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樺沢紫苑『父滅の刃』感想文

精神科医・樺沢紫苑先生の著書『不滅の刃』感想です。
2020文字の長文ですがよろしければお付き合いください。


はじめに

私は看護師です。母性看護学は看護学校で学んだものの、
父性についてはどこかぼんやりとしたイメージでしたが、
父性というものについて触れるとき、
私は実父との生活・父親不在の生活・養父との生活を思い浮かべます。
母の離婚と再婚を経験しているためです。

『父滅の刃』というタイトルを見たときに、
『鬼滅の刃』が鬼殺の話なので「父滅?ってことは父殺?」と驚きました。

読んでみて「なるほど!私、学んでいた!」と納得。
心理的に「父親殺し」を経て子どもが大人になる過程、
「エディプスコンプレックス」に通じていたからです。

この本を読んで、私の家族歴と父親殺しを考察しました。


1. 私の家族歴から見る父性と父親殺し

■ 実父との生活(生後~小学校1年生)

穏やかな実父。幼少期なので記憶自体が少ないのですが、
実父のことは好きでした。

就学前、10円玉が汚れていたため、
私は汚いものは捨てるものだと思いゴミ箱に捨ててしまいました。
「お金をそんな風に扱ってはいけない」と、
穏やかですが厳しめの口調で諭されたことは覚えています。
叱るときは母の方が怖かったので、叱る父もいるんだと認識しました。

■ 父親不在の生活(小学校1年生冬~小学校3年生)

両親が離婚。
離婚の明確な理由は告げられず父を恋しがりましたが、
母から父は死んだと聞かされ諦めます。
父親のいる生活への憧憬がありました。

母の実家で祖父や叔父の「切る」父性は目にしていましたが、
自分に向くことはなく、母の中にある強い父性を受け取っていました。


■ 養父との生活(小学校4年生~成人。現在私は結婚しており養父とは離れています) 

母の再婚により養父とともに暮らします。
実父への思いが残っており養父を否認。
しかし、養父は私の望むことに協力的であり、頼れる姿もありました。

小学校5年生の時に妹が生まれましたが、
両親からの対応は妹と分け隔てないものでした。

私の父親殺しは、おそらく母の再婚当時からあった、
母や養父に対する反抗心だと思います。

思春期に差し掛かる時期でもあり、大きく反抗することはなくても、
養父への否認、再婚で母に裏切られたような思いから、
小さな反抗を長期的に続けていたように思います。

一方、親に依存しなければ生きられない立場も理解していたし、
母や養父を悲しませることはしたくないという
子どもなりの良心もあり複雑な感情を持っていました。


2. 父親殺しの終焉

父親殺しが終わったのは高校卒業の頃です。
養父(以下「父」)は、実父と同じように穏やかな性格です。

バリバリ仕事をこなす印象ではありませんでしたが、
重要な仕事を任されることもあり帰宅は遅い日が多かったです。

母の持つ強い父性に押されることもありましたが、
父の行動力や決断は速く、
私は「切る」父性原理を見続けていたのかもしれません。

高校時代、私は父にある嘘をついたのがバレたことがあります。
「そうしたかったなら初めから言ってくれればよかった。嘘はいけないね」と、父から穏やかに諭されました。

強い父性を持ち、実親という最も叱りやすい立場にある母を
間に立ててしまえば、父は叱る作業からは逃げられたのに、
私と二人の時にそのように言ったのです。

反抗期と思春期の真っただ中の再婚相手の連れ子女子高生を相手に、
父は「娘」として向き合い、父性役割を果たしたのでした。

この頃までは反抗心いっぱいだった私ですが、
そのころから父親殺しは終焉に向かっていったように思います。

実の娘として育ててもらいましたし、
私が看護師として就職して間もなくうつになった時にも、
見守るという父性で接してくれました。


3. 感謝・尊敬の対象

再婚相手の連れ子の「父になる」という覚悟や
背負ったものの重さを思うと、今は感謝や尊敬の気持ちでいっぱいです。

『父滅の刃』を読むと、子の父に対する尊敬や憧れが先にあり、
成長過程でその存在を殺す(乗り越える)のが神話の流れのようですが、
私の場合は、父親殺しが先にあって、
父性への憧れや尊敬は後から出てきたのだと思っています。

子の父親殺しを受け入れる父性や、その先の尊敬を父から学びました。

今の私は母が再婚した当時の父と同じ位の年齢ですが、
父と同じような決断はできるかわかりません。
まだ手探りではありますが、私なりの父性を発揮したいと思います。


おわりに

私の家族歴を事例に取りましたが、
教育やリーダーシップなど、社会生活にも父性は必要とされます。
あらゆる映画や舞台作品を観ている樺沢先生の解説のおかげで、
神話への興味も深まりましたし、
父性や父親殺しの視点で解説される映画はどれも観たくなります。

視点の転換で世界が変わるのはここ最近体験していることなので、
まずは大好きな『オペラ座の怪人』のミュージカルDVD(本書で紹介済)
を観ようと思います。


お読みくださりありがとうございます。


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