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はじまりの、はじまり。の小説集。

4
彼は彼女の願いを叶えに行きました。 彼女の願いは「 」でした。
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記事一覧

ある日から、ある日まで。1

プロローグ

空の色は確か、水色。
そうであったはずだった。
時計の短針が左隣の数字に位置を変えると同時に、空の光が絞られていく。まるで誰かが世界を狭くしているかのように、空が黒く染まり始め、青空の中で雲と同色で存在していたはずの月も、暗闇を照らすライトのように光っていた。
月は1人の男を照らし、彼もまた、その月をじっと見つめている。右手に小さな銀色の懐中時計を握りしめながら。
「あと少し。」

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夢から会って。4

これは夢なんだろうな。
と、夢を見ながら、夢の中で思っている。
また、話は明日ねと言われてから少し経って眠りについたが、夢の中で、一人の女の子がこんなことを言っていた。
「もうお終い。あなたは最初から『子ども』じゃなかった。でも、『大人』でもないけれどね。」
そう言った彼女は、私に顔を見せずに、風で揺れるカーテン越しに見える青く澄んだ空を見ていた。
あの時、彼女はどんな顔をしていたのだろうか。

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ライトで照らしに。3

「心の底から、僕は願ってるんだ。だから僕は、行くんだよ。」
彼は笑顔でそう言っていた。
でも僕はあの時、彼の真意が分からなかった。
もし、今、彼の心が見つかったなら、
彼の心の底はどこまで続いているんだろう。
深くて何も見えないとしたら、僕はどうすべきだろう。
僕は知りたい。
なぜ、彼は行ったのか。
たった一人の君のために、なぜ必死になれたのか。
僕は知らない。だから、知りたい。
僕が彼を探し当て

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はじまり、はじまり 2

人間って、どうして笑ってしまうんだろうね。
思えば、とんでもないつまづき方をして空中にスーパーマンのように飛び、顔面から地面に着地した時も、私はニヤけていた気がする。傍から見れば、あの人あんな状況なのに笑ってるわ、と思われるに違いないのだが、人間おかしいもので、驚く顔がだんだんと笑顔に切り替えられていってしまうようだ。だから、分かって欲しい。
今、私は驚いているのだ。

驚く笑顔の内側で、頭の中

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