夢から会って。4

これは夢なんだろうな。
と、夢を見ながら、夢の中で思っている。
また、話は明日ねと言われてから少し経って眠りについたが、夢の中で、一人の女の子がこんなことを言っていた。
「もうお終い。あなたは最初から『子ども』じゃなかった。でも、『大人』でもないけれどね。」
そう言った彼女は、私に顔を見せずに、風で揺れるカーテン越しに見える青く澄んだ空を見ていた。
あの時、彼女はどんな顔をしていたのだろうか。
あの時、青く澄んだ空だけが彼女の表情を知っているなら、私も知りたいと思ってしまう。
でも、それは不可能だ。
だって、彼女の表情を唯一知るその空も、言葉を残したその彼女も、
現実には存在しないのだから。
私はそのことを分かっている。けれど、これが夢だと分かっているのに悲しくなるのはなぜだろう。その存在が無い事が嘘であればいいのにと、会ったことのない彼女に思いを馳せながら、この夢に終わりが訪れるのを感じている。いつかは唐突に終わる夢の果てを、今は知らないけれど、それまでに彼女の事を知れるだろうか。その言葉の意味を、聞き返せるだろうか。
と思った、その時だった。彼女は私に伝言を残した。
「あなたの夢は素敵よ。まるで現実みたいに、空が遠くまで澄んでいる。あとね、あなたは私を知らなくてもいいの。今はね。あら、もう夢が終わる時間みたいね。じゃあ、また会いましょう、まだ、こどものあなた。」
彼女は私の方に振り向いて言ったはずだけれど、私の瞼は重くなって、閉じてしまった。暗くなった世界で、彼女の言葉が反響して遠ざかっていく。
また会えるのか、と思って心が安堵しつつ、夢が終わった事を実感する。
今、目を開ければ、もう夢じゃない。
そこに見えるのはきっと現実だ。彼女のいない現実だけれど、また会えるのなら、目が覚めても悲しくない。
さぁ、起きようか。
と、目を開ける。
そこに映った光景に、私は少し違和感を覚える。
映るはずの人数が一人多い。
その映るはずのない人の正体は、
「私」、だった。

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