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”やりたい”を目指す道のなかにこそ、”自分らしさ”がある。〜スタッフインタビュー:Edo 手嶋穂〜

EdoNewSchoolは、岐阜県飛騨市にある中高生向けの探究塾です。「やってみたい」を見つけ「やれる!」と思える子に、をコンセプトに自身の興味を向き合える環境を提供すべく、2023年春の開校に向けて準備しています。
今回は、スタッフインタビューをお届け。運営元の株式会社Edoスタッフに、お話をお伺いしました。

自分のことが大好き。

そう、胸をはって言える人はどのくらいいるのだろう。

「嫌いではないけど」「普通かな」という人もいれば、「こんな自分なんて嫌いだ」とか「もっと自分のことを好きになりたい」と、悩んだことのある人も多いと思う。

私も、その一人です。自分に自信がなくて、周りの声が気になって。ともすると、やりたいことに踏み出せない。

そんな私の、まさに真逆の人生を歩んでいるように感じていたのが、株式会社Edoで働く手嶋さん。

「私、人に好かれている自信はないんですけど。でも、自分のことは大好きなんです。ずっと、やりたいことを選択してきた人生だと思います」

こんなに真っ直ぐ、自分のことが大好きと言える人がいるのだと、初めて会った時少し驚いてしまったほど。

自分のことが好きで、自分のやりたいことを考えて選択している彼女。

手嶋さんのように、自分を好きになって、自分らしく生きるにはどうしたらいいんだろう。ヒントをもらうために、彼女の生き方について話を聞いてみました。

やりたいことをやる。自分を好きでいる。そう育った幼少期。

「私が自分のことを好きなのには、すごくはっきりとした理由があって。物心ついた時からずっと、『自分のことが好きじゃないと、生きていけないよ』ってお母さんに言われ続けていたんです」

「小さい頃からその言葉を聞いて育ったので、それが体に染み付いていたというか。ずっと自分のことは好きですね。まあ、かなり生意気なやつだったので、色々やらかしては、毎日のように親が幼稚園へ謝りに行ってたんですけど(笑)」

母親にかけられ続けた言葉のおかげで、何の疑問もなく、自分を好きでいられているという手嶋さん。

「自分のやりたいことをやる」という生き方も、親御さんの影響が多いんだとか。

「私がやってみたいと言ったことは、基本的に反対せず、まずはやらせてくれたんです。習い事も、飽き性なのでなかなか続かなかったけど、興味があるものは全部試させてくれて」

そんな両親から、初めてやりたいことを反対されたのは、大学受験の時だった。

「それまでずっと、建築士になりたくて、建築科に行こうと思っていたんですけど。やっぱり別のことがやりたいと思って、願書提出の締切一週間前ギリギリにそれを親に伝えたら、初めて反対されて」

「その時は、大学のパンフレットを机に並べて、親にプレゼンをしました(笑)。自分はこういうことがしたくて、この大学だったらこんな勉強ができるからって。結果、心配はしてたと思うんですけど、送り出してくれましたね」

当時の夢だった、建築士の夢を変えてまでやりたかったこと。

それが、コミュニティデザインだった。

探究学習と出会い、のめりこむ

「入った高校が、たまたま探究学習にすごく力を入れている学校で。他の教科と同じくらいの時間数で、探究学習の授業があったんです。その都度テーマに沿って、長いものだと半年間チームごと自由に課題に取り組む、みたいな」

1年生の時には、ディベートやプレゼンテーションなど、探究学習の基礎となる手法を学習。

2年生からは、市役所プランという、学校外でのフィールドワークにも取り組んでいった。

「特に楽しかったのが、地元の商店街を舞台にしたフィールドワーク。まちの声を聞いて、課題を探して、その解決案をチームで考えていく、という時間だったんです」

夏休み中もチームで集まって、商店街を調査。

手嶋さんのチームは、地元の和菓子屋さんに着目し、より色んな人に食べてもらえるよう、新たなPRの仕方を模索したんだとか。

「自分で調べて終わり、じゃなく、実際にまちに出て、地域の人の話を聞く、生の声をもとにアイデアを深堀りしていくっていう過程がすごく楽しくて」

「どんどん探究学習にのめりこんでいきましたね。3年生の最後には、クラス代表に選ばれて、全校生徒の前で発表したりして。自分のなかで、成功体験になったんだと思います」

もっと、探究学習でやってきたことを追求したい。

その想いから、地域の人と人をつなぐデザインを学べる「東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科」を受験。

授業では、まさに高校時代の延長のような、コミュニティデザインに取り組んでいたという。

「1年半、山形県のとある村に毎週通っていました。地域に入って、そこで暮らす人の話を聞いて。課題を設定して、その解決のためにアイデアを考えて、地域の人を少しずつ巻き込みながら、一緒にアクションを起こしていきました」

手嶋さんのチームが担当していた村は、村内に20軒ほどの旅館と商店をもつ温泉郷。

家業として旅館を経営している家が多く、若旦那や若女将とよばれる若者たちが、両親とともに宿を切り盛りしていた。

若い世代の人と話をしていると、「まだまだ親の宿だから、自分の好きなようにはできない」という声をよく聞いたという。

「若者のやりたいことが実現できるようにしたい!」と、地域の若者と飲み会をするところから始め、ワークショップを企画。

最終的には、自分達の拠点をつくるために地域のカフェと繋がるなど、色々活動するようになったんだとか。

「私たちが活動を終えた後も、”大人の遊ぶ日”っていうイベントを実際に形にしてくれていて。地域の人たちだけで持続できることが、一番大切な成果だと思うので、めちゃくちゃ嬉しかったですね」

「この村で経験したのと同じプロセスを、卒業研究の時は、1人で実践しました。防災×コミュニティデザインをテーマに活動してたんですが、地域に引き継ぐところまで実施して、大学での最優秀賞もいただいたんです。すごく嬉しかったし、この成功体験は、私にとってかなり大切な経験だなと思います」

誰もが、自分らしくいられる世の中に

環境が足枷となり、やりたいことを行動にしづらかった若者たち。

同じように、さまざまなことが原因で、自分らしさを表現できないこともある。そのことに、気づかされた出来事があったという。

「大学時代、高校生が自分のやりたいことを形にするプロジェクトに伴走する機会があって。参加している高校生の話を聞いていると、ほとんどの子たちが『自分のことが好きじゃなくて』とか、『もっと自分を好きになりたくて』って言っていて」

「なんか、それにすごくびっくりしてしまったんです。怒りにも近い感情をおぼえたというか。誰と話しても、そこに行き着くのがひどく悔しくて。根深くて難しいことかもしれないけど、自分を好きになるって、みんなが持てる感情だと信じているんです」

誰もが、自分を好きになって、自分のやりたいことをやって。自分らしくいられる世の中になったら。
次第に、そんなことを考えるようになっていった。

「単純に、そういう環境にいれたら自分ももっと楽しそうだなって。本当にそれくらいの感覚なんですけど、世の中がそうなったらいいなって思いますね」

人が、より自分らしく変容する瞬間に携わりたい

誰もが自分らしくいられるために、何ができるだろう。その想いから、大学在学中にさまざまな活動をしてきた手嶋さん。

「サマーアイデアキャンプ」という、大学主催の高校生向けイベントに運営として参加したことが、大きな起点となる。

「2泊3日、全国から高校生がやってきて、コミュニティデザインの手法を学ぶ合宿で。チームでフィールドワークをして、まちのための提案を考えるところまでおこなうプログラムでした」

手嶋さんは、チームが困った時にアドバイスをしたり、時にはファシリテーションしたりする役割として、担当チームに伴走していた。

「たったの3日間なんですけど、最初と最後で、みんな表情がまったく違うんです。みんな、すごく変わるんですよね。よく覚えているのが、一人だけ中学生の子が参加してくれていて。最初はすごく恐縮していて、話し合い中もなかなか発言できない状態だったんです」

「でも最終日には、その子が一番最初に手を挙げて発言してくれて。最後、全体へ向けておこなうプレゼンの時も、堂々と大きな声でしてくれていたんです。その変化は、すごく嬉しかったですね」

ロジックを学び実践していく過程を通じて、人がより活き活きと、自分らしく過ごせるように変わっていく姿を、間近で体感した手嶋さん。

「こういう瞬間にずっと関われたら、自分も楽しいなって思って。今の会社の面接でも、『サマーアイデアキャンプみたいなことを、ここでもやりたいです』って伝えて、採用していただきました」

現在、手嶋さんが勤めているのは、岐阜県飛騨市にある株式会社Edo。

教育や学びを通じたまちづくりに取り組む会社で、手嶋さんは、大学時代に学んだことを活かし、防災プログラムや、自社事業のプログラム開発などを担当。入社2年目にして、数々の役割を担っている。

「実は、入社した時は、代表と副代表しかいなくて(笑)。私が、新卒にして初の社員だったんです。縁もゆかりもない土地で、かつ立ち上がったばかりの会社。友達の話を聞いていると、ちょっとは不安もありましたね。周りはやっぱり、都会の大企業とかを目指す子も多かったので」

「でももともと、人の話を参考にしながらも、結局は自分がどうしたいかを大切にして生きてきたから。就職の時も、自分のやりたいことを貫こうって思って、Edoに入社しました」

周りの人に合わせて、本当に自分のやりたいことを諦めてしまう時って、他の人が言う安全な道を選ぼうとしてしまうことが多い気がする。

手嶋さんは、自分のことを信じているからこそ、不安がある時も、やりたいことを大切にできるんだろうな。

知識が、やりたいを行動に移す手助けになる

手嶋さんが入社して1年経った今、サマーアイデアキャンプのような取組が、Edo内で始まろうとしているところなんだとか。

「EdoNewSchoolという探究型の学習塾を、2023年の春にオープンしようと進めているんです」

先生が教科学習を教える一般的な塾とは異なり、自分の興味関心を探す場で、深めたい領域を見つけた後は、Edoスタッフの伴走のもとそれぞれの学びを探究していく。

「EdoNewSchoolの話を聞いた時は、高校での探究学習やサマーアイデアキャンプの経験があった分、想像しやすかったです。私の興味としても、やってみたいなって」

「私は先生みたいな役割は多分向いていないから、来てくれた高校生と仲間でいたいなと思っていて。一緒にワークに取り組んで、一緒に考えて。そんな立場でいられたら理想ですね」

EdoNewSchoolでは、色んな考え方の型や手法を学んでもらいたい、と手嶋さん。

「私自身、学生時代に学んだ知識のおかげで、できることや考えられる幅が広がったので。この場を通じて、みんながその後の人生で活かせるような型を、一個でも多く渡せたらいいな」

「やりたいことが見つかった時、環境のせいにしないためには、努力も必要だと信じていて。手法や知識って、そのための武器になると思うんです」

やりたいけど……で終わらせず、やりたい気持ちを大切に、実際に行動を移せるようになってほしい。

「私はそれが、”自分らしい”だと思っているので。自分のやりたいことができていたり、そこに向けた行動を重ねることが、”自分らしい”なんじゃないかなって」

「私、まだまだやりたいことがいっぱいあるんです。今は、海外に行きたくて英語の勉強をしていたり、アドレスホッパーみたいな生き方にも興味があったり。やりたいことは全部やっていきたいですね。その方が楽しいですし!」

自分の心の声に正直になって、やりたいことをやってみる。

そんな先では、自分のことも、今よりもっと好きになれているのかもしれない。

他人と比べてどう、じゃない。自分が、他でもない自分が何をしたいのか。そんな心の声を聞くことが、“らしく”生きるための一歩なんだと思います。

(取材・執筆:安久都花菜


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