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中世絵巻物の世界に少しづつ

こんばんは、神戸もとても暑くなってきました。暑い中なので、一人で歩いている時はマスクを外して必要に応じて着けていますが、まだそういう人は少ないですね。

少し前に網野善彦さんの本に出会ってから、中世の本を少しづつ読んでいます。その中で紹介されている様々な絵巻物に興味が湧いてきました(『日本の歴史をよみなおす』『異形の王権』『中世の非人と遊女』など)。博物館や美術館での特別展で実物が展示される際には見に行きたいのですが、色々調べているといい本を見つけました。『絵巻物による日本常民生活絵引き』1巻~5巻 澁澤敬三 編著・角川書店・1965年発刊です。

この本を企画した澁澤敬三は、あの渋沢栄一のお孫さんで、学術に深い造詣があり様々な分野の研究者を個人的に支援されてきました。何せお金持ちですから、パトロンのような感じで資金を提供していたのだと思います。その中で各地の寺や旧家にある絵巻物から常民(庶民)の生活や風俗を記録していく事を思いついたそうです。もちろん今と違いコピー機やデジタルカメラなど無い中ですから、絵巻物を忠実に模写してくれる人や様々な人の協力を得ながら、かなりの労力をかけて丁寧に作り上げた本だと感じます。制作の一人に民族学者の宮本常一の名前もありました。残念ながら資料整理・作成にかなりの時間がかかったものと思われ、発刊は編著である澁澤敬三さんが亡くなった後になりました。

私が良く行く図書館の蔵書にあったので、先日1巻だけ読んできました(この1巻の冒頭に澁澤敬三の息子さんの言葉が載っています)。中世の様々な絵巻物の中での人々の様子や服装、小道具、加えて建物や生活場面から動物まで、細かい部分にまで注釈が付けられています。私はまだまだ初心者で、まずは解説の漢字が読めず(-_-;)傍らにスマホを置いて調べながら読んでいきました。

渋沢栄一記念財団のHPより。ちょっと画像が小さいのですが絵の中に番号が振られており、その解説が下にかいてあります。

図書館の蔵書にあることが分かったので、これから少しづつ見ていこうかなと思います。ただ、全て白黒なのが本当に惜しいなと思っていましたが、一部の資料は国立国会図書館デジタルコレクションで公開されていることを知りました。

このデジタルコレクションHPの中身はかなり膨大そうで、まだ少ししか見ていません・・・ですが、網野善彦さんの書籍でも結構引用されていた絵巻物『一遍聖絵』のデータがありました。いままで書籍ではモノクロだった絵巻物の世界に色がついており結構感動しました。

国立国会図書館デジタルコレクション『一遍聖絵』第4巻より。左側が一遍上人、烏帽子の武士や市場の様子、またその周囲にいる乞食など様々な人物が描かれています。

カラーの資料としては歴史の教科書の副読本で図録が出ていますが、デジタル資料ならではの機能として拡大機能があります。自分が気になった部分を、人々の表情や細かい服装・装具などがデジタルズームできるのは現代ならではのありがたさですね。

絵巻物には当時の生活がリアルに、何の躊躇もなく描かれているので上の画像にあるような乞食や、犬神人(いぬじにん)などの様子がわかります。特に『一遍聖絵』は踊念仏という宗教の物語ですから、聖と俗、卑賤、そして朝廷という様々なレベルが日常的に接近してある世界が描かれています。有名な絵画と異なる絵巻物の世界は面白そうです。

まだまだ奥は深そうですが、自分の理解として、まずはここまでです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


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