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書評『結婚とわたし』/結婚における男女平等を考える

こんにちは。エディマートの松永です。
第7回目の『エディマート読書部』ブックレビューにて、入社して初めてnoteを執筆させていただきます。

これを読んでいる皆さんは結婚されていますか?
未婚の方は、結婚に興味がありますか?既婚の方は、結婚生活うまくいっていますか?

「結婚したいけど、このまま進んでいいのかわからない…」「夫婦仲良く過ごしたいのにけんかばかり。我が家だけなのかな…」と感じている方、実は多いのではないでしょうか。

今回はそんなお悩みにぴったりな、同棲・結婚生活に奮闘するエッセイ『結婚とわたし』をご紹介します!


書籍情報

結婚とわたし
著者:山内 マリコ
出版社:筑摩書房
発行:2024年2月

この本を手に取ったきっかけ

私が著者の山内マリコさんを知ったのは、小説『あのこは貴族』がwebに掲載されていたことがきっかけ(※現在webでの掲載は終了)。東京の上流家庭に生まれた女性と、富山県出身で大学中退を経験している女性、階層の異なる二人を取り巻く物語です。

女性の抱えるやるせなさやもどかしさ、また女性同士の連帯を丁寧に描き、気になる存在だった山内さん。新しく文庫が出るという情報をSNSでキャッチし本屋に行くと、巻かれたピンクの帯にはこんな文字が。

\めざすは“家庭内”男女平等/
家事分担どうする?さぁ、腹を割って話し合おう!
「結婚」の幻想をブチ破る、レジスタンス・日記エッセイ。

本書・帯より

社会人として働き始めて以降、漠然と、しかしずっとフェミニズムに興味があった私にはぴったりだ!と手に取り、いそいそとレジに向かいました。

どんな本

2013年から2017年にかけて、雑誌『an・an』で連載された、山内さんの同棲生活・結婚生活について書いたエッセイをまとめた一冊です。

約5年分の日記とあって密度は高いですが、一つひとつのトピックは短く、かばんに忍ばせておいて好きなときにサクっと読むことが可能。結婚生活に潜む不平等への抗議がメインなのに、ユーモアにあふれた山内さんの筆致により、肩の力を抜いて楽しめます。
たとえば、夫の家事のしなさに愕然とし、二人でしっかり役割を果たそうと訴える場面。

「頼み方が下手なんだよ~」
そう言われた瞬間、あまりの怒りで気が動転、夫の腹部をドスドスとお相撲さんのように張り手してしまった。

本書より

さらに良いなと思ったのが、妻からの視点に偏らないよう、『男のいいぶん』として夫の一言も添えられていること。また、山内さんが連載当時を振り返った『後日談』が加筆され、この10年ほどの生活の変化や、世間のジェンダー観の変移を振り返ることができる点です。

わたしの感想

このエッセイを書いていた当時の山内さんは三十代中盤、まさに現在の私です。共働きで、結婚したときの年齢も近く、家事分担のため春闘を起こし、フェミニズムについて説く山内さんの姿に深く共感しながら読み進めました。この本が不思議なのは、愚痴やけんかの描写が多いはずなのに、「この二人は仲良しだなぁ」という読後感に包まれること。

とくに、『家庭内言語』というタイトルで、山内さんの愛猫・チチモをめぐるエピソードは傑作です。

目やにをたっぷりつけたチチモを抱きながら布団に入り、身動きがとれないわたしが夫につぶやくのが、このフレーズ。
「めやんこチュンチュンしたってぇ~」

本書より

いま、こうしてキーボードを打っているだけでもニヤニヤしてしまいます。上記の言葉が二人の間でどんな意味を持つのか、ぜひ続きを読んでいただきたい一説です。
ちなみに同じ猫好きとして、チチモに対する底なしの愛情にも深く共感。写真はなくとも、山内さんの溺愛っぷりからその愛らしさがくっきりと浮かび上がります

ただ、気軽に読めるエッセイという体裁を取っているとはいえ、この本に詰まっているのは山内さんの矜持

結婚は甘いコーティングとは裏腹に、女性差別を内包しています。
家庭という密室で、男女が対等な関係性を保つのは至難の業だけれど、それもこれも承知したうえで結婚に飛び込み、相手と真正面からぶつかり合いながら、家庭内での男女平等を目指す。

本書より

本書にも名字を変えることへの煩雑さが描写されますが、選択的夫婦別姓はいまだ実現せず、家事育児は女性がやるべき、という風潮も根強い。それでもこの本を読み終えて残るのは、腹を割って話せるパートナーとなら、よりよい結婚生活を送れるかも、という希望です。
結婚している人も、そうでない人にもおすすめしたい一冊です!

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