思います


さて、ここで
社会的発達の中でも友人関係について見ていきたいと思います。

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先程少し述べましたが、
児童期の友人関係よりも、
「深い」人間関係を結ぶことができるようになるのが、
思春期の子供たちの人間関係です。

お互いに悩みを話したり、自分の本音を語ったり
自己開示をできる「親友」を作るようにもなります。

確かに私も、中高生のときの友人とは
深く繋がっている感じがするのはそういう理由なのかなと思います

しかし
一点気をつけなければならないのは、
同時に、いじめが起きやすい時期でもあるということです。

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特に中学生は
環境も変わり、体の変化などの不安定さがあるため
ストレスも多く抱えているのが現状です。

SNSなど、見えにくいいじめも近年では多くなっています。
是非、関心を払っていただき、
少しでも良好な人間関係を作れるように大人が見守っていければと思います。



さて、ここまで
かなり長く、中高生の発達段階について見ていきましたが、
いかがだったでしょうか。
私は、今回ここまで書いて
やっと書き上げた(^◇^;) という感覚に襲われてますが
みなさんにとって、何か得るものがあったら幸いです。


脳も、体も、大いに変化している中高生
その実態をわかって、教師や、大人が接することができるようになれるといいなと心から思っています。私も日々精進します。


<追記・参考文献>
以下の書籍を参考に今回準備させてもらいました。もし興味がある方は是非本にもあたってみてください^ ^

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■岡本祐子・深瀬裕子(2013)『エピソードでつかむ生涯発達心理学』ミネルヴァ書房
-いわゆる教科書。論理的で少しお堅いですが、詳しく知りたい方にはおすすめ。

■ジェス・P・シャットキン(2019)
『10代脳の鍛え方:悪いリスクから守り、伸びるチャレンジの場をつくる』晶文社
- 訳本なので、多少読みにくさを感じる所もありますが、気軽に読み進められます。まだ読み切れていない部分もあるので、最後まで読んだらまた内容を上げますね。

■外山紀子・外山美樹(2010)『やさしい発達と学習』有斐閣アルマ
-いわゆる教科書。でも、かなり優しく書いてあります。ポイントだけ書いてあります。

■中山芳一(2018)『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』東京書籍
-今回かなり参考にさせてもらいました。
小学生の発達段階をメインに途中で記述されています。最近注目されている非認知能力と発達段階について両方取り扱ってくれています。

■林洋一(2010)『史上最強図解よくわかる発達心理学』ナツメ社
-有名な図解シリーズにも似ていますかね。非常にわかりやすく、ポイントが見開きのページでまとめられています。読書嫌いな人にはオススメです!

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