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ゆるクリラジオ番外編 マヤ文字2.0 ワークショップ体験記

2020年7月18日土曜日に開催された、Learn by Creation ワークショップデザインチームによる「ゆるクリラジオ」から生まれたコラボレーション企画「マヤ文字2.0 ワークショップ」
ご参加者の方から届いたご感想をまずはご覧ください。

本当に最高でした。ここまで創ることに前のめりになれる体験は久しぶりでした。文字って、うまく描くことより、多様に描けることが豊かなんだと、本当に腑に落ちて感じることができましたし、それって日本の書道もそうだよなと、自分の汚い字を肯定できるきっかけにもなりましたw
文字を組み合わせていくと絵になるというのが楽しく、感動でした。また、マヤの人々や文化を想像する思考の旅ができ、身の回りの世界を見直すきっかけとなりました。神への捧げ物として人力を尊重し、手間を惜しまないマヤの人々。現代の効率優先で余裕のない社会は神の不在がもたらす面もあるのかと感じた。また、文字に対する認識も、現在の私たちが感じているものとは違って、時間、空間を越えるものとして尊ばれていたのか。と想像が廻りました。


このように創作に没頭し、そして時空を超えて想いを馳せることができたマヤ文字2.0ワークショップについて、ワークショップデザインチーム あこさんが体験記としてレポートしてくれました。ぜひ御覧ください。


1. マヤ文字2.0ワークショップに参加してみた

7月某日の土曜日、夜8時からのプライムタイムにマヤ文字を描いてみた。

きっかけは、Learn by Creation Onlineから生まれたソーシャルメディアとしての”ゆるクリラジオ”。その第6回目のゲストがマヤ文字愛好家の鈴木健一さんだった。

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鈴木さんは中2でマヤ文字の魅力にはまり、美大でデザインを専門的に学ぶ傍ら、卒業制作では漆喰に古代マヤ文字を刻みこんだ巨大な石碑をつくり、今もその壁の一部と暮らしている。(本業はUXデザイナーさん)

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最初は、ながら聞きをしていたラジオの声を、気が付いたら真面目に聞いていた。
私が惹かれたのは鈴木さんがマヤ文字を話すときの言葉選びや、その空気感だ。

「この人は、マヤ文字を目の前にいる大切な人を愛しむように見つづけて、とても尊敬する人と話すときのように丁寧に言葉を選んでいる
そんな印象をうけた。
僕は研究者ではなく愛好家です」というところも謙虚でよい。
と、ちょっと上から目線で、鈴木さんのファンになった(笑)

もちろんマヤ文字そのものにも興味がわいた。
漢字の象形文字よりも、ずっと不可解で、ちょっとトボケタユルキャラ風なのだ。

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そんなわけで、ゆるクリラジオのスピンオフ企画として、マヤ文字づくりに挑戦できるワークショップが開催されると聞いたとき、すぐにエントリーをした。
鈴木さんの指導のもとで、マヤ文字を書いてみたいと思った。

当日のワークショップの運営チームは、ナビゲーターに鈴木さんを中心に、ラジオパーソナリティの門川さん、リクオさんの名司会者と、ディレクターのまきこさんが加入して盤石な体制があった。

参加者は、小学6年生を筆頭に中学生、高校生、保育園経営者や、母親、コンサルタントや経営者など多世代かつ多彩な顔ぶれがそろっている。
世代ギャップは40年を超えている。

この数か月で、オンラインコミュニケーションが”ふつう”になって、私自身も仕事柄、オンライントレーニングやワークショップを手掛ける機会が増えた。
ZOOMで均等に区切られた画面のなかにいると、他の参加者の年齢や見た目からの印象、立場や役割などを意識せずに、お互いにニュートラルなスタンスで臨めるように感じる。
また、リアルな場にある“同調圧力”に引っ張られずに「コト」に集中しやすいとも言えそうだ。
だからチームの多様性を活かすとき、場所や時間の制約を超えるだけでなく、関係性構築の面でもオンラインには利点があるのかもしれない。
デメリットとして評される“離脱圧力”への配慮は必要だが、マヤ文字ワークショップにおいては心配無用だった。

理由は2つある。
ひとつは教える人・教わる人の縮図を超えて、全員がマヤ文字創作に対して前向きな好奇心にあふれていること。
例えば、コンサルタント兼サウナーのIさんは、ZOOMの仮想背景に遺跡らしき写真を背負っている。
聞けば古代マヤ文明にもサウナが存在し、写真はそのサウナの跡であることを興奮気味に紹介してくださったり、最年少参加の6年生のNさんは、小学2年生のときにお父さんと粘土でマヤ文字を創作したことがある強者だったり。
学びの質は、誰と学びあうかにより大きく左右されると思っている。

もう一つは、マヤ文字を創作するプロセス、鑑賞・読み解きの行為が、思考だけでなく、感性と身体性(描く)をいい具合に行ったり来たりすること。あっという間に“コト”に没頭してしまうところにあると思う。

ここからはワークショップの流れにそって、実際に何が行われたかを紹介したい。


2.【解説】「マヤ文明ってなに?」

なんだかんだで四大文明やヨーロッパ大陸の文明はその名前や発祥について学んだ遠い記憶があるけれど、メソアメリカの文明についてはほとんど知られていなかったりする。
マヤ文明については、天文学に対する造詣の深さや、マヤ歴に対して神秘を感じてはいたけれど、真面目に読んだり調べたりしたことはない。

鈴木さんと一緒に地図で場所を確認し、マヤ文明の特徴を4つの観点から解説してもらう。統一王朝がなく戦国の世だったことや(比較的大きな地域が小さな地域を統率することはあったようだ)、大河がないにも関わらず文明が発達したこと、車輪や大きな動物の動力を使わずに、あくまで人力でピラミッドを作り上げていることなどを聞かされる。

神の存在をつくりあげ、崇拝し、神殿であるピラミッドは神に近づくための聖域のため、人間の手で手間暇かけて創造することに意義を見出していたそうだ。
石灰岩に人間の手で彫刻された文字は、大きなものもあるが、驚くのは指3本をあわせた第一関節くらいの小さな枠のなかに精巧に刻まれているものが沢山ある。

手仕事でこれだけの技術を習得するのにどのくらいの年月をかけたのだろうか?文字を書ける人は特別な人だったのだろうか?そもそも一体何が描かれて(書かれて)いるのだろうか・・・。チャットには素朴な質問のオンパレードが並ぶが、その都度、鈴木さんが丁寧にわかりやすく解説してくれる。

いよいよ、ワークショップのホンマルへ。

マヤ文字には「表意文字」(例:漢字)と、「表音文字」(例:ひらがなやカタカナ)のタイプがあること、地域によって方言があり、それは「ルビ」の位置によって表現されていることなどを教えてもらう。


3.【創作ワーク】マヤ文字を書いてみよう①


鈴木さんのガイドを受けながら、我々は「表音一覧」をアンチョコにして創作を始めた。

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A4の白紙用紙を6等分にして、小さな折り紙のような正方形を手元に12枚用意した。1枚に1文字だ。用意していた水性ペンが太すぎたので、フリクションボールペンを使った。(消して書き直したりできるので使いやすかった)

表音一覧をにらみながら、正方形の小さな紙に向き合う。
ひたすら型をなぞってみる。

一音のなかには、複数の表音表現があり、どれを選んでもよいらしい。
シンプルなものもあるけど、ユルキャラ風は手ごわい。
自分の視覚バイヤスにとらわれたりもする(ハクション大魔王のような王様の顔だと思っていたら、鳥の横顔だったり・・)動物のような、海や磯の生物のような造形をコツコツなぞる。

私は昔から、目で見て読むより手で書くほうが記憶に刻まれる。
何かを真似して覚えるときは、制約と規律のあるスペース(方眼紙が好み)に筆圧が残るくらい強く書く=身体に刻みこむとで記憶されることが体感値としてある。
デジタル化で知の外在化がどんどん進む今でも、何かを自分の言葉に置き換えるときは、手で書いてみると自分の中に入ってくる気がする。
だからいまだにノートが手放せない。
文字を真似して、なぞっていると無心になれる。


4.【解説】マヤ文字の書き方


次に、文字を組み合わせて意味をもたせることに挑戦する。単語や文章にするイメージだ。今回は自分の名前を創る。手元にA4白紙1枚を意して、文字の組み合わせの基本パターンの手ほどきをうけた。

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5.【創作ワーク】マヤ文字を書いてみよう②


ここからの創作タイムがとても楽しい。私の場合は正方形のなかに7文字を収めるのだが、全体の構造とデザイン性を意識しながら、小さな紙の位置や向きを変えながらしばし想像する。

仕上がりは大きな余白があるよりも、ぎゅっと詰まった感じが美しいとされているようで、空白のスペースには自由に装飾もしてよいとされているらしい。

なぞって、真似して、つぶして、回して・・・。

紙を擦るペンの音だけが聞こえるかと思いきや、パーソナリティチームがマヤ文字談義におおいに盛り上がっている(笑)
まるで、いつものゆるクリラジオがその場で再現されているようだ。

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賑やかだが、気にはならなかった。それだけ集中していたのだろう。

私は自分の名前を書きあげるだけで時間が足りないくらいだったけど、10代の皆さんは、あっという間に複数の作品を美しく創り上げていて、本当に驚かされた。

6.【鑑賞&読み解きワーク】マヤ文字を読んでみよう


自分の作品を、写メに撮って運営チームに送ると、最後の読み解き&鑑賞セッションが始まった。一人ひとりの作品をみながら、早押しクイズ的に、誰の名前が書かれているかを当てていく。
読み解きも学生さんが圧倒的に早いので、ここは争うのをやめることにする(笑)
そして、口ぐちに自由な鑑賞コメントを交わした。

出来上がった作品はこちら。

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どれも個性があふれる美しい作品だったけど、細部にわたり繊細に丁寧に、キュートにデザインされていた中学生のHさんの作品や、唯一レイヤーの技術を使って構造を示していた高校生のKさんの作品は、何度も見いった。本当に素敵だった。


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7.【おわりに】

鈴木さんの現在の創作活動は、マヤ文字のフォントづくりだそう。フォントとしての機能を重視し、誰にでもわかりやすく、使いやすように、「可読性」「識別性」「簡素性」「法則性」を考慮している。

シンプルで美しいフォント一覧を見せてもらったが、素人目からは、とても完成度は高かった。

反射的に「すごいですね」と伝えようとしたときに、鈴木さんが淡々と、でも静かに熱を帯びた声で語りだした。

初めて鈴木さんの言葉を聴いたときに感じた、マヤ文字に対する愛おしさとリスペクト感がにじみ出る語りに思えた。

「出来上がったフォントを眺めていたら、得も言われぬ違和感がありました。皆さんはどうですか?」という問い。

この問いへの鈴木さんの決断と語ったことばに、やはり、ぐっときた。

きっとこのワークショップは今後も開催されるはず。
鈴木さんがこの時に語ったことばは、ぜひ本人から直接聞いてほしい。

アーティストの創造性とは、実は試行錯誤を受容し続ける力なのだと聞いたことがある。

これは、LXCの理念でもある「創るから学ぶ」を追求するうえでも大切にすべきことだと思う。

鈴木さんが最後に教えてくれた新たな挑戦の結果を楽しみにしている。


文章
西村 明子 |Learn by Creation ワークショップ・チーム 

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▼ 最後にもうお一方、とてもご丁寧にステキな感想をお送りいただきましたので、シェアさせてください。


マヤ文字というのが自分の中で「生きた文字」に変わったのを感じました。
感情、センスによって、文字の容姿が変化するというのは、まさに「生きている」なと、こう感じたわけです。
どの並べ方が適切か、どの詰め方がよいかなどを考えたり、紙面で文章をグラフィカルに配列させる部分は、現代のグラフィックデザインにも通じているものがあると思います。
しかし、言葉を伝えるという目的のために、イメージによって別字に変えてみたり、伸び縮みさせたりという有機的な視点感覚は、とても今の形式化された文字では得がたい気がします。
今回は発表型ということで、参加者の皆さんそれぞれの内なる個性が文字に現れているのを感じることができました。これはとても素敵なことでした。
すべての読み手や書き手が文字、言葉、言語を有機的にとらえることができるのなら、それはすなおな表現となって、世の中はより直感的になるんじゃないかなあ、なんて考えさせられたのです。
また、最近はデジタルのフォントにおいても、文字の並びによって表示が変化するフォント(リガチャ)とか、パラメータを動かすことで表示が変化するフォント(バリアブル)のような有機的な表現は可能となってきています。
そういった表現を考えて使っていく上でも、マヤ文字に学ぶことはとても多いのではないかということも感じました。
他にも本当に色々なことを意識することができました。マヤ文字に、3千年も前の文字に、これほど多くのことを気付かされるとは思わず、とても大きな充足感と読後感で深い余韻に浸っております。
かつてのマヤのグラフィックデザイナー達にも、鈴木さんにも、敬服の気持ちでいっぱいです。
今回は貴重な体験を本当にありがとうございました!
またの機会がありましたら、よろしくお願いします。


ご参加くださった皆さま、ありがとうございました!
またお会いしましょう。



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