【多様性を考える】あなたを見つめる私の中のあなた
最近は変わってきたが、私はWeb小説を読めなかった。
Kindle出版のものでも、横書きの作品は頭に入ってこない。小説も実用書も。
「小説になろう」、など、弟や友人に勧められて読もうした作品があるが、どうしても読み進めれなくて、1Pでダウン、など、ひどい有様だった。
しかしnoteをはじめて、かなり最初の頃から拝読させていただいている作家さんがいる。
【織部】さんと仰る。
最近織部さんが、以前アップされた作品をマガジンまとめられて、検索の手間もなく、毎日少しずつ読めるように再掲されている。本当に助かっている。この方法なら、膨大なシリーズを気軽に読み返せるので嬉しい。
誠実で、確固とした世界観を構築された上で書かれている、と、どの作品を読んでも思う。
少し笑ってしまうファンタジー、息を飲むような絶望的な描写力など、いつ読んでも新しい。
様々な短編、連作小説をnoteで発表されていらっしゃるが、やはり、はじめてnoteでオススメした記事でもある、「フレンチトーストにオレンジピール」を紹介させていただきたい。
カフェを経営するタケルと、看護師のナミは、理想の夫婦だ。
どちらも異性を引きつける容姿、あふれるような才能に恵まれ、高校時代から付き合っていて、交際10年後に、籍を入れた。
周囲も祝福し認めるベストカップル。
穏やかな朝、タケルがナミに朝食として作るのは、丁寧に作った、甘みのないオレンジピールをいれた、フレンチトースト。
他愛ない会話、いつものルーティン、満たされた家庭。
そんな二人には、誰にも言えない秘密があった。
なごやかな短編と思って読み進めていたのだが、夫婦の秘密(それは当然、二人の根源的な秘密にもつながる)、思いがけない関係、その関係の破綻、そうして、お互いを唯一の理解者と信じていた、「共犯者」として成り立っていると思っていた二人の、歪と見える結びつきの確認で物語は終わる。
ソウルメイト、という言葉を知ったのは、私が10代の頃だった。
作品内でも出てきたが、魂がつながり合った伴侶ではあったのだろう。
だが、二人には、それを心から喜べない理由がある。
二人の魂の結びつきが強ければ強いほど、それは「呪い」となる。
私は結構乱読派と思うが、気に入ったら何回も読み返す癖がある。
その世界が心地よい、なにか胸に引っかかるものがある、理解したいはずなのにどうしても理解が及ばない、共感する。
読み返すのにはもちろん理由があるが、この作品は上記の理由の全てに当てはまった。
私のnoteを読んでくださっている人には、私には、恋人でもなく、家族でもない存在、北、という人間がいることをご存じの方が多いだろう。
私たちは、異常だ。
お互いに恋愛感情はない。
私が北にべったり依存で、北から搾取しまくっている。
北は、毎日私に電話して、LINEして、定期的に私の家に訪れ、買い物に付き合い、家のメンテナンスをして、纏まりつく私の癒やし、私が求めれば抱き合う。
北には思い人がいないが、私には恋をしている人がいる。
それを分かっていて、北と私は、寝る。
タケルとナミのように、強い魂の結びつきを感じるわけでもない。
私は北が好きだが、それは子供が盲目的に親を信じてついて行くような、幼い感情が元だと分かっている(そんな精神状態で私たちは知り合った)。
北も、私を一人前に育て直して、自立させること、そんな親目線で接してくれているのはわかる。
どこか壊れた私たちが、どうにか寄り添って長いトンネルを抜けて、やっと光が見えてきた、のかもしれない、そんなこの頃。
「フレンチトーストにオレンジピール」を、今日も読み返す。
何も似てない、せめてこんな関係であったら、もしかしたら私は救われたのかもしれないという思い。
そして、首筋に刃物を押しつけられているような緊張感で、ぼんやり感じる。
あなたを見つめる私がいる。
その私の中には、あなたが隠れている。
私を写すのは、あなた。
あなたを写すのは、私。
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