マガジンのカバー画像

書評・レビュー(最新)

72
書いた書評まとめです
運営しているクリエイター

記事一覧

見事に言語化されたなんとなくの経験知――北村紗衣『批評の教室』ちくま新書

シェイクスピアを専門とし、武蔵大学で教鞭をとる筆者・北村紗衣による批評入門『批評の教室』…

海老原豊
6日前
12

文学批評の6つの立場――小林真大『「感想文」から「文学批評」へ――高校・大学から…

本書は6つの批評的立場を歴史にそって紹介し、そのうえで批評のもつ役割(可能性)を説く。 …

海老原豊
6日前
6

思想は言葉で、言葉は運動し、運動は思想を形づくる――笛美『ぜんぶ運命だったんかい…

筆者・笛美は2020年にTwitterでかなりバズったハッシュタグ「#検察庁法改正に抗議します」を作…

海老原豊
6日前
3

人間の認知に基づいた合理的な英語学習法ーー今井むつみ『英語独習法』岩波新書

本書は人間の認知に基づいた合理的な英語学習法を紹介している。 そもそも人間の脳は特定のパ…

海老原豊
7日前
16

一緒に未来を考えるメソッドーー宮本道人、難波優輝、大澤博隆『SFプロトタイピング…

SFプロトタイピングで作られるプロトタイプ(試作品)にはガジェット、キャラクター、プロット…

海老原豊
7日前
1

嗚呼、憧れと焦りの日常系YouTubeーー青田麻未『「ふつうの暮らし」を美学する』(光…

あまり美学系の本は読まないが、「日常美学」なる枠組みで「日常系vlog」についても分析してい…

海老原豊
7日前
2

人間でない人間、人間である人間――上田早夕里『華竜の宮』(ハヤカワ文庫JA)

日本SF大賞受賞作。短編「魚舟・獣舟」の世界を舞台にした上下巻ある長編小説。 ホットプルームの上昇による海面上昇。海面が260メートル上昇し、白亜紀(クリティシャス)規模の海の広さになることからリ・クリティシャスと呼ばれるこの地球規模の厄災は、人類文明への試練となった。滅亡の危機にさらされたところで人間同士が急に理解し合えるわけではなく、領土や覇権争いから、分子機械を戦争へ投入し、人間の制御を超えた殺戮の地平(水平線)がそこには出現した。少なくなった陸上と、建設された海上都

子供が生まれなくなった惑星で――新井素子『チグリスとユーフラテス』(集英社文庫)

名前は知っていたが読んでいなかった作品。もっと早く読んでいればよかった、と思うほどに未読…

海老原豊
10日前
2

苦しみの解像度を上げる――ぼくらの非モテ研究会『モテないけど生きてます 苦悩する…

非モテ=モテない人(主に男性)を指す。ただ非モテの定義は思った以上に難しい。モテる・モテ…

海老原豊
11日前
5

友/敵を判別する困難――川合信幸『ヒトの本性 なぜ殺し、なぜ助け合うのか』(講談…

筆者はヒトとその他の動物を比べることで、ヒト(やその他の動物)の心の動き、進化の過程を探…

海老原豊
11日前
3

語りたくない語りにくいことを丁寧に語る――杉田俊介『マジョリティ男性にとってまっ…

筆者の前著『非モテの品格』に続く男性論2冊目。フェミニズム、ジェンダー、クィア、メンズリ…

海老原豊
12日前
13

〈その場所〉で読みたい小説――燃え殻『これはただの夏』

燃え殻は『ボクたちはみんな大人になれなかった』を読んで、好きになった。 その日は確か、大…

海老原豊
12日前
8

評論家は何をする人なのか――辻田真佐憲『超空気支配社会』(文春新書)

さいきんSF評論家を名乗っている。評論家には医者や弁護士や教師のように免許があるわけではな…

海老原豊
12日前
5

昔からの系統主義vs経験主義という対立を超えるには?――小針誠『アクティブラーニング 学校教育の理想と現実』講談社現代新書

アクティブラーニングという言葉、数年前はよく耳にしたのだが、最近は以前ほど聞かなくなった。 理由は2つある。アクティブラーニングとセットで語られていた2020年度以降の新大学入試が、思っていたほど変わらなかった。新大学入試の変更点は①記述式の導入と②英語4技能が測れる外部検定の導入に尽きる。もちろん、「これこれこういう理念があってこれこれこういう形式の変化があるのだ!」という論理の筋道はあるが、世の中的には「記述とスピーキングね」とざっくり受け取られていた。提案当初からさま