私がヴァイオリンと出会うまで。

「どうしてヴァイオリンをやろうと思ったの？」
リアルでも散々聞かれてきたし、あまりにもありふれたテーマなので書くつもりもなかったのだけど、最近子供の生徒さんが増えたし、昔を思い出して書いてみようと思う。

私はごくごく普通の夫婦のもとに生まれた。結婚数年目にやっと授かった事もあり、若干過保護に育てられた。
父がそれなりに音楽に縁のある職業だったので、小さい頃からキーボードやピアノをおもちゃにして遊んでいた記憶がある。そして幼稚園入園と同時に某大手の音楽教室に通い始めた。
音楽教室はグループレッスンで、歌を歌ったりエレクトーンを弾いたり、音当てをしたりした記憶がある。そして先生が怖かったのをよく覚えている。母曰く、体験の時の優しげな先生のクラスは実はもう満員で、別のクラスなら空いてると言われて似たような雰囲気だろうとOKしたら騙された！らしい。
ただ、この怖い先生のクラス、お遊びではなくしっかり教えてほしいという意識の高いお母さん達には人気だったらしく、精鋭の集まりだったようだ。何も知らずに入れてしまった母は、お母さん方のメモの取り方ひとつにもレベルの違いを感じたと後に語っている。
そんなクラスで私はそれなりに真面目にやっていたものの、時々ポヤ〜ンと意識が別世界に行ってしまう瞬間があり、先生からはあまり気に入られていなかったようだった。そして節目の進級試験で希望のコースは不合格になってしまった。
それを縁の切れ目と捉えた母は、潔くその音楽教室を退室した。ただせっかく音楽の導入は学んだので何か楽器を個人レッスンで習わせようと、別の某大手の音楽教室のレッスンスタジオへ見学へ行く事になった。
そこでたまたまその時間にやっていたのがヴァイオリンのレッスンだった。先生は両親と同年代の男の先生だった。子供達を相手に次々とレッスンを進めていくのだが、生徒が音を外したり間違えたりすると面白い動きでずっこけていた。
それが当時の私は妙にツボってしまい、ヴァイオリンを気に入ったというより『あーこの習い事いいかも』という事で入会を決めたのだった。

というわけで、私がヴァイオリンを始めたきっかけは
『見学に行ったヴァイオリン教室の先生のズッコケにウケたから』である。

『子供の頃テレビですごく素敵なヴァイオリニストが演奏してるのを見て感激して〜』とか『生のオーケストラを聴きに行った時に、あの楽器をやりたい！ってヴァイオリンセクションを指差したの』とかいう他の人のきっかけを聞くたびに、私の動機って…と思わなくもないが、理想も欲も特にないところから始められたから逆に続いたのかな、と良い方に考える事にしようと思う。