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プロダクトデザイナーの見ているところ

どうも、今日もプロダクトデザイナーをやっています。ウチダです。
ひょっとしたら、お仕事の流れでプロダクトデザイナーと話したり、協力することもあるかと思います。
こういった時に、プロダクトデザイナーさんとのコミュニケーションがうまくいかないと、思い描いていたものとは違うものになって出てきたりするかもしれません。

ということで、本日は、プロダクトデザインを主にやっている身として、こういうところを仕事では意識して見ているよということについて書いてみようと思います。


■とりあえずリフレクション見とこうぜ

「リフレクション」という言葉ご存知でしょうか?「映り込み」でもOKです。プロダクトデザイナーがこと立体物に関して気にしているものの一つがこの景色が写り込んだ時の光の筋や流れです。

こちらは東京モーターショー2017に出展された「Mazda VISION COUPE」です。コンセプトカーなので、このまま形にすることは色々難しいですが、最近デザインがブイブイ言わせてるマツダの全力モデルです。

見ての通りこの車のハイライトのラインは、後ろのタイヤから前のタイヤにかけて鋭い弓なりに走っています。シュッとしていて抜き身の刀みたいですね。
次も有名な「±0」の深澤直人さんデザインの加湿器です。


こちらもツルッとした見た目(陶器のような質感を目指したと何かの雑誌でみました。)に見えるように、ギリギリまで映り込みの稜線が歪まないように気を遣っています。
これらを見てもらった通り、プロダクトデザイナーはものに映り込む景色や光の形状、それら光の通る道筋に特に気を遣います。
例えば、樹脂モノの成形などがうまく行かず面が歪んでしまうと、たちまちリフレクションは歪んでしまいます。
リフレクションが歪んでしまうと、モノとしての連続性に欠け、いかにも部品をツギハギしましたという印象に仕上がってしまいます。
リフレクションが歪んでいるかなんて普段気にしませんが、意識しないまでもなんとなく「これキレイじゃないな」と思わせてしまう特徴の一つです。

また、リフレクションの通り方をうまくコントロールできると、立体として360°の視線にさらされた時に変化する光の運動に秩序をもたらすことが出来ます。
例えば「VISION COUPE」なら、鋭い印象だけでなく、実際に表面を走る光が速く鋭く変化します(モーターショーにて確認しました)
加湿器なら、むにーっと光が動くので、なんとなくもったりした優しい印象を与えてくれます。(電気屋さんで確認しました)


■質感について

続きまして、質感についてです。
上で紹介した写真に加えて「コンビ」さんの「ベビーレーベルシリーズ」のお椀を紹介します。

こちらは柴田文江さんという女性デザイナーのデザインで、オムロンの体温計「けんおんくん」などでも有名なデザイナーさんです。
彼女はこのお椀を作るにあたって、「赤ちゃんの体のようなムッチリとした質感」にこだわったそうです。
部品同士のクビレの部分に赤ちゃんの手首のムチムチした感じを狙ったり、表面を乳白色で微妙に透ける樹脂にしたりと、使用するユーザーイメージや伝えたいメッセージを形と表面の質感で物語っています。

一言に質感と言っても、たくさん要素がありまして

1 表面の平滑度・キメ=表面の光の反射強度
2 素材の硬さ・柔らかさ
3 素材の暖かみ・冷たみ(感性的な部分)
4 素材の物理的な暖かさ・冷たさ(熱伝導率の差など物理特性)
5 面の大きさ
6 一体感・連続感

あたりが質感にかかわって来ていると経験的に感じています。


■パッケージデザインでも使える

パッケージを作っている方々なら、すでに無意識にやっていると思いますが、パッケージを作るにあたってプロダクトの目線をそのままに応用できると考えています。
紙の触感や重さ、暖かさなどを意識すると、パッケージの宣伝文句やグラフィカルな部分とは全く違うアプローチが可能になると考えています。

このお酒は「平和酒造」さん「鶴梅 完熟にごり」というお酒です。(画像はAmazonより)
このお酒のパッケージは、プロダクトデザインをやっている身としては結構ハッとさせられました。
ほとんど絵も無いし、ミニマルで無駄の無い余白のとり方も美しい。視覚的にはしっかりと引き算をしておきつつも、パッケージの紙がメチャクチャもふもふになっており、優しい印象も伝えています。
非常にかっこいいパッケージだと思っています。
ちなみに紙の銘柄は「ヴィベール」という銘柄で、紙の専門店「竹尾」さんで取り扱っています。ただ、どうやってコレ印刷するのかわかりません。なんとなくシルクスクリーンかな?


■まとめ

脱線しましたが、まとめます。
僕達プロダクトデザイナーがこだわるところは大きく

1 リフレクション
2 素材の質感

の2つになります。
前者は立体の視覚的な印象のコントロールに、後者は触覚や心理的な印象にアプローチする要素です。


少し長くなりましたが、本日はこのあたりで、おやすみなさい。

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