『トリノ風カツレツはどんなお料理?』
この1か月で一気に寒くなった北イタリアですが、気温が下がると食べたくなるお料理も変わりますね。
イタリアであれば煮込み料理を「ストゥファート/Stufato」、牛肉の煮込みは「ブラサート/Brasato」、揚げ物の「カツレツ」でパワーをつけるなら「コトレッタ/Cotoletta」でしょうか。
「コトレッタ」と書いても日本の皆さまにはあまり馴染みがないと思いますが、「ミラノ風カツレツ/Cotoletta alla milanese」と書けばわかりやすいでしょうか。
王道のミラノ風カツレツは、骨付き子牛ロース肉にパン粉を付け、バターを回しかけながら揚げます。中がうすいピンク色なのが最高な揚げ加減と言えるひと皿です。日本の「トンカツ」、オーストリアの「シュニッツェル」と並び世界中で知られているカツレツのひとつでしょう。
このミラノ風カツレツにはソースはなく、イタリアらしくシンプルにそのまま、またはレモンを絞っていただきます。
ところで、ミラノがあるロンバルディア州のお隣り、州都がトリノのピエモンテ州にも美味しいカツレツがあるのをご存知でしょうか。
このトリノ風カツレツがミラノ風と決定的に異なるのは、ご当地パンの「グリッシーニ/Grissini」を衣に使うところです。このグリッシーニを衣に使ったカツレツこそ「トリノ風カツレツ」であり、「グリッシノーポリ/Grissinopoli」と呼ばれるひと皿です。
「グリッシーニ/Grissini」は、17世紀サヴォイア公国の王子の食欲回復のためにお抱えのパン職人が消化のよい細長く、サクッとしたパンを考案したことが起源で、イタリアのレストランで最初に水とパンが提供される際、ピエモンテ州ではこの長細いグリッシーニも一緒に提供されるのが一般的です。
世界史が好きなひとならこのネーミングにお気づきかもしれませんが、イタリア語で接尾語の「~ポリ/―poli」はギリシャ語が語源の「都市」を意味します。この接尾語「~ポリ/―poli」、一度は耳にしたことがある表現「メトロポリス」ですがイタリア語では「メトロポリ/Metropoli」と言います。そしてカンパーニャ州の州都「ナポリ/Napoli」も「新しい都市」が語源です。
話を「グリッシノーポリ」に戻しますが、このレシピは1900年代初頭、イタリア人作家「エミリオ・サルガーリ/Emilio Salgari」氏が、トリノのパン・グリッシーニを使い、ミラノ風カツレツに対抗して考案されたものと言われています。最近では食べられるレストランが少なくなっていますが、ご当地パンのグリッシーニを使い、「グリシッシー二都市」とトリノをうまく表現したネーミングですね。トリノへお越しの際は、グリッシーニ都市らしいひと皿をお試しください。
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