[制作〜納品編]漏れたら大問題!ライターが最低限押さえるべき「セキュリティ」について
こんにちは。エディマート代表の鬼頭です。
メールやチャットツール、オンライン会議でのやりとりが一般的になり、誰もが情報をキャッチしやすくなったとともに、誰もが漏えいする危険をはらむようになりました。
とくにライターは仕事の特性から、貴重な情報にふれることが多いため、セキュリティ意識を高めるのは、もはや喫緊の課題と言えるでしょう。
前回の記事では、受注から取材にかけて情報を守るために気を付けたい項目をおさらいしました。この記事では、執筆から納品、さらには納品後にも注意すべきポイントをご紹介します
原稿は「書く場所」と「内容」に細心の注意を
前回の記事を参考にして、あなたがセキュリティに気を付けながら、情報を漏えいすることなく取材を終えることができたとします。ところが安心するのはまだまだ早いです。
そのキャッチした情報は、コップから今にもあふれそうな状態と考えてください。少し揺らしただけで簡単にこぼれてしまう。それぐらい、漏えいの危険があるのです!
■公共のWi-Fiにつなぎながらの執筆は避ける
前回の記事では、オンラインでの打ち合わせや取材の際に、カフェなど他人に見られたり聞かれたりする場所は避けたほうがいいとお伝えしました。執筆する場所も、私はできることなら公共の場所をおすすめしません。それは、やはり「他人に見られる」可能性があるからです。
「カフェでフリードリンクを飲みながら集中して書くのが自分流」というこだわりがあるライターもいると思います。「Webで調べ物をしながら原稿をまとめたい」というケースもあるかもしれません。その場合はまず、公共施設やカフェなどが提供するフリーWi-Fiへの接続は絶対にやめましょう。
たしかにフリーWi-Fiは、その名の通り無料で利用ができ便利ですが、通信内容が暗号化されていない場合、同じポイントに接続している人にメールの内容などが見られる危険があります。フリーWi-Fiに見せかけて、アクセスするとのぞき見や乗っ取りなどをする「なりすまし」のアクセスポイントもあるため、自身の用意したポケットWi-Fiか、スマートフォンのテザリング機能を使うことを推奨します。
総務省のホームページにも、フリーWi-Fiの安全な利用についてまとめた記事があるので、参考にしてみてください。
■パソコンにはロック、離席時は面倒でも携行を
カフェやファミリーレストランなどが、終日貸し切りということはまずありません。あなたが原稿を書いている間、横に別の人が座ることもあるはずです。
「性悪説に立って隣の席の人を疑え」とまでは言いません。ただ、隣にいれば、意図せずあなたの画面が目に入ることも考えられます。それを防止するためにおすすめなのが、画面に装着する「のぞき見防止フィルター」です。フィルターが可視角度を制限し、画面を横から見られる可能性を減らします。
また、パソコンには起動時のパスワードロックとともに、一定時間が経つと画面表示が消える(もしくはスクリーンセーバーになる)、「スクリーンロック」機能を設定しておきましょう。
よほどの「速筆」でない限り、原稿執筆にはある程度の時間を要するもの。カフェで作業にあたっていれば、トイレに行きたくなったり、途中で電話がかかってきて外に出ることもあるでしょう。そんな時は、のぞき見防止フィルターやロック機能に頼らず、必ずパソコンを携行するようにしてください。
さらに言えば、どれだけ気を付けても盗難される可能性はゼロではありません。パソコンのOSには、遠隔でデータを消去できる機能を備えているものもあるため、併用するのもいいと思います。
■不用意な個人情報を原稿に入れない
ここまで万全の対策を講じましたか?さあ、ようやく原稿の執筆です。
制作においては、未確定な部分に「ダミー」として、似たような写真を入れておいたり、原稿をインジケーション(★★★★★★★★などの記号を入れた目安)にしたりということがよくあります。
注意をしないとよく起きるのが、「ダミー」のまま進行してしまい、最終的に掲載に至ってしまうという事故です。本番に近い写真や、一旦仮で入れた数量などの情報は、気づかずにそのまま進んでしまうことがよくあります。それを防ぐために、アタリ写真の場合はその上に「アタリ」というラベルを置いておく、不確定な情報は★印などわかりやすい記号にしておきましょう。
また、自分だけが仕入れた情報があるからと意気込んで、本筋と関係のない内容を原稿に入れるのは避けたほうがよいと思います。たとえばアーティストが、楽曲制作の裏に込めた想いを語ってくれたとします。インタビューの世間話がてら家族の話を聞いたとしても、楽曲とまったく関係のないエピソードなら原稿に盛り込む必要はありませんよね。
「掲載前に本人確認があるから、不必要ならハネてくれる」と思うかもしれませんが、原稿化した時点で信用を失いかねませんし、情報漏えいした際の被害がより大きくなります。
これまでの納品方法では今は通らない
みなさんは仕上がった原稿をどのように納品していますか?
ひと昔前なら、メールに書類を添付するのが一般的でしたが、社会のセキュリティ意識が高まっている今、その納品方法は見直すべきです。
■メールを間違えましたでは済まない
前回の記事にも書きましたが、セキュリティ意識が高いクライアントの多くは、データの受け渡しや業務の連絡に関して、自社で設定したルールをお願いするはずです。まずは事前にルールを確認し、それに従いましょう。
近年、多くの企業ではウイルス対策の一環として、メール添付での納品を禁じています。もし事前に納品方法のアナウンスがなかったとしても、メールに書類を添付して送るのはやめたほうが賢明です。万が一間違ったところに送信してしまったら、公開前の情報が漏れてしまいます。
「自分は絶対に間違えない」ではなく、「自分も間違える可能性がある」と思うように!似たような施設の原稿を書き分けたのはいいが、確認時に相手先を入れ替えてメール送信してしまった……というエラーもよく耳にします。
■有効期限とパスワードを設定したクラウド納品が主流
今はクラウドストレージを介した納品が主流です。セキュリティ性の高いクラウドストレージに書類をアップし、有効期限とパスワードを設定。まずは納品先に、ダウンロードURLと有効期限を入れたメールを送り、別途パスワードを案内しましょう。
メールを分けることで、誤送信したとしてもリスクを軽減できますし、あなたのパソコンがウイルスに感染していたとしても、添付ファイルがないので他人に被害を広げることを防げます。
セキュリティ性の高いクラウドストレージの多くは有料です。無料で使えるサービスもありますが、正直なところ安全性が担保できるかは疑問です。ライターにとって痛い出費かもしれませんが、もはや必要経費ではないでしょうか。月額数百円で安全が買えるなら安いものです。なお、エディマートではマイクロソフトのOneDriveを有料契約し、データの授受に活用しています。
次の受注のために〜校了後も油断は禁物〜
納品後は何度か修正のやりとりがあることでしょう。キャッチボールの頻度が高く面倒だからといって、途中からメール添付に変えないように!
そして、ようやく迎えた校了。開放感から、セキュリティ意識までどこかに解き放ってはいけません。
自身のホームページやSNSを持っているライターであれば、ポートフォリオとして実績を公開することもあるでしょう。難易度の高い仕事、大手との仕事であれば、いち早く実績をアップしたい気持ちはよくわかりますが……。
■実績の公開はクライアントの許可を得てから
「記事が掲載されたらさっそく実績をアップ」というのは早計です。自分が書いたからといって、その実績をアップしてよいかは別問題。たとえば、あなたが「ゴースト」として書いた原稿であれば、それを公開してしまえばクライアントに迷惑がかかります。
そして、クライアントの間に代理店や制作会社が入っている場合は、まずあなたに発注した担当者に実績公開の相談をするのが筋です。過去には、当社から発注したクリエイターが、自身のホームページやSNSで許可なく実績を公開したことがありました。幸い、すぐに取り下げてもらい大事には至りませんでしたが、もしその情報をクライアントが見つけ、「誰の許可を得て公開しているんですか?」と当社にクレームが入ったら、もっと大きな問題になったことでしょう。
ライターのセキュリティ対策まとめ
前編・後編をあわせると、気をつける点が数え切れないほどあったと思います。もっと言えば、チェックすべき項目は日々増えたり、バージョンアップしたりしているため、「覚えたら終わり」ではなく、常に最新の動向を注視しなければなりません。
正直、「面倒くさい」ですよね?
でもこれらのセキュリティ対策は、令和を生きるライターには欠かせません。文章力や取材力を磨くのは大切ですが、それと同じぐらい重要だと認識してください。
編集プロダクションであるエディマートでも、常に世間の動向を見ながら最新のセキュリティ対策にバージョンアップしていますし、当社から発注するクリエイターの選定基準に、ITやセキュリティに関するリテラシーが加わるようになりました。つまり、セキュリティ意識を高めることは、仕事を増やすことに直結するのです。
ぜひ、「セキュリティ対策も商売道具のひとつ」ととらえ、前向きに取り組んでいただけたらと思います!
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