多産タイプ人魚姫の跡

いつしか地球はロボットに支配された。生き残った少数派の人間たちはそう思い込んで抗戦を続けている。核兵器も使ったが、それでもロボット人間は死なず、戦況は悪化する。 

だけれど、ロボット人間がロボットであると、人間たちは解剖しても神経をウネウネさせて生き続ける捕獲した異常人間から判断するに至ったけれど。

人間には通じない言語を用いる、当のロボット人間たちは知っている。

我らは人魚姫が子孫、海の支配者の末裔たる姫君が人間の王族と恋をしてできた、正当なる海と陸の支配者たちの子孫。

そう、知っている。

であるからして、権利がある。海に。陸に。そして、生きる権利も。繁殖する権利も。なにも悪いことなどなく、自然淘汰の結果で追い詰められたとか叫ぶ人類が核攻撃など勝手にするので、害虫であるので、これ以上の地球破壊を防ぐために、人間たちは殺さなければいけないものと共通認識を持つに至った。人間たちは、哀れにもこれを戦争という意味の言葉で表現しているが、ちがう。

これは自然淘汰の結果で、地球を害する者は人間たちであり、人魚姫の子孫たちはその討伐と核兵器の利用などを防ごうとしている。

淘汰の結果をみずからは決して受け容れられないとは。実に、じつに人間らしい話だ、と、人魚姫たちの子孫は嘆いている。
不毛な人間たちに嘆いている。

まぁ、最初に陸に出てきた人魚姫が、恋を成功させていき、魚であるのでいきなり1万匹も産んだのは、まぁ、人間からしたら反則などと思えることかもしれないが。

預言者の才覚、サイキック能力があったとされて、人魚姫の子孫たちにも大事にされている人間はいる。アンデルセンだ。
アンデルセン童話にて、人魚姫に、人魚姫の子孫たちに、どうかこうなって欲しいと彼は予言を童話に変えて描き、残している。

美しきゆめ物語、人類の正しいすがた、芸術品として、アンデルセンの人魚姫童話の初版本は、子孫たちの美術館にて、立派に展示されていた。
人間の善き側面を描いたもの、として。

泡になって消える、美しき、夢。
愚かにしてうつくしい生きものの象徴だ。


END.

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