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個人的に現金主義なのでクレジットカードや今流行りの〇〇Payなどは利用しない。
恐らく若い世代から見ると出遅れたオッサン、または乗り遅れた化石と称されるのだろう。

特に理由はないのだが、日本は幸いな事に他国と違い紙幣が信用できるから箪笥(タンス)貯金という隠し資産が成り立つ。
昔と違い銀行の金利は微々たるもので、であれば「げんなま」を隠し資産として流用した方が懸命だと信じる昔気質の人も珍しくない。

で、ボキは荻原博子ではないので経済の話をする訳ではない。
前説が少し長かったなぁ。
そこで本題。
今やウーバーイーツを利用する人は珍しくないだろう。
客はスマホなどで安易に注文し、決済も先ほど述べたクレジットカードや〇〇Payでのやり取りなので現金を利用しないので、客と配達員のトラブルもない。
即ち理想的な商売なのだ。

しかし、客には関係のない問題だが、配達員は注文した会社の従業員ではないのだ。
簡素にいうと会社と契約を交わす際、雇用形態が社員でもアルバイトではなくフランチャイズのオーナーのような素人には解りづらい契約を結ぶ。

そのため事故やトラブルがあった場合、全てが自己負担となるのだ。
収入は配達した分の取り分しかない。
そう考えるとメリットよりもデメリットが高い職業といえる。

こういった職業に近い話で結び付けると、ケン・ローチ監督作品の邦題「家族を想うとき」は今の現状を無視できない内容となっている。

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以前に紹介した「わたしは、ダニエル・ブレイク」と同様、辛辣な現状を捉えている。
目を背けたくなるシーンもあるが、実は映画を通して描いたノンフィクションにも似た現状を表現した内容に驚愕を隠せないのは確かだ。

今回の物語は四人家族の崩壊を描いている。
それにしてもケン・ローチ監督は人間の心理と社会の実情を事細かく描く達人と称しても過言ではないだろう。

夫のリッキーは家族のために家を持つ事を夢見ている。
以前は建築労働者だったが、リッキーは選り好みをできる年齢ではないので限られた職業しか選択肢はなかった。
最終的に選んだ職業は配達業務だ。

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冒頭で説明した通り、従業員としての雇用形態ではないため全てが自己責任となる。
過酷な状況下の中リッキーは必死に仕事に励む。

一方の妻アビーは訪問介護として働く。
移動手段は車だが、リッキーの転職先で大きな車が必要となり金目のものはアビーの車しかない。
二人は話し合った結果、借金もありつつもアビーの車を転売しリッキーが使う大きなバンを購入資金に当ててローンを更に払い続ける。

都会で暮らす以上、不可欠なのが共稼ぎだろう。
この映画だけの問題ではなく、日本も含めあらゆる国々の都会では物価が高い。
そうなると必然的に夫婦が力を合わせる必要がある。

両親が共稼ぎの家庭はやがて不協和音が鳴り響き、家族団欒で過ごす日が少なくなる。
やがて親と子供の間にストレスが生まれる。

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両親は子供のために努力を重ねるのだが、思春期を迎える子供にしたら両親の努力より子供にとっての不満しか残らない。

長男のセブは登校せず町中の壁に落書きを繰り返す。
行動がエスカレートし落書きに必要なスプレー塗料を万引きするところで捕まり、警察に引渡らせると両親は仕事を止めて息子を引き取りに行かなくてはならない。

いくら夫の職業が従業員扱いされてなくても、私用で仕事を止めるのは職場放棄とみなされ罰金が課せられる。
借金を抱えつつ生計を立てているにも関わらず、更に借金が増す悪循環に両親は頭を痛める。

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既に修復不可能な状態に陥った家族だが、またも不運にも夫が配達途中で強盗に襲われいくつかの配達物が盗まれる。
それでも夫は必死に抵抗するが、数人の若者相手では敵わなかった。
大きな傷を負い会社から連絡が来ると事情を承知で盗まれた一部の物に関しては保険が適用されるが、残りは罰金として課金されると伝えられる。
そばに居合わせた妻の怒りが頂点に達し、電話の向こうにいる人間に暴言を吐き捨てた。

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この物語を鑑賞して他人事ではないのは当たり前だが、イギリスのみの問題ではないと痛感した。
家族が崩壊したケースは様々だが、この映画の夫のように過酷な状況で保証もない勤務を強いられている人々もまた少なくはないはずだ。

かつては従業員は宝と称された時代もあった。
だが、いつしか従業員が使い捨ての時代へと突入する。

物は道具として成り立つが、人が道具として使われる現状を無視して過ごすことはできない。

人でなしという言葉以上に、ろくでなしな世界は狂っているとしか例えようがない。
だが、これが現状なのだ…

こういった感情が沸々と湧く作品でもある。

追記

最近になり、こういったニュースがあった!!

これは起爆剤でしかない。
卑屈に考えるのは実に簡単だが、もっと前を向いて歩くことが賢明なのか?!

わーお!

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