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王様のブランチに馴染めない私はオールナイトニッポンを聴く

正しい本、という感じがしてなんとなく避けてたんですが、超絶ミーハー女子大生なので結局読んでしまいました。ブレイディみかこさんの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

中学一年生の男の子が、学校や社会をずんずん進んでいく中でレイシズムやジェンダー問題、貧富の差にブチ当たり、その度に真正面から小さなでもたくましく柔らかな心で受け止めて、考えて、自分なりの答えを出していく。子どもでも大人でもないグレーな時期を生きる少年たちは日々ものすごいスピードでこの世界を吸収しているんだという事実に、主人公のお母さんとともにわたしも夢中になっていました。

面白かったです。

でもやっぱりわたしが好きなのは文学で、この本は文学じゃないなと思いました。

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は、正しいことを正しいと教えてくれる教科書のような本で、王様のブランチで絶賛されていそうな感じがすごくしました。

この本を読んだ人は誰であっても意義を唱えようがないし、誰もが正しいと本当はわかっていることを再確認させてくれるような、あ、やっぱりこれって大事だよねって重ね塗りしてくれるような本でした。

わたしが好きなのは文学です。正しいとか正しくないとか、そういうのじゃなくて、というか善悪の概念なんて不安定で虚構で実体のないものなので、わたしは物語を通して常識とか道徳とか善悪とかそういうステージよりももっともっともっともっと小さくて深いところにある個人的な感情を掬い上げて全身でそれを観察したいな、と思っているんですよね。

落ちるところまで落ちた人間のヒリヒリするような衝動、日々漂うように生きているわたしが空気に溶けてしまうギリギリのところで留まっている理由、誰かと分かりあいたいのにどこまでいっても証明できない心、いったい何人聞いているんだろうと思うけれど確かにそこに世界が広がっている深夜ラジオ。

社会の実益には一ミリだって貢献しない、とことん個人的でそれゆえに誰も正解が分からない問題。コスパが悪すぎます。どこまでいっても答えはないのに考え尽くしたって世界は変わらない。それでも誰かの心の核にグサッと刺さって残ってしまうような強烈な何かを残していくもの、そういうものをわたしは味わいたいです。

こんなことを言っても、この社会を生きるには正しいことをちゃんと正しいと知っていることも必要で、この本はそれを丁寧に真摯に教えてくれていると思います。

安全地帯から見た世界はでもやっぱり退屈でした。

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