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米国の分断~ ドッグパークで会ったトランプ支持者(1)<シリコンバレーは今日も晴れ>

米国大統領選挙前(2020年10月)のことだ。ドッグパーク(日本でいうドッグラン)で「車中生活者」らしき年女性と出会った。(なぜ「車中生活」と思ったかと言うと、駐車場で見た彼女の車の中には家財道具が詰み込まれており、彼女の様子も”風変わり”だったからだ。)彼女の連れた大型のミックス犬は、毛はボサボサで太っていたが、とても穏やかな犬だった。きっと可愛がられているのだろう。

フェンス越しに挨拶を交わした後、私達はしばし世間話をした。普段、政治の話は極力避けるのだが、その日は時期柄どうしても大統領選の話になってしまった。

「トランプを応援している」と彼女は目をランランとさせて言った。「彼がベストとは思えないが、バイデン含めワシントンの政治家は信用できない。これまで民衆は騙され、裏切られ続けてきた!」と早口でまくし立てた。
「そういう見方も...あるかもしれませんね」と私はドギマギと答えた。

彼女のような意見は、中西部や南部の小都市では一般的なのかもしれない。しかし、ここシリコンバレーでは、かなり稀有だ。大都市で働くホワイトカラーは、リベラル・左寄りの人々が多く、筆者の周囲の人々も殆どが民主党支持者だ。勿論中には共和党支持者もいるが、それでも「トランプはいい」と言い切る人は一人もいない(隠れ支持者はいるだろうけれど)。

「米国の分断」が叫ばれるようになってから久しいが、その傾向はコロナ禍で鮮明となってきている。アメリカは他に類を見ない「格差社会」だ。人口のトップ10%が国の富の約76%をコントロールし、下位50%が国の富に占める割合はわずか1%に過ぎず(2020年の11月時点)、この差は開くばかり。米国民の6人に1人が、日々の食事にも事欠く暮らしをしている(人口の3分の2が太り過ぎか肥満にあたるというのに、皮肉なことだ。)

近年、サンフランシスコ・ベイエリアの各地でも、新規の「食料の無料配給所」が設立されている。また失業等で家賃が払えなくなった「キャンピングカー生活者」が昨年から急増した。(筆者の居住する地域でも、増えるキャンピングカーが問題となっている。)

米国の「分断」は、深く”広い”。日本なら、街中で色々な社会経済的な層の人々を見かけるだろう。TV番組や書籍の好み、買い物をする場所、利用駅なども沢山のオーバーラップがあるはずだ。

他方、アメリカでは、そもそも中・上流と下流の人々が顔をあわせることさえ少ない。
生活圏がはっきりと分かれているからだ(そしてそれは郵便番号で大凡わかる)。住居、教育レベル、乗っている車、好む書籍やTV・ラジオ番組、食べ物の志向、運動習慣、はたまた(平均的な)体型までもが異なっているのだ。たまに出会っとしても、接点がほぼないのでお互い無視することになりがちだ。(パート2に続く

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