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#なまはげの国から2016夏 −秋田県男鹿市

長野で過ごした夏から一年が経とうとする頃から、さて今年はどこに行こう、と滞在先を探し始めた。去年がすごく楽しかったから、また同じところに行くという選択肢ももちろんある。でもせっかくなら、違う場所での暮らしも経験してみたい。(それに実を言うと、長野の家を Airbnb でもう一回見てみたら値上がりしていて、ちょっと手が出ないな、と思ったのもある。)

「一ヶ月間だけ家を借りる」というのは、案外難しい。ふつうの賃貸物件は、契約時にかかる諸々の費用を考えたらものすごい額になってしまうし、そもそもたぶん一ヶ月だけなんて、貸してくれないだろう。でも旅行客を想定しているような貸別荘とかコテージなどは、一泊あたりの価格設定を30泊分にかけ算すると目が飛び出るような金額になってしまう。

ロングバケーションをとる文化のある外国とちがって、日本では多くの宿泊施設が、日単位、長くても週単位のステイしか想定していないんだなということがよくわかる。

それともうひとつ我が家にとっては大事な条件があって、それは、夫が仕事をするので、インターネット環境が必須だということ。家に環境が整っていなくても、せめてポケットWi-Fi 等のサービス圏内でないと、我が家のプチ移住は成り立たない。

それでなかなか滞在先が見つからず行き詰まっていたときに、夫が Twitter で「日本のどこかに家族4人が夏の1ヶ月を過ごせるような空き家はありませんか?」とツイートしたら、知り合いが心当たりがあると言って、不動産屋さんを紹介してくれた。

そこからトントン拍子に話が進んで、借りることができたのが、男鹿半島の先端に近い場所にある、元々は民宿だったという空き家だった。


日本海を望む高台の上に建っていて、とにかく眺めが最高。

目が覚めて窓を明けると眼下に広がる日本海。家から坂を下ってすぐのところに展望台があって、子どもたちと散歩しに行ったり、家族が起きてくる前に目が覚めた時や、運良くするりと家を抜け出せた時にはひとりでコーヒーを持ってぼんやりしたり。市の1/3の面積に相当するという国定公園のなかに建っているだけあって、景観はもうほんと素晴らしいし、車でほんの数分いけば温泉にも入れる。しかもものすごい破格で貸してもらえてしまったのだ。最高すぎる。

ただ、何も使われていないただの空き家だったため、生活するための道具などが揃っているわけではなく、今回はかなり多くのものを自宅から持ち込む必要があった。小さい車に屋根まで荷物(布団も!)をくくり付けて、東京から 680km の道のりをえんやこらと移動するのは、それなりに大変だった(←運転の100%を担う夫が。ペーパードライバーなわたしは役立たずなのです)。

元民宿というだけあって、お風呂には「浴場」という札がついていたし、台所は「調理場」だった。食器棚のなかには "いかにも" な感じの食器が(それもすべて20枚ずつとか!)入っていたし、どの部屋も窓際にルノワール調(?)のソファとテーブルが置いてあって、おもしろかった。


平日昼間は、ひたすら水族館とビニールプール。

家の前の坂を、展望台を通り過ぎてもっと下っていくと、男鹿水族館GAOというおおきな水族館があって、ここにはとてもお世話になった。到着翌日には年間パスポートを買って、たぶん週2-3回のペースで通ったと思う。飽きるかなとちょっと心配したりもしたけど、何度でも行けるのだからと気軽に見たいものだけを見る(あれもこれも見ようと頑張らない)という風にしていたし、アザラシやペンギンやシロクマの餌付けなどのショーもあって、最後まで飽きることなく楽しく通い続けた。水族館まで行く時間がないとき、暑くて涼みたいときは、家の前でプール。水着もちゃんと持っていったのに、なぜかいつも裸だった我が子たち…。


休みの日にはちょっと遠出もして。

海水浴(まさか日本海でビューするとは思わなかったなあ)、ビーチコーミング、入道崎や寒風山へドライブ、戸賀湾遊覧。そして、なまはげ館と男鹿真山伝承館。伝承館は、男鹿の典型的な民家で、なまはげ習俗を体験できる素晴らしい施設なのだけど、息子がなまはげに触られて号泣してしまい、なだめるのに精一杯で写真を一枚も撮れなかったのが悔やまれる(娘は危険を察知し入館を拒否)。


盛岡から、東京から、ゲストが3組も!

最初のゲストは、実はこの時がはじめましてだった、盛岡在住の料理家・吉田玲奈さん一家。共通の友人がいて、息子と同い年の男の子もいて、TwitterInstagram では長いことフォローしあっていたのだけど、実際にお会いするのはこの時が初めて。ちょうど到着予定の日に、家から車で1時間ほどのところにある五城目という町で朝市が開かれるということで、そこで待ち合わせをして、一緒に買いものをしてから、家までご案内。そしてその晩はなんと、朝市で買った地のものを使って料理を振る舞ってもらってしまった。なんという贅沢。最後の日の朝に作ってもらった桃トーストも、美味しかった。

続いてのゲストは、昨年の長野滞在にも遊びにきてくれた岡田家と、最初のゲスト玲奈さんとの間の共通の友人であり、なおかつ岡田家とも親交のある、パンチ(我々くらいしかこのあだ名で呼んでいる人はいないらしいが)。水族館にいったり、海に行ったり、手打ちうどんをご馳走になったり、家のなかの囲炉裏でいろいろ焼いて食べたり、手巻き寿司をしたり。前段のなまはげ館に一緒にいったのも、このメンバー。パンチと会うのは2年ぶりくらいだったし、みんなで会うのはいつも東京だったのに、秋田で会えたというのも不思議で新鮮で、楽しかった。


地元の方々と交流できたのも嬉しかった。

ふらりと入浴しにいった温泉の男湯で夫と娘が出会った漁師さんが、港にきたらサザエをあげると言ってくれたらしく、翌朝さっそく行って貰ってきたり。近所の家のおばあちゃんにもサザエをいただいたし、山で茗荷を採集してきた帰りだという通りすがりのおばあちゃんに茗荷をどっさりいただいた。さらに滞在先の家を借りる縁を繋いでくれた里山のカフェににぎのオーナー・猿田さんのお宅にも招いていただいて、郷土料理あんぷら餅をご馳走になるなど、男鹿のみなさんの優しさにたくさん触れた滞在となった。


そんなこんなで、秋田もまた、最高でした。海に沈む夕陽が次に見られるのは、いつだろう?

Instagram : #なまはげの国から2016夏


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