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マヤ文字を現代日本に合わせてリデザインする

架空の世界のUIをデザインする

ゆめみさんと活動しているUIやUXについて楽しく研究する視覚伝達情報設計研究室(通称:視伝研)にて、新たに『架空の世界のUIをデザインする』というテーマで、各メンバーごとに思い思いの架空の世界を想像してUI研究を行った。
メンバーとブレストする中で「SF映画の世界のUIの考察」「犬や猫、もしくは細胞などの人間でない視点に立ったときのUIって?」など、興味がつきない話題が飛び交う楽しい時間から徐々に各々の興味に対してテーマを絞りながら研究を進めていった。

他メンバーの研究内容はこちらから↓

マヤ文明のUIを考える

僕のテーマは完全な架空の世界ではなく、歴史上で今の文化や価値観がまったく違う時代のものを改めて現代の目線でデザインし直してみるとどうなるか?と考え、その中でも大きく今の価値観と異なり、新しい視点を発見できそうなマヤ文明について調べ、現代風にリデザインできることはないかを探っていった。

マヤ文明の面白さ

話は脱線するが、マヤ文明はとても面白い。
紀元前1000年頃から16世紀頃まで栄えていた文明で、一番身近なところでは2012年の世界滅亡を唱えるマヤ暦が有名かもしれません。(本当はマヤ暦自体が2012年で一区切りなだけで、特にマヤ文明が世界滅亡を唱えていたわけではないのだけれど)

地域としてはメソアメリカという北米と南米の間の細い地域を中心に、北は砂漠、南はジャングルという環境で独自に発展してきた文明である。
最終的にスペインがやってきてマヤ地域を制圧してしまうのだが、それまで独自の美的価値観や宗教観を持った文明が2000年以上も続いていたと考えると胸が熱くなる。

このあたり一帯がマヤ文明が栄えた地域(https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=681197)

特に面白いのはマヤ人たちの美的価値観で、体にピアスやタトゥーなどを装飾したり、理想を求めて頭蓋骨や歯を変形させるなど現代から見ると少し怖いところもあるが、場所や時代によってこんなにも美しいと感じる感性が異なることを知ると、今の世の中で当たり前と思っている価値観が、いかに社会的規範に影響されているかをまじまじと感じる。
(映画、アポカリプトを観ると当時の原住民の格好などがよく分かる)

まるでマーク。かわいらしくて日本語とも親和性のあるマヤ文字

アイコンやマークのようなマヤ文字(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%A4%E6%96%87%E5%AD%97

そんなマヤ文明を調べる中で出会ったマヤ文字。一見するとマークというか絵というか、とても文字には見えず、独特のゆるさと愛嬌がある。
複数の文字を一つのマークに組み合わせて文字とする独特のルールがある文字らしい。
さらには、音を表す『表音文字』と意味を表す『表意文字』が混ざっている文字で、そういった文字は世界的にもかなり珍しく、ほかの例は日本語くらいだという。

考えてみると複数のパーツを組み合わせて一つの文字にするところも漢字に通ずるところを感じるし、なんとも言えない運命を感じ「このマヤ文字について研究を掘り下げよう」と決意。インターネット上の情報や、書籍などからマヤ文字についての勉強を始めた。

マヤ文字について調べる

マヤ文字については、いくつかの文献や資料を調べさせてもらったが、特に白水社から出版されている『マヤ文字を書いてみよう 読んでみよう』(著:八杉 佳穂)や、ゆるクリラジオで配信されていたマヤ文字愛好家の鈴木健一さんの動画などを大いに参考にさせてもらった。

特に、上記のマヤ文字ワークショップの内容はマヤ文字のリデザインをするうえでも参考になり、視伝研メンバーでもワーク形式で思い思いの言葉をマヤ文字に置き換えてみるなど試してみた。

メンバーの名前や、そのときの気持ちなど思い思いのマヤ文字

現代日本のマヤ文字を考えてみる

一通りのルールなどを把握したうえで、今回のテーマでもあるUIデザインに立ち戻り、これらの文字を現代日本風に置き換えるとどのようなものになるかを検討してみた。

マヤ文字自体にはどのような由来か解読されていない文字も多かったため、以下の通りに踏襲するルールと、独自アレンジするものを整理してリデザインを行った。

踏襲するルール

  • 複数の文字を組み合わせて一つの文字とする

  • 母音と子音の組み合わせごとに文字を定める(ただし、母音・子音は日本語をベースにアレンジする

  • できるだけマヤ文字の持つ独特の雰囲気を壊さないようにする

アレンジするルール

  • それぞれの文字は日本語でもなんとなく想像できるようなモチーフを採用する

  • 濁点や半濁点の考えはマヤ文字にはないため、各モチーフの横に濁点や半濁点をつけても良いものとする

  • 「ん」については通常の記号と、省略記号を用意する

上記をもとにモチーフの書き起こしや五十音記号へのマッピングを行い、それらを何度か実際に文字にしてみたうえで、モチーフの差し替えや、具体化・抽象化を繰り返してバランスを整えたものが以下になる。

マヤ文字現代日本風アレンジ 五十音表

現代日本版マヤ文字(と呼ぶとなんだかややこしいな。。笑)が完成して視伝研メンバーにも自分たちの名前や好きな文章などを書き起こしてもらった。

メンバー伊藤くんの名前を書いてもらった
メンバーの山下さんバージョン
さて、なんて読むでしょう?
現代マヤ文字で、あの有名な一節を

テーマを取り組んでみた発見や考察

今回、完全に架空のものをテーマにはせず、過去の歴史から違う価値観となるものをピックアップしたことで、ある種の制約が良い方向に作用し楽しく研究が進められた。
なによりも、マヤ文字というものに出会えたのが一番の収穫。

また、文字というコミュニケーションツールについても考えを巡らせることができたのも印象的。
過去に『メッセージ』という映画でエイリアンの文字をデザインした記事を読んだときにも考えさせられたが、文字には言葉や、それを話す人達の文化が色濃く反映されており、それらを伝えるために練られた工夫や、見た目の造形など多くのものを感じることができた。

視伝研では、こんな形でゆるゆるとUIやUXについて研究を進めている。次回は『UIの歴史』についてウェブに限らないUIについて研究中なので発表をご期待ください!

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