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ポストコロナの世界観~変容する世界と社会2 経済のニューノーマル

ポストコロナの経済では以下6つのニューノーマルをベースに考えていく必要があると考えている。

インフレ
当初は景気の激しい落ち込みに伴う原油価格下落や消費者物価下落により、デフレの様相を示す。しかし、新型ウイルスのダメージに対応した各国の財政支出急拡大と極端な金融緩和がそろそろ転換を迎えるぐらいのタイミング(3~5年後?)で、過剰流動性が一気に表面化、コントロールの難しいインフレに突入する可能性がある。
また、新しい生活様式の下で、感染対策のコスト増もバカにならない(直ちに物価に転嫁されるだろう)。これらが急激な財政拡大・金融緩和の結果としての過剰流動性に加えてインフレ加速要因となりうる。悪い方に触れる直観がある。

低成長
初期には、感染抑止のための国境封鎖・都市封鎖(ロックダウン)に起因する観光・外食需要の消失が顕在化したが、それ以外の経済活動も停滞した。ロックダウンはいずれ解除されて経済活動は再開していく。需要はコロナ前の水準に復帰せずとも総じて緩やかに回復するであろう。しかし、観光・外食における需要はそう簡単には戻ってこないだろう。これら産業では需要の消滅的減少が中長期に継続することを覚悟する必要がある。

中期的には、(国にもよるが)失業者はかつてない高水準で高止まりするため、マクロでみた所得落ち込み・消費低迷につながり、経済成長の足かせとなり続ける。

高失業
短期的には、移動制限など感染抑止策に伴う観光・外食など「移動・接触ビジネス」分野を中心に失業が激増するのは避けられないだろう。

中長期的には、失業者増は移動・接触に関連したビジネスにとどまらないだろう。残念ながらリモートワーク進展は全体として雇用増には働きにくい。リモートワーク推進はむしろ業務効率化に直結しやすい。企業部門では収益悪化を背景にリモートワークに最適化した業務プロセスのIT化・AI置き換えが急速に進むことで、産業全般にわたって雇用が減少すると予想される。金融・サービス業に加えて教育産業や高度なR&D分野でも例外なくIT化・AI化が進む。IT・AIに関連した成長分野を除き、雇用創出・水準維持が非常に困難となる。こうして失業率は慢性的に高止まりすることとなるだろう。

貿易停滞
当初は、感染抑止に伴う都市ロックダウン等による各国需要落ち込み、並びに、感染抑止のための各国往来・物流の中断により、貿易は停滞、原料では市況下落、製品では需給ミスマッチが発生した。

貿易は一旦回復に向かうとしても、上記のような低成長が継続するため、コロナ前水準に達することは難しい。むしろ、今後、保護主義的傾向の強まりから、さまざまな貿易制限が出てきて各国往来・物流の停滞へつながるかもしれない。

最も懸念されるのは米中対立のエスカレートによる米中貿易の縮小均衡である。米中以外でも火種が見られる。例えば、当初は医療関連(マスク・防護服・ワクチン・抗ウイルス薬など)に限られていた各国争奪戦が、各国の雇用維持を隠された目的とした貿易制限措置の実施で、より幅広い品目・サービスにおけるコンフリクトに発展する可能性もあると懸念している。WTOは機能不全に陥る。

大きな政府
都市ロックダウンや休業要請に伴う補償金支出、困窮者に対するバラマキ支出は、最終的には国民へのツケとして増税で賄わざるを得ない。

加えて景気低迷の長期化により、税収は減少の一途をたどるだろう。財政収支は思惑をはるかに上回るスピードで悪化し、早晩(2~3年後には早くも)、支出削減か増税か(もしくは破綻か)の選択を迫られるであろう。

各国のコロナ対応の追加財政支出はすでに公表されただけで未曽有の規模(世界全体で9兆ドル=1000兆円、世界の年間GDP 90兆ドルの10%に相当)に膨れ上がっている。財政破綻を免れるためには、イメージとして各国とも3~5年後に実効法人税率40~50%、消費税20%以上のかつてない高税率の負担を国民・企業に強いる可能性がでてくることになる。

⑥地球環境問題の棚上げ:
すくなくともポストコロナの当面の間、地球環境問題への取り組みは低調になると予想している。というのも、各国政府の関心は大失業対策と経済立て直しに絞られ、環境問題にかかわっている余裕はなくなるからだ。米トランプ大統領はもともと環境問題に懐疑的であるし、環境急進派であった豪州でさえもすでに「環境より雇用、雇用を生み出すなら石炭はアリ」と言い始めている。国際機関は自らの存続が危機に瀕する状況では仕掛ける余裕はなかろうし、そもそも、低成長もしくはマイナス成長下では温暖化ガスの排出も増える可能性は小さい。

1.で説明したようなグローバリズム退潮の中では、コロナ前と異なるこれら六つの「ニューノーマル」を前提とする必要があるだろう。

次回以降は、これらニューノーマルによって、われわれの社会や毎日の生活は具体的にどのように変わっていくのか、考えていきたい。

(続き)


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