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書評・レビュー(最新)

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#書評

「考えさせることを考える」AI研究とSFの近くて遠い関係――大澤博隆監修・編『A…

本書は、「人工知能とSFに関する相互の関係を調べるプロジェクト「想像力のアップデート:人工…

海老原豊
1日前
2

経済リベラルと政治リベラル――吉田徹『アフター・リベラル』(講談社現代新書)

リベラリズムとはなにか? という問いはとても難しい。リベラリズムは、時代や国、論者によっ…

海老原豊
2日前
5

タコから考える知性――池田譲『タコの知性 その感覚と思考』(朝日新書)

イカの研究者であり、最近はタコも研究している琉球大学の池田譲によるタコ研究の最新動向を紹…

海老原豊
3週間前
4

ここに人間はいません――藤沢数希『ぼくは愛を証明しようと思う。』(幻冬舎文庫)

小説の体にはなっているが、実質的にナンパのマニュアル本。橘玲『裏道を行け! ディストピア…

海老原豊
3週間前
7

つながりっぱなしの世界に切ないセカイはあるのか?――北出栞『「世界の終わり」を紡…

画期的なセカイ系論。この本の出版により、セカイ系という概念は歴史化されたと言えるのではな…

海老原豊
4週間前
3

私たちの脳がスマホになる――アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)

思っていたよりまともな(まじめな)本であった。「〇〇脳」という言葉には、つい警戒してしま…

海老原豊
4週間前
5

文学批評の6つの立場――小林真大『「感想文」から「文学批評」へ――高校・大学から始める批評入門』小鳥遊書房

本書は6つの批評的立場を歴史にそって紹介し、そのうえで批評のもつ役割(可能性)を説く。 当たり前だが、歴史的な話なしに批評とは何かを語っても「車輪の再発明」的な展開になってしまう。本書が6つに分けた批評的立場は非常にクリアで、この分類がすべてではないにしろ、本書がターゲットとする高校生や大学生が文学批評を知るには十分なものだ。私自身が大学生の頃にこのような本があればよかったとに、と思う。学生時代に批評それ自体はけっこう読んだが、個別の批評を歴史的文脈に照らしながら体系として

思想は言葉で、言葉は運動し、運動は思想を形づくる――笛美『ぜんぶ運命だったんかい…

筆者・笛美は2020年にTwitterでかなりバズったハッシュタグ「#検察庁法改正に抗議します」を作…

海老原豊
1か月前
3

一緒に未来を考えるメソッドーー宮本道人、難波優輝、大澤博隆『SFプロトタイピング…

SFプロトタイピングで作られるプロトタイプ(試作品)にはガジェット、キャラクター、プロット…

海老原豊
1か月前
1

嗚呼、憧れと焦りの日常系YouTubeーー青田麻未『「ふつうの暮らし」を美学する』(光…

あまり美学系の本は読まないが、「日常美学」なる枠組みで「日常系vlog」についても分析してい…

海老原豊
1か月前
2

人間でない人間、人間である人間――上田早夕里『華竜の宮』(ハヤカワ文庫JA)

日本SF大賞受賞作。短編「魚舟・獣舟」の世界を舞台にした上下巻ある長編小説。 ホットプルー…

海老原豊
1か月前
1

子供が生まれなくなった惑星で――新井素子『チグリスとユーフラテス』(集英社文庫)

名前は知っていたが読んでいなかった作品。もっと早く読んでいればよかった、と思うほどに未読…

海老原豊
1か月前
2

苦しみの解像度を上げる――ぼくらの非モテ研究会『モテないけど生きてます 苦悩する…

非モテ=モテない人(主に男性)を指す。ただ非モテの定義は思った以上に難しい。モテる・モテ…

海老原豊
1か月前
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語りたくない語りにくいことを丁寧に語る――杉田俊介『マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か #MeTooに加われない男たち』(集英社新書)

筆者の前著『非モテの品格』に続く男性論2冊目。フェミニズム、ジェンダー、クィア、メンズリブなどの理論書を参照し男性論、男性学、メンズリブの現在地点を照射しつつ、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『トイストーリー4』『ジョーカー』などここ10年以内に話題になった映画を男性性という観点から批評もしている。理論&批評の書。 タイトルにもある「マジョリティ男性」と「まっとうさ」を、丁寧に語っていく。必要なのは根気強さだ。 「男女差別は今や過去のものとなり、本当のマイノリティ/