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競争から脱却し、一人で勝手にワクワクドキドキを見つける生活

歳をとっても残る武器は何か

生まれ変わったら"ちいかわ"になりたい。「わ、わぁ・・・」とか言ってるだけで幅広く色んな人にチヤホヤされたいし、ちいかわにゾッコンな若い女性たちの情緒をかき乱して、キャーキャー言われたいものだ。

しかし、現実には中年のおじさんが狼狽えていても周りの目は冷ややかになるばかりだし、若い子は余裕のないオヤジのことを金ヅルとしかみなさない。

中年の男とは実にシビアな立場である。

40代にさしかかると趣味が楽しめなくなってくると言われる。世の中にあるほとんどの趣味は優越感が原動力となっており、老眼でゲームの判断スピードが落ちたり、四十肩でスポーツの試合展開についていけなくなったりすると、途端に楽しくなくなる。

趣味一本槍で生きるのは危険だな、ということが歳をとるにつれて分かってきた。衰えゆく身体はしょうがないにしても、何がしかの武器を携えておかないと惨めな後半生になる。

老人が盆栽を趣味にするのは、それが自分の世界観を作り上げるもので競争の要素を含まないからだ。これからも言葉を磨き続け、自分の世界観を育ててゆきたい。

最高にくだらないリミッター解除

歯科検診をしたところ、虫歯と歯周病が進行していることが分かり、歯医者さんに通い始めた。担当してくれた歯科衛生士さんが目元美人で、内心ドキドキしながら治療を受け、口の中が血だらけになってゲンナリすることを半年ぐらい繰り返していた。

虫歯の穴を塞ぐ際には、保険適用外で1本7万円するセラミックで埋めてもらうことにした。治療を一通り終えた時は「いよいよあの歯科衛生士さんともお別れか」と一抹の寂しさを感じ、感傷的なBGMを脳内で流しながら1人で勝手に盛り上がっていた。

3ヶ月後、歯の定期検診に行くと、私は驚愕の事実を聞かされる。

「セラミックが割れています。おそらく寝ている時の歯軋りが強いためです」

なんということだ。歯科衛生士さんと会いたいという私の潜在意識が、顎の力を何倍にも跳ね上げたというのか。普段、人間は身体の持つポテンシャルの2割ぐらいしか発揮していない。

しかし、必要な場面ではそのような脳のリミッターが外れ、通常よりも遥かに強い力が発揮される。「限界を超えた力を発揮する」というのは少年ジャンプだと非常に盛り上がる展開だが、やっていることは己の口内環境の破壊である。

ちなみに保証期間内なので代わりのセラミックは無料でつけてもらえる。病院にも損害を与えているのでいい迷惑だろう。

なお、セラミックの付け替えを担当してくれた歯科衛生士さんは、最初の人とは別の人だった。これで歯軋りがなくなったら私のしょうもない下心のせいということになる。

そんな低俗な人間と思われたくない!たのむ、歯軋りは健在であってくれ。でも、もう付け替えるのは嫌だ!セラミックを破壊するところまではいかないでくれ。

私の心は千々に乱れ、脳内で流すBGMも選曲が悩ましい。いろんな意味で熱い夏は、まだまだ続きそうである。

俺の奏でるビートを聞け

大学生時代にほんのちょっと映画サークルに所属していたことがあり、社内で放映するためのプロモーションムービーを作ることを命じられた。

営業職員さんにインタビューをして、そこにいろんな演出をつけながら盛り上げ所を作る。そんな中、最年長の営業職員さんの登場シーンで、ダースベーダーのテーマを取り入れてみた。

試作品ができて偉い人たちに見せると、「おい、このBGMを使うのは許可を取っておいたほうがいいぞ」とコメントをもらった。

最年長にふさわしい重厚感のある音楽だと思ったのだが、人によっては茶化していると捉えかねない。あらかじめ根回しをしておけ、という指令である。

早速、最年長の営業職員さんの上司に電話をかけた。

エコアニ「すいません、〇〇さんの登場シーンにダースベーダーのデータを流したいのですが」

営業職員さんの上司「おお、なんだその曲は。言ってみろ」

エコアニ「ドゥーン、ドゥーン、ドゥーン、ドゥドゥドゥーン、ドゥドゥドゥーン♫
ドゥーン、ドゥーン、ドゥーン、ドゥドゥドゥーン、ドゥドゥドゥーン♫
という曲です」

営業職員さんの上司「・・・分かった。分かったからもうお前に任せる」

電話口を通した私の迫真の再現BGMが胸を打ち、無事に使用許可が出たようだ(私の周辺の人たちはみんな吹き出していた)。

営業現場は2年しかいなかったが、熱量と密度がすご過ぎて、いくらでも思い出が溢れてくる。ものを知らないからこそ出てくる猪突猛進な姿勢は、ケガもたくさんするが、かさぶたになる頃には良い思い出になる。

今だったら通話中に曲を口ずさんだりなんでできないだろうなぁ。

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