ワーケーションに出かけたくなる都市ランキングの分析:アメリカ編
ヨーロッパベースの宿泊予約サイトを運営するHoliduは、独自にワーケーション指標を策定し、世界の主要都市のランキングを発表しています。
「ワーケーション(Workation)」とは、仕事(work)と休暇(vacation)を掛け合わせた造語です。日本でも、ここ数年で一気に「リモートワーク」が進んだことから、「ワーケーション」への関心は高まっています。
情報通信技術というテクノロジーの発展は、仕事のスタイルに変化をもたらしています。都会的な仕事であっても、物理的に都会にいる必要性が少なくなっています。
2022年の春を迎え、約2年半続いた「海外渡航が不自由な時期」の終わりが見え始めています。多くの国が、再び観光での入国を認めるようになってきました。
そうなると、国内でのワーケーションだけではなく、海外でのワーケーションについて考え始めるという人も増えてくるのではないでしょうか。
ということで、holiduが算出したワーケーション指数のデータをベースに、いくつかのデータを組み合わせて「ワーケーションに出かけたくなる都市」について検討してみたいと思います。
この記事では、調査対象となっている世界147都市のうち、アメリカの都市だけを抜き出して分析してみました。
その他の地域の分析については、以下の記事をご参照下さい。
ワーケーション・ランキング(アメリカ編)
まずは、単純にランキング順に並べてみましょう。このワーケーション指数では、数値が小さいほど評価が高くなっていますので、総合得点が小さい都市順に上から(ランキング上位の都市から)並べてみましょう。
調査対象となっている都市は全部で147都市、そのうちアメリカの都市は14都市となっています。
トップは、ロサンゼルスです。ロサンゼルスは、全世界ランキングでも30位にランクしています。第2位はラスベガス、第3位はサンフランシスコ、第4位はサンディエゴ、第5位はシカゴと続きます。
こうしてみると、5位のシカゴ以外はすべて西海岸に位置する都市になっています。どんな要素が西海岸の都市を、魅力的にしているのでしょうか。
やっぱり「お日様」が大事?!
西海岸といえば、代表的な州はカリフォルニア州です。そして、カリフォルニアのイメージといえば、「お日様」という人も多いのではないでしょうか。ワーケーションで仕事をして、気分転換に外に出た時に、雨や曇り空ではなく、スッキリと晴れた空で太陽に光を浴びると、エネルギーチャージされそうです。
「お日様重視」の場合、どの都市を選ぶべきなのでしょうか。X軸にワーケーション指数を、Y軸に年間の日照時間数をとり、アメリカの各都市をプロットしてみました。
ワーケーション指数が良く、日照時間の多い都市としては、ロサンゼルス、ラスベガス、サンフランシスコ、サンディエゴあたりが入ってきます。西部の都市ばかりなので、違ったカルチャーを楽しみたいと思えば、マイアミも選択肢として入ってきそうです。
ワーケーション指数はそれなりなのですが、シカゴ、ニューヨーク、ヒューストンといった都市は、お日様を求める人にはあまりオススメとは言えなさそうです。
ネットスピード重視派の人へ
ワーケーションなので「インターネットのスピード」を重要視したいという人もいるに違いありません。ネット環境が不安定ではオンライン会議などに支障が出てしまいます。
そこで、X軸にワーケーション指数を、Y軸にインターネット・スピードを適用したものが以下のグラフです。
この指標でも、西海岸の都市は魅力的だと言えそうです。ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンディエゴ、ラスベガスあたりは、ネットスピードも問題なさそうです。テキサス州のヒューストンもいい位置につけています。
ヒューストンといえば、「石油産業」というイメージがあるかもしれませんが、最近はシリコンバレーからヒューストンに拠点を移す会社や経営者が増えています。イーロン・マスクが率いるテスラ社も、拠点をテキサス州に移しましたね。
ワーケーション指数で好評価ながらもネットスピードで少し見劣りがするのが、シカゴ、ニューヨーク、マイアミといった都市です。テクノロジーに関する東西格差は、このあたりにも現れていそうです。
日本人の頭を悩ませる家賃問題
日本人が日本での収入をメインにアメリカでワーケーションをしようと思うと、「物価高」がネックとなってきます。よく知られるように、過去何十年もの間、日本の平均年収は上がっていませんが、その他先進国は上がっています。
日本からアメリカに行くと、「なんでもかんでも高い」ということでショックを受けるかもしれません。中でも深刻なのは、家賃ではないでしょうか。ワーケーションで比較的まとまった期間、渡航先の都市で過ごすとなると、アパートを借りたいというケースも出てくるはずです。
まずは、調査対象となっているアメリカの14都市の家賃ランキングを見てみましょう。数値は、1ベッドルームのアパートの月額平均家賃です(オリジナルデータは、イギリスポンドで示されていますが、1ポンド=161円で日本円に換算し表示しています)。
なかなか衝撃的なデータです。ニューヨークとサンフランシスコは、約35万円です。ワーケーション指数の評価が高かったロサンゼルスやサンディエゴで約25万円、マイアミで22万5000円というところです。
全体の分布を見たいので、X軸にワーケーション指数を、Y軸に1ベッドルームのアパートの平均家賃(月額)をとり、アメリカの各都市をプロットしてみましょう。
右上(第1象限に相当する部分)に魅力的な都市をプロットするため、Y軸の家賃は上に行くほど安くなっていることに注意してください。こうしてみると、ワーケーション指数の評価が高く、家賃が安いのは、ラスベガス、シカゴ、ヒューストンといった都市になります。少し家賃は上がってきますが、ロサンゼルス、サンディエゴ、マイアミも選択肢に入ってくるかもしれません。
逆に、サンフランシスコとニューヨークは、家賃の面から「断念」という人も出てきそうです。アメリカは、ここ最近インフレ気味ですし、円安も進行しているので、日本人にとってはますます厳しい環境になることでしょう。
ワーケーションに最適な安くて楽しいアメリカの都市は?
アメリカでワーケーションするなら、家賃である程度の出費は覚悟しなくてはいけなさそうです。その点がクリア出来るなら、ワーケーションなので「仕事(ワーク)」部分の条件はそこそこでOKとして、楽しむためには「休暇(バケーション)」部分で欲張りたいものです。
Holiduによるオリジナルのデータには、コストに関するいくつかの指標があるのですが、ここでは旅の楽しみの1つである「食」にフォーカスしてみましょう。X軸には、ローカルフードを提供する中級のレストランでの1食あたりの値段をとりたいと思います(オリジナルデータは、イギリスポンドですが、1ポンド=161円として日本円に換算しました)。
その都市が退屈な都市か、毎日のようにやることがあるエキサイティングな都市かについては、トリップアドバイザーに掲載された評価4以上のアクティビティの数という指標があったので、これをY軸にとってみたいと思います。結果は、以下のグラフです。
トリップアドバイザーに掲載された「Things to do」の評価4以上の数で、ニューヨークシティが圧倒的に多いことがわかります。あまりにもニューヨークシティとその他の都市との差が大きいため、他の都市の差異がわかりにくくなってしまいました。そこで、ニューヨークシティを取り除いてみましょう。
「安くて楽しい」都市は、第1象限(右上)にあるような都市ですね。「楽しいけど安くはない」都市は、第2象限(左上)にあるような都市です。
サンフランシスコやロサンゼルスは、ワーケーション指標で高評価でしたが、中級レベルのレストランで食事をしようとすると、2300円以上かかってしまうようです。安いといっても1食あたり1700円〜1800円という値段はかかってしまいますが、ラスベガス、サンディエゴなどは、「安くて楽しい」都市として日々のコストをおさえつつ楽しめそうですね。