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こころの処方箋④~心を満たすためには〇〇が必要

アラフォー中堅世代の教員である自分は、
立場上、若手教員の不満や愚痴、仕事上の悩みを聴くことが多いです。

つい先日も、後輩から、
担任しているクラスで、
指導の難しい生徒がいて、
うんたらかんたら、どうしたこうした、と
さんざん話を聴かされました(苦笑)。

すべての悩みは対人関係の悩みである


というアルフレッド・アドラーの言葉の通り、
教育現場は、対人関係がお仕事ですから、
悩み多き職場であることは間違いありません。

そんな後輩の悩み相談のとき、
僕が心がけているのは、
まず、「ゴールを解決に置いていない」ということです。

指導上大変な生徒がいるとして、
その子が今すぐどうこう変化することは難しい。
その生徒には、その生徒なりの背景がありますから。
教員が苦しい思いをしているから、
どうにかしたい、という気持ちはよくわかるけど、
どうにかできるものではない。

どうにもならないことを、どうにかしようとするよりは、
後輩が「悩んでいること、苦しんでいることを」を
まずそのまま受け入れ認める態度を貫くことです。

ただし、相談時間(リミット)はあらかじめ決めておいた方が無難ですね。
放っておくと2時間も3時間も後輩が話し続ける場合がありますから。
後輩はスッキリしても、僕はボロボロになってしまいます。
だから、自分の許容できる時間をあらかじめ伝えましょう。
「15分だけなら、話聞くよ」と。

聴く側にも相当のエネルギーと覚悟が必要です。
僕自身、心身の調子がすぐれていないときは、
この悩み相談、愚痴相手は避けるようにしています。
やたらめったら対応できるものではありません。

聴く側、受け入れる側が心身ともに充実し、
エネルギー満タンの時に、
よし、後輩よ!!
悩みを打ち明けたまえ!!
そんな感じでしょうか(苦笑)??

で、とにかく相手の言葉に耳を傾けるのです。
自分の意見は不要です。
アドバイスなんて絶対しない方がいい。
原則は、相手の言葉を、そのまま復唱するだけで、
あとは「ああ」とか「ええ」とか
いい加減に相槌を打って聴くのです。

悩むケースについて、
具体的に挙げていけば、千差万別さまざまな状況がありますから、
具体的に対応しようとすると大変です。
そうではなく、もっとシンプルに原理原則で考えていった方が
省エネですね。

じゃあ、人間関係の悩みの本質は、なんだと思いますか??



僕は、

どうにもならないことを、どうにかしようとしているから悩む


と考えます。
ほとんどの場合が、これです。
いや、悩みの本質は、これ一本です。

そもそも対人関係をどうにかしようとするのは、
天気をコントロールするようなもので、土台不可能なのです。

なまじ、コントロールできているような錯覚があるから、
私たちは勘違いして、悩むのではないでしょうか?

特に現代は、教育や心理的アプローチに関するさまざまな
知見やテクニックがありますから、
若手教員は、自分の思い通りに相手を動かすことが、
デフォルトになっている気がします。

そうではない。
明日の天気を、人間がどうこうできないのと同じ程度に、
あなたの目の前の生徒の「気持ち」を変えることはできない!
不可能なのだ!!

今の教員に必要なのは、
人をコントロールすることは不可能なのだ、できないのだ、
という絶望感です。
人の心に対する畏怖といってもいい。

と偉そうなことを書き連ねたところで、
僕自身、目の前の後輩の気持ちを変えることは不可能なわけで・・・。

ただただ、後輩の愚痴を復唱しながら
受け止めるのです。
野球のピッチング練習をイメージしてください。
僕は、相手の球をただただキャッチする捕手です。

絶望しているのです。
自分には、この後輩のマインドセットを変えることは不可能だ、
オレは、この後輩の球を受け取ることしかできないのだ、と。

でも、そうすると、ですね。
僕が、徹底的に絶望して聴き手に回っていると、
後輩がふと
「でも、あたしが言いすぎているのが、
彼を苦しめているのかもしれないんですよねえ」と
発言することがあるのです!

後輩自身が、自分のマインドセットを見直し改めるための「気づき」。
それを後輩が獲得した瞬間です。

もちろん、それが正解だという保証はどこにもありません。
でも、後輩が自らの力で獲得した、大切な「気づき」です。
これは、ゆくゆく、指導困難な生徒への対応へ役立つものになるでしょう。

なにかが変わる、ほんの小さなきっかけになるかもしれない。

そう思うと、
絶望していた分、希望がより大きく感じられます。
僕は聴いていただけ、存在していただけ。
でも、それでも、
後輩が自ら変化するきっかけの一つにはなれたのかなあ、と思うと、
嬉しくて、その日の晩酌がすすむのです。

心を満たすためには、絶望が必要です。

絶望しているからこそ、満たされる感覚がうまれます。

サウナで汗かいて、なかば脱水状態になった方が、
かえってビールがうまくなるようなもんですかね。

違うか…(苦笑)。

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