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eatreat.エッセイ「ケアと手紙」

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eatreat.はアーユルヴェーダをもとに、料理や執筆など様々な表現を通じて「あたらしいケア」について考えるブランドです。このマガジンでは、私が「ケア」について様々な視点で考えた…
運営しているクリエイター

#エッセイ

わたしのリズム、あなたのリズム、心地のいい音楽

不安という名前をした、細い橋の上をえんえんと歩いていた26歳の頃、青山ブックセンターで出会…

さみしさの正体

元気でいてと ぎゅっと抱きしめて 空港へ先を急ぐのさ とは小沢健二の『僕らが旅を出る理由』…

時が満ちたと感じた時が潮時

鹿児島の朝は早い。天然温泉が湧く市内では、朝6:00からまちの銭湯で温泉に浸かれる。アーユル…

存在しない境界線を引いて現れる傷、守られるわたし

渋谷のハチ公で土曜日に行われたウクライナ侵攻反対デモを、少し離れたところから見守った。 …

関係性の中で紡ぐ、わたしの"トーチ"のための本づくり

多くの優れた小説がそうであるように、はじまりは自分がすっかり蚊帳の外からフィクションを楽…

旅の効用

年の瀬に北海道の旅に出たら、太平洋側で、普段あまり雪が降らないこのまちに大雪が降っていた…

さようならは仮のことば

一年前のとても暑い夏の夜に、黒くてかっこいい船に乗った。乗船すると間もなく船は荒波へと舵を切り、以来ずっと、夜の中の旅をした。 強い波に逆らうようにして勢いよく走るばかりの日々だったわけではない。ぽっかりと満月が私たちを照らすから、静かに波の上で寝転がった日もあった。搾りたての蜂蜜のような金色の光はそれは甘美で、そればかり舐めていたらどうにかなりそうだとすぐにわかってしまった。 それでまた強い波の方へと船が舵を切る。ずっと変わらなかったのはそれが夜の中だったこと。早朝に朝

まなざしを綴じて、心に触れる

計算が正しければ、付き合いが12年目に入る猫が我が家にいる。 行方不明になった過去があり、…

灯台の光にはご用心

今年の夏休みには新潟の知り合いのワイナリーを訪ねて、葡萄を摘む手伝いをさせてもらった。わ…

"わたし"に触れる、癒す、許す

昔々に読んだ外国の小説で、愛する人を探す男が身体中に刺青を入れながら世界中を旅していて、…

eatreat.の料理をつくる ある1日

朝5:00の起床、天気を確認する。 猫と一緒に伸びをして、人間の自分がどれくらい固まっている…

望みを持って、少し離れたところにいる

昔読んだ河合隼雄先生の本の中で、京都の国立博物館の文化財を修繕する係の方の話があって、こ…

歪みの自然・矯正の不自然

「その人にとっての自然な歪みを矯正すると、不自然になることもあるんですよね」 最近通い直…

よろこびは、口笛とスキップとともに

春の訪れのよろこびを、口笛とスキップとともに伝える子どものような心を保ちましょう。と恩師が言った。いつも、アーユルヴェーダってインディジョーンズみたいだよね、と言う先生だ。 古典医療の世界の入口は、海の波打ち際のように広く、訪れる人を誰も拒んだりしない寛容さがある。そして、はじめに学ぶことの多くは「既に知っている」と懐かしさを覚えるようなことばかりだ。 ただし、勇気を出して足を踏み出し、海底へと潜っていくと、そこには考えもしなかった人の生命の誕生や成長、心と肉体の形成や破