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4-6 対戦順の説明の正誤 ~ モンティ・ホール問題をベイズの定理で解く

今回の統計トピック

複雑な条件の確率計算に挑戦します!
「直感的な確率の印象」と「実際の計算結果」が異なっている面白い問題です。
さらに不思議で面白い問題「モンティ・ホール問題」にベイズの定理でトライします!

公式問題集の準備

「公式問題集」の問題を利用します。お手元に公式問題集をご用意ください。
公式問題集が無い場合もご安心ください!
「知る」「実践する」の章で、のんびり統計をお楽しみください!

問題を解く


📘公式問題集のカテゴリ

確率の分野
問6 対戦順の説明の正誤(腕相撲の勝利確率)

試験実施年月
統計検定2級 2018年6月 問7(回答番号14)

問題

公式問題集をご参照ください。

解き方

題意
次の条件で2連勝を目指す場合、「T君-U君-T君の順で対戦する」と「U君-T君-U君の順で対戦する」のいずれが有利か、を解答します。

・T君に勝つ確率$${p}$$
・U君に勝つ確率$${q}$$
・$${0 < p < q < 1}$$

公式テキストより
腕相撲のイラスト:「いらすとや」さんより

3戦中の2連勝とは
次の2パターンがあります。
①第1戦と第2戦を勝利
②第1戦を敗北、第2戦と第3戦を勝利

最初にT君と対戦する「T君-U君-T君の順」のケース
①第1戦と第2戦を勝利する確率は、$${pq}$$です。
②第1戦を敗北、第2戦と第3戦を勝利する確率は、$${(1-p)qp}$$です。
2連勝する確率は、$${pq+(1-p)qp=pq+pq-ppq=\boldsymbol{2pq-ppq}}$$です。

最初にU君と対戦する「U君-T君-U君の順」のケース
①第1戦と第2戦を勝利する確率は、$${qp}$$です。
②第1戦を敗北、第2戦と第3戦を勝利する確率は、$${(1-q)pq}$$です。
2連勝する確率は、$${qp+(1-q)pq=pq+pq-pqq=\boldsymbol{2pq-pqq}}$$です。

どっちの確率が高い?
最初にT君と対戦するときの$${2pq-\boldsymbol{ppq}}$$と最初にU君と対戦するときの$${2pq-\boldsymbol{pqq}}$$の大きい方、つまり、$${ppq}$$と$${pqq}$$の小さい方が、2連勝する確率が高いです。
$${0 < p < q < 1}$$なので、$${ppq}$$の方が小さいです。
したがって、最初にT君と対戦する「T君-U君-T君の順」の方が2連勝する確率が高いと言えます。

お菓子のつかみ取りのイラスト:「いらすとや」さんより

いっけん、勝率の高いU君と多く対戦するほうが有利に感じます。
しかし、そうは問屋が卸さないのです(統計検定の醍醐味)。

この問題では、敗北する確率「$${1-p}$$と$${1-q}$$」の高さがその後に2連勝する事象の確率の高さにつながっています。
「どちらのシナリオのほうが起きやすいか」を計算していたのですね。

「2連勝する事象」の起きる確率の高さが、1戦1戦の勝利確率の高い方で決定付けられない、こんなことがあるなんて、面白いです。

解答

① です。

難易度 ふつう

・知識:確率全般
・計算力:数式組み立て(中)
・時間目安:1分

知る


おしながき

公式問題集の問題に接近してみましょう!
今回は、不思議で面白い確率の問題を確認してまいりましょう!

お題:モンティ・ホール問題

司会者モンティ・ホールのゲームショウです。
ゲームのルールは次の通り。

  1. 3つのドアの1つに当たり(景品)、残りの2つのドアにハズレ(ヤギ)がランダムに隠されています。
    プレイヤーは当たりのドアを選択して景品獲得を狙います。

  2. プレイヤーが1つのドアを選択します。

  3. モンティはプレイヤーが選ばなかったドアのうち1つを開けます。
    モンティが開けるのは、必ずハズレ(ヤギ)のドアです。

  4. モンティはプレイヤーに「ドアを選び直してよい」と告げます。

プレイヤーは「最初に選んだドア」と「選び直したドア」のどちらを開けるのが有利でしょう?

え?二択になったからどっちを選んでも当たりの確率は$${\boldsymbol{1/2}}$$ですって?

「ドアを選び直してよいです」

ベイズの定理

📕公式テキスト:2.3 ベイズの定理(62ページ~)

モンティ・ホールのドアをベイズの定理に当てはめてみましょう。

ベイズの定理の適用にあたって、次のサイトの情報を参考にさせていただきました。
ありがとうございました!

算定条件
3つのドアを$${A, B, C}$$とします。
各ドアが当たりの事象は$${A_{WIN}, B_{WIN}, C_{WIN}}$$です。
また、モンティが各ドアを開ける事象を$${A_{MONTY}, B_{MONTY}, C_{MONTY}}$$と呼びましょう。

1.プレイヤーは$${A}$$のドアを選びます。
プレイヤーがドアを選ぶ時点では、ドア$${A,C}$$が当たりの確率は$${\boldsymbol{P(A_{WIN})=P(C_{WIN})=1/3}}$$です。
これらの確率を「事前確率」と呼びます。

2.モンティは残りのドアのうち$${B}$$を選びます。

  • 当たりの条件を付けない場合、モンティはプレイヤーが開けたドアを開けることが無いので、モンティがドア$${B}$$を開ける確率は$${\boldsymbol{P(B_{MONTY})=1/2}}$$です。
    ドア$${B,C}$$の二択です。

  • ドア$${A}$$が当たりとの条件を付ける場合、モンティがドア$${B}$$を開ける確率$${\boldsymbol{P(B_{MONTY} \mid A_{WIN})=1/2}}$$です。
    ドア$${B,C}$$の二択です。

  • ドア$${C}$$が当たりとの条件を付ける場合、モンティがドア$${B}$$を開ける確率$${\boldsymbol{P(B_{MONTY} \mid C_{WIN})=1}}$$です。
    ドア$${A,C}$$は開けないので$${B}$$一択になります。

モンティがドア$${B}$$を開けたとき、ドア$${A}$$の当たりの事後確率$${\boldsymbol{P(A_{WIN} \mid B_{MONTY})}}$$、ドア$${C}$$の当たりの事後確率$${\boldsymbol{P(C_{WIN} \mid B_{MONTY})}}$$はどうなるでしょう?

ベイズの定理を応用して確かめてみましょう!

ベイズの定理

$$
P(A_{WIN} \mid B_{MONTY}) = \cfrac{P(A_{WIN})\ P(B_{MONTY} \mid A_{WIN}) }{P(B_{MONTY})} \\
  \\
P(C_{WIN} \mid B_{MONTY}) = \cfrac{P(C_{WIN})\ P(B_{MONTY} \mid C_{WIN}) }{P(B_{MONTY})}\\
$$

ベイズの定理に算定条件を当てはめてみましょう。

ドア$${\boldsymbol{A}}$$の当たりの確率(事後確率)

$$
\begin{align*}
P(A_{WIN} \mid B_{MONTY}) &= \cfrac{P(A_{WIN})\ P(B_{MONTY} \mid A_{WIN}) }{P(B_{MONTY})}\\
&=\cfrac{1/3 \times 1/2}{1/2}\\
&=\boldsymbol{1/3}
\end{align*}
$$

モンティがドア$${B}$$を開けたとき、ドア$${A}$$の当たりの事後確率$${P(A_{WIN} \mid B_{MONTY})}$$は$${1/3}$$です。
事前確率$${P(A_{WIN})=1/3}$$から変化しません。

ドア$${\boldsymbol{C}}$$の当たりの確率(事後確率)

$$
\begin{align*}
P(C_{WIN} \mid B_{MONTY}) &= \cfrac{P(C_{WIN})\ P(B_{MONTY} \mid C_{WIN}) }{P(B_{MONTY})}\\
&=\cfrac{1/3 \times 1}{1/2}\\
&=\boldsymbol{2/3}
\end{align*}
$$

モンティがドア$${B}$$を開けたとき、ドア$${C}$$の当たりの事後確率$${P(C_{WIN} \mid B_{MONTY})}$$は$${2/3}$$です。
なんと、事前確率$${P(C_{WIN})=1/3}$$から2倍に変化しました!

モンティがドア$${B}$$を開けたことで、ドア$${C}$$の当たりの確率がドア$${A}$$の2倍になったのです!
つまり、プレイヤーは「選び直したドア$${\boldsymbol{C}}$$」を開ける方が有利なのです。

なんだか、不思議です。

モンティがドア$${B}$$を開ける際に、「ドア$${A}$$が当たりのときに開ける条件付き確率$${P(B_{MONTY} \mid A_{WIN})=1/2}$$」と「ドア$${C}$$が当たりのときに開ける条件付き確率$${P(B_{MONTY} \mid C_{WIN})=1}$$」との間に「2倍」の違いがある点が効いているのです。

がしかし、合点がいかない違和感が残ります。

直感的な解はWikipediaの「数え上げ(ベイズの公式)」の図がわかりやすいのかもしれません。

プレイヤーがドア$${A}$$を選び、まだ、モンティがドアを開けていないときは、ドア$${A}$$の当たりの確率$${P(A_{WIN})=1/3}$$、ドア$${B,C}$$の当たりの確率$${P(B_{WIN})+P(C_{WIN})=2/3}$$です。

モンティがドア$${B}$$を開けたとき、ドア$${A}$$の当たりの確率は相変わらず$${P(A_{WIN})=1/3}$$です。
そして、$${P(B_{WIN})+P(C_{WIN})=2/3}$$のまま、モンティが開けたドア$${B}$$の当たりの確率が$${P(B_{WIN})=0}$$になるので、ドア$${C}$$の当たりの確率$${P(C_{WIN})=2/3-P(B_{WIN})=2/3}$$になる、という解です。


Pythonコードでどちらのドアが有利か確かめる
「選び直したドア」の「最初に選んだドア」のどちらの当たりが多いのか、Pythonコードで試してみましょう。
ぜひ、動かして、確かめてみてください!

Pythonコードの作成にあたって、次のサイトのコードを参考にさせていただきました。
ありがとうございました!

①インポート

import random

②モンティ・ホール問題
モンティ・ホールのゲームを100,000回繰り返し実行して、「選び直したドア」と「最初に選んだドア」の当たりの回数を確認しましょう。
試行回数と乱数シードを変更すると、当たりの結果が変動します。

# 初期値設定
num_trial = 100000  # 試行回数
players_change_door_win, players_1st_door_win = 0, 0
random.seed(777)

# モンティ・ホール問題を試行回数繰り返す
# ドアNo.は 0,1,2
for i in range(num_trial):
    # 当たりのドアの決定(ランダムに選択)
    win_door = random.randrange(3)

    # Playerが最初のドアを選択(ランダムに選択)
    players_1st_door =  random.randrange(3)
    # Playerが最初に選ばなかったドア群
    other_doors = [d for d in range(3) if d != players_1st_door]

    # モンティ・ホールがドアを選択
    # Playerが当たりのドアを選択した場合、はずれのドアを「ランダム」に選択
    if players_1st_door==win_door:   
        montys_door = random.choice(other_doors) 
    # Playerがはずれのドアを選択した場合、もう一方のはずれのドアを選択
    elif other_doors[0]!=win_door:
        montys_door = other_doors[0]
    else:
        montys_door = other_doors[1]

    # Playerがドアを選び直す
    players_change_door = [d for d in other_doors if d != montys_door][0]
    
    # 当たりのカウント
    if players_change_door==win_door:     # 選び直したドアが当たり
        players_change_door_win += 1
    elif players_1st_door==win_door:      # 最初に選んだドアが当たり
        players_1st_door_win +=1
        
# 当たりの結果を表示
print(f'試行回数:{num_trial}回',
      f'\n①選び直したドアが当たり :{players_change_door_win}回, ',  
      f'当たりの確率:{players_change_door_win/num_trial*100:.2f}%',  
      f'\n②最初に選んだドアが当たり:{players_1st_door_win}回, ',
      f'当たりの確率:{players_1st_door_win/num_trial*100:.2f}%',  
      f'\n①÷②:{players_change_door_win/players_1st_door_win:.2f}倍')

出力結果
試行回数:100000回
①選び直したドアが当たり :66690回, 当たりの確率:66.69%
②最初に選んだドアが当たり:33310回, 当たりの確率:33.31%
①÷②:2.00倍

ドアを選び直すほうの当たりは2倍です!
ベイズの定理、凄いです!

実践する


今回はお休みです。

「知る」のお題を解いてみましょう!


電卓・手作業で作成してみよう!

今回はお休みです。

EXCELで作成してみよう!

今回はお休みです。

EXCELサンプルファイルのダウンロード
今回はファイル提供はありません。

Pythonで作成してみよう!

今回はお休みです。
「知る」のお題を動かしてみましょう!

Pythonサンプルファイルのダウンロード
今回はファイル提供はありません。


おわりに

対戦順による2連勝の確率と、モンティ・ホールの当たりの確率を見てきました。
直感と異なる結果になって面白かったです。
これからも面白い話題を探して記事を書きます!

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。


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