ソーシャルビジネスにできること、できないこと⓪ ~9割は言い過ぎ?~
はじめに:9割は言い過ぎ?
「社会問題の9割はビジネスで解決できる」という、ボーダレスジャパン代表の田口一成氏が書いた本を読んだ。創業して1年しか経たないが、私も社会起業家の端くれであり、日本のソーシャルビジネス界の大御所ともいえる田口氏の著書は読まずにはいられない。というのは正直なところ建前9割で、タイトルへの違和感が読書のキッカケだ。
どこに違和感をもったのかというと、シンプルに9割という数字の大きさである。実際に9割の社会問題がビジネスで解決できるのであれば、問題に対する公的な支援・介入は1割で良いということになってしまう。そのいわゆる新自由主義(ネオリベラリズム、政府による市場介入を最低限にすべきという思想)チックな古い考え方は、ソーシャルとの相性が悪いように感じるが、どうなのだろうか。
いやいやでも、主張の中身を聞かずに批判するのは良くない。ということで本を読んでみると、タイトルを裏付けるようなものはほとんど見当たらなかった。本の内容は、ボーダレスジャパンの仕組みと成り立ち、今までのソーシャルビジネスの事例、などの紹介がメインだ。
もしやマーケティングのために派手なタイトルにしたのか?と思わせられるほどである。しかし、そうだとするとあまりに軽率だ。上述の通り、社会問題における公共の役割を1割で良いとしてしまうこと、そしてそれを業界のインフルエンサー的立場から著書タイトルで訴えてしまうことは、本質的に公助を必要としている人々に対してネガティブに働きかねない。総合的に見て、社会問題は解決どころか、悪化していくかもしれない。そんな影響を持ち得る言葉を中身の裏付けなく発信してしまうのは、軽率というほかないだろう。
勘違いしないでほしいが、私は田口氏を尊敬している。本の中身を読んでも伝わってくる先駆者としての行動力と忍耐力、利他心の深さ、そしてビジネスに対する経験の豊富さは、偉大である。でも、このタイトルはいけ好かない。だから、申し訳ないが、私はここで建設的に批判をする。
そこで、割合は明確に示せないとしても、ソーシャルビジネスで解決できる、あるいは解決しやすい問題ってなんだ?という問いを立ててみた。これが分かれば、何割の社会問題をビジネスが解決に導けそうか、少しは見えてくるかもしれない。よし、なんだか大作になる予感がしてきたので、分割して休憩もしながら書いていきたい。まずは、「ビジネス」と「社会問題」の定義を私なりにしっかり考えよう。
続く。
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