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ブラっとふたり旅

突然だが、落とし物を拾ったらどうする?
そりゃぁ、いうまでもない。
警察に届けるだわさ。
という方々が多数だろう。
だが、金銭や財布、定期券ではなく下着だとしたら…

わーお!

間違いなく殆どの方々は無視するだろう。
正直にいえば触りたくもないしね。
で、今回紹介する映画は下着にまつわる映画である。
邦題をいうのがチト恥ずかしい「ブラ!ブラ!ブラ!胸いっぱいの愛を」という大袈裟に聞こえるところが個人的には問題だと思う。

因みに原題は「The Bra」
こっちの方がよくね?

こちらの作品は台詞がない。
かつての無声映画(サイレン映画)というより、往年の名作ジャック・タチ監督・主演を務めた「ぼくの叔父さんの休暇」を連想させる。
そのため字幕がないので俳優の動きや背景を観察することで物語が構築される形となる。

簡単な概要を説明すると、定年を控える男は貨物列車の運転手。
広大な草原を走る際、線路内に町を通る必要があるため列車が来ると孤児(みなしご)の少年が町中に知らせ、線路内で寛ぐ人々や洗濯物を干している人々が一斉に線路内を開ける。

よくある出来事といえば、列車が車庫に入り掃除をすると洗濯物や玩具といった落とし物などが絡みつき、それらを拾い運転手の男は街に戻り返すことが日課となっている。

最後の出勤日まで余すところ、定年を迎える男は引き継ぎの若い男に手解きをする。

ある時、定年を迎えた男は一人で列車を運転中にふと目を民家に向ける。
すると窓の奥に顔は確認できなかったが、女性の下着姿が確認できる。
その女性はブラジャーを取ると後ろを向き、列車もその民家から遠ざかる。

その後、定年を迎える男は女性の下着姿が残像として悩まされる。

次の日にいつものように列車を走らせると、思いがけないものが列車の窓に張り付く。
それはなんと女性が身に付けるブラジャーである。

当初はものがものだけに職場のゴミ箱に捨てるのだが、引き継ぎの若い男がそれをゴミ箱から拾うと、いたずらに遊び始め、定年前の男は引き継ぎの男を正すように叱る。

再度ゴミ箱に捨てたブラジャーだが、定年前の男は脳裏にある下着姿の女性を思い浮かべる。
「そうだ、きっとあの時の女性の下着だと…」
そして定年を迎えた日から男はブラジャーの持ち主を探す旅へ出る。

するといつの間にか列車が来ることを知らせていた孤児の少年が相棒となり共に下着の持ち主を探す。
当然だが、なかなか見つけることは困難であった。
家を一軒一軒尋ねるのだが、なかなか該当する人とは出会えなかった。

二人はまるでシンデレラの靴を持ち主に返そうと探すのだが、何をしても空回り。

最後は意外な持ち主と出会すのだが、これは実際に鑑賞して頂いた方が良さそうだ♪

さて、この作品の醍醐味は冒頭で説明した通り俳優の台詞はない。
それと今時珍しいフィルムでの撮影で、しかも粒子の洗いものをあえて採用しているのだろう。
こういったことを逆手に取り、背景の色合いがどことなく懐かしさを感じ、広大な山脈が絵画のような映像もまた効果的に描かれている。
そして何といってもこの発想力が優れている点だ!
因みに監督はファイト・ヘルマーだ。
敏感な方なら共感して頂けるだろう、長編デビューは「ツバル」というモノクロ映画である。
この作品と今回紹介した作品の共通点といえば言葉に頼らない点だ。
「ツバル」は架空の島で独自の言語で語るので字幕がなく、実にグローバルな出来栄えとなっているのが特徴だ。
言葉に頼るのではなく、演じる側も観客側も想像しながら手探りをしつつ共感を得る事を狙っているのかは監督しか知らない事柄だ。
それにしても現実味がある映像に加えファンタスティックな要素が加わった内容に脱帽である☆

「ツバル」にも出演していたドニ・ラヴァンは久しぶりに見ると随分とおっさんになっていたことにも驚きだ。

追記、もし興味のある方は是非とも「ツバル」も鑑賞して欲しい♪

では、ボキはその辺をブラっと出かけてきますわ♪

きゃっ☆

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