【副島隆彦】 ハマスはCIAが1986年から作った武装組織だ 今回のガザ地区戦争は<イランとサウジの仲を引き裂くために>アメリカ政府が仕組んで仕掛けたもの
抜粋
私はハマスは、アメリカのCIAが1986年から作った武装組織だと考えている。だから今回のガザ地区戦争は、真実は、アメリカ政府が、仕組んで仕掛けたものである。なぜなのか、をこれから説明する。
この10月7日にガザ地区から突如、非戦闘地帯(緩衝地帯。 DZE ディーミリタライゼイション・ゾーン))の、幅3キロぐらいの砂漠を踏み越えて行って、イスラエル人の居住地区に銃や手榴弾(グレネイド)で突撃していった1万人ぐらいのハマスの戦闘員たちがいる。どうやらそのうちの2000人ぐらいが、イスラエル側の郷土防衛隊によって自衛の反撃で殺されたようだ。その時、200人ぐらいのイスラエルの一般住民を人質で取って退却した。
これは特攻隊(決死隊)のやり方である。このハマスの兵士として死んだ、パレスチナ人の青年たちは、ハマスに焚(た)き付けられて、騙されて血気盛んとなって、イスラエルへの激しい憎しみと復讐心で突撃して死んだのである。
どんな時代も、どこの戦争でも、騙されて最前線で死んでいく若者たちが存在する。憐れなものだが、これが人類の戦争の歴史である。はじめの報道で、3500発のロケット砲がガザ地区の北部を占領するハマスの秘密基地から発射されて、イスラエル側の居住地区に落ちて、無差別の死者がたくさん出た。
このガザから発射されるロケット弾の映像は、日本でもニューズ報道されて、私も見た。
ハマス側は、今も2万発のロケット弾を持っているという。それらはどこから来たのか。報道で流れたのは、「ウクライナに行ったはずの砲弾が、死の商人たちによって、ハマスに売却され引き渡されたものだ」としている。
この裏側にアメリカ政府の動きがある。
従来ハマスは、ロケット弾など持っていなくて、手製の爆弾を作って、それを迫撃砲のようにして飛ばすやり方しかなかった。そういう粗末なもの以外は持っていなかった。今回も、西側(ディープステイト)は、まず英FT(フィナンシャル・タイムズ紙、10月11日)の記事を一番後(うしろ)に資料として載せるが、「モハンメド・ディーフという、この男が今度のハマスからの攻撃の凶悪な主導者である。片手片足がない。この男をイスラエル側は首謀者として殺そうとしている」と報道された。
このモハンメド・ディーフ の先生(師匠)が、ヤヒヤ・アーシュで、ハマス組織の中の一番の過激派であるようだ。手製のロケット砲を作った人たちだ。ハマスは、1980年代から、自分たちには、兵器がないので、イスラエル軍に対して、「インティファーダ(抵抗)」と称して、青年たちが激しく石を投げる戦いを始めた。ハマスと言えば、この「インティファーダ」で有名だった。古代から、本当の戦争は、投石だっただろう。石がまともに当たると本当に負傷する。
今回のガザ戦争は、だから、深く仕組まれている。だからこそ、この10月7日の突如の戦闘で、ほぼ大きな衝突は終わりであると私は最初から考えた。なぜなら、この10月7日というのは、「第4次中東戦争(1973年10月7日)」のちょうど50周年にあたる日だ。
私はこの日のことを大学生だったが、新聞で読んで覚えている。
中東戦争の歴史については、ここでは説明しないが、パレスチナ人の独立運動とイスラエル側の自衛戦争としての反アラブ諸国との激しいぶつかり合いが、この1973年に決定された。それから丁度、50年が経った。
>>>なぜ、今度のガザ戦争が起きたのか。一番大きな理由と原因は、今年の3月10日に、中国(王毅=おうき=外相)が、仲介して、仲裁者(ミィーディエイター)して、なんと、イランとサウジアラビアという中東の2つの大国が和解の協議をして、国交を回復したことである。<<<
(この3人の指導者が映っている写真をこの下に載せる)
サウジアラビアとイランの外交関係者と握手する中国の王毅・共産党政治局員(中央)2023年3月10日、北京
イランとサウジアラビアは、長年、激しく対立し争ってきたのだが、急に仲直りをして、平和を中東(ミドル・イースト)にもたらすという動きに出た。それを中国が後押ししたという事実は、世界歴史上の大きな動きである。
中東アラブの世界で、ほとんどがイスラム教徒だが、彼らが「もうイギリスとアメリカに騙されて、中東で新たな戦乱が起きることは望まない」と大きな決断をしたのだ。
イランは、イスラム教の中でもシーア派(シーアイト)という、やや差別されている宗派(セクト)の国である。
隣のイラクは、このシーア派の方がやや多数派の国である。イラク戦争(アメリカ軍が、2003年3月20日のバクダッド爆撃から、16万人の兵力で侵略した。そしてサダム・フセインを捕まえて縛り首にした)でイラクは弱体化していて、イランの影響下にある。
それに対してサウジアラビアは、イスラム教の中の主流派で、正統派とされるスンニ派(スンナー。ハンバル法学者集団による教義中心のイスラム思想)である。サウジアラビア国は、スンニ派の中のさらにワッハーブ派という矯激(きょうげき)なセクトである。
>>>それでもイランとサウジが仲直りして、中東世界が団結したことは、ものすごく重要なことだ。だから、これを叩き壊すために、ワルのアメリカが、動いて再び中東で戦乱を引き起こすことを計画した。それが今度のガザ戦争だ。<<<
大きくは中国による次の世界覇権(世界の安定を目指す)を邪魔して、妨害するための動きである。
ついこの間まで、イラク北部とシリアでの、IS(アイエス)。イスラム国という暴れ者の集団が戦争をやっていた。
あのISは、2014年の6月に、突如、7万人の兵力で、イラク北部に出現した。トヨタの「ランドクルーザー」SUV(砂漠に強い。アメリカのテキサス州で製造)の隊列を連ねて、出現した。ヒラリーたちデープステイトが、育てた「狂ったイスラム聖戦主義者(ジハーディスト)」たちだ。
ISの幹部たちバグダディ以下の青年たちは、アメリカのサウジの砂漠にある、米軍の軍事基地(米空軍の大きな飛行場でもある)で、米軍の特殊軍(CIAと反共右翼軍人の結合体)に、洗脳され、訓練されて、ISとなって、暴れ出したのだ。中東を、再び、火の海にした。
これに対して、アラブの民衆も指導者たちは、「もう戦争はイヤだ。アメリカが大きらいだ」と腹の底から思っている。
>>>ガザ地区を軍事的に占拠しているハマスは、決してパレスチナ民衆の代表ではない。今やシリアでほとんど全滅した、このIS「イスラム国」や、今のウクライナのゼレンスキー政権(アゾフ大隊。反ロシア反共右翼)と、全く同じ英米によって作られて、操(あやつ)られている武装集団である。<<<
今度のガザ戦争は、このような複雑な仕組みになっているから、普通の人々で、ちょっと世界政治に興味のあるレベルの人間たちでも、なかなか中東の全体像を理解できない。
私、副島隆彦はハッキリ書くが、日本の新聞記者やテレビで世界政治評論をやっている学者たちレベルでは、私が書いていることを理解できない。別に私は、私の考えに従えという気はない。だが、これまで20年、副島隆彦の言論や知識、思想につきあってきた皆さんは、静かに私の話を受け入れるだろう。
その次に重要なのは、この10年間、サウジアラビアは、イスラエルと仲良くしてきた。これは、アラブ諸国の大義(たいぎ。Cause コウズ。自分たちの強い正義感、信念 )である、イスラエルというユダヤ人国家をヨーロッパから帰ってきた白人ユダヤ人たちが建国したこと(1947年4月)を絶対に認めない、という態度を持つのだが、これに対しての裏切りの行動である。
だからサウジアラビアは、今もイスラエルと連絡をとっており、英米の仲介もあるので、イスラエルと対立していない。
さらにこれにエジプトも加わっている。
だからここで複雑な構造が生まれる。
サウジアラビアとしては、これ以上、事態を荒立てたくない。
イランも、イスラエルの北のレバノンにいるヒズボラという武装集団を動かしているのだが、これ以上、イスラエルと戦闘をする気はない。
>>>アラブ世界は、もう、アメリカに騙されたくないのだ。<<<
それでもイスラエルのネタニヤフ首相(リクード党という日本の自民党のような政党)が、自分の失策を挽回するために、ハマスに対して強硬な姿勢、すなわちガザの北4分の1のハマスの拠点を、イスラエル軍の戦車隊(メルカパという有名な戦車師団 )と歩兵部隊(GI ジーアイ。グラウンド・インファントリー)で制圧するという計画を立てている。
イスラエルのネタニヤフ首相
だが、このガザ地区の北4分の1にまだ、難民として南に逃げないで居残っているパレスチナ人たちがいる。不思議なことにさらにその南に、「ガザ市」という四角の地帯がある。ここにもハマスがまだたくさんいるようである。この北部の2つの地区以外に、全体の6割ぐらいの南のガザという地域がある。
ここは、イスラエル軍からほとんど攻撃を受けていない。どうやら、ここに住んでいるパレスチナ人たちは、イスラエル政府からも認定をされたアラブ人ではあり、イスラエル国民として認めている100万人ぐらいのパレスチナ人である。
この奇妙さを、私は昔から注目してきた。今のところ、これ以上の知識、情報が私に無いので、正確には分からない。
すでに50万人以上が、イスラエルからの警告に従って、非戦闘員(ノンコンバタント、一般市民 )として、北からこの南側のガザ地区に避難した。さらには、南のシナイ半島のエジプト領土側からもラフィという出口(検問所)から、脱出しているパレスチナ人たちもいる。
このパレスチナ問題の複雑さの説明は、一旦、ここで置く。
私、副島隆彦が論究してきた、世界史の中の「ユダヤ人とは、そもそも何者か」ということまで言うと、イスラエル国によって認定されているガザのパレスチナ人というのは、宗教は違うが、どうも、ほとんどがユダヤ人と同じ民族と言ってよいぐらいの人たちだ。
彼らはパレスチナ人なのだが、イスラエル政府に暴力(軍事力)で反抗する人々ではない。平和主義者(パシフィスト)だ。今のイスラエル国民の人口は、970万人である。そのうちのいわゆるユダヤ人は、730万人ぐらいである。残りの人たちはユダヤ人と結婚したアラブ人で、イスラエル国民の認定を受けている。これ以上の問題は、ここでは説明しない。
それでパレスチナ人全体を代表している政府機関は、PLO(ピー・エル・オウ)である。 PLOは、今のヨルダン川西岸地区(トランス・ヨルダン)(上掲の地図を参照せよ)と呼ばれる、イスラエルの古代からの首都とされるエルサレム(Jerusalem)からは東側だ。ヨルダン国からは西岸(せいがん)と呼ばれる西側だ。
ここにパレスチナ人たちの多数がいる。パレスチナ人だが国外に逃げていない人たちだ。イスラエル側が、第3次中東戦争(1968年)でエルサレムだけは奪い取って占領した。だから地図では、エルサレムに向かってイスラエルから棒が突き出たようになっている。
ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人の居住区の、東エルサレムと呼ばれる地区のラマラという町に、パレスチナ政府を名乗るPLO(ピーエルオー、パレスチナ解放機構)の今の代表のアッバス議長がいる。
アッバスの声明文を、以下に新聞記事で載せる。
アッバスは、ハマスを認めない。「パレスチナ人全体を代表する唯一の政府機関はPLOである」と主張し続けている。そして、この考えを国際社会、すなわち国連の決議がずっと毎回、毎回、採用している。
全文は以下で。
副島隆彦 投稿日:2023/10/27 05:38