増補 社会原理序説
はじめに
こんにちは、dZERO新人のHKです。今回は、2014年刊行の『次世代へ送る〈絵解き〉社会原理序説』に新たに書き足された原稿を加え、改題された増補版である『増補 社会原理序説』を紹介させていただきます。
変化する時代において変わらないもの、それが「社会原理」
概要
ヘーゲルの弁証法的展開をベースに、時代の流行によって社会が変わっても、それでも変わらない人類と社会の仕組みの本質が示されています。「ハンバーガーの弁証法」や「マダルの虎」を使ったユニークで独特な視点で「社会の根本原理」を観察・分析されています。巻末には「正解のない問題集」が付録として添えられ、学問も哲学も、市井の人たちが考え問い続ける知的営みであるという著者の感性が随所に散りばめられた「みんなの哲学書」です。
著者紹介
著者は著述家、映画監督、大学講師の阪原淳氏。京都大学経済学部卒業後、電通を経て渡米し、カリフォルニア大学バークレー校でMBAを取得、シリコンバレーでベンチャー企業に参加されました。2001年に、製作に参加したアメリカ映画「Bean Cake(おはぎ)」がカンヌ国際映画祭短編部門でパルムドール(最高賞)を受けました。大学で客員研究員や講師をつとめながら、国内外のチームとともに映画作りを続けられています。
この作品のポイントと名言
日本人は、ゼロから自分の頭で「人間とはこういうことではないか?」「社会とはこういうことではないか?」と考える必要があるのではないかと思います。(増補版刊行にあたって、p2)
増補版の本書では、パンデミックという世界的な「流行」を踏まえつつ、それでも変わることのない社会の仕組みや本質を示したいと考えました。(増補版刊行にあたって、p3)
「社会原理序説」の中で、最も大切な考え方は「弁証法」です。弁証法はあることがらを「対話を通して吟味、検討すること」で、古代ギリシャの時代からありました。(2 社会はどのように発展していくのか、p16)
「技術」が現れたことによって、「社会」はその「技術」を取り込んだ、「新しい社会」に変貌します。(2 社会はどのように発展していくのか、p20)
社会に生きていると、今の社会のあり方を当然と考え、世の中の「ありよう」「やり方」、つまり「経済」は「これしかない」と思いがちですが、じつはいろいろとあるものなのです。(3 経済とは何か、p24)
「心配しなくても神さまがちゃんとやってくれるよ」という予定調和的なアダム・スミス流の経済学は、古典派経済学と呼ばれています。(3 経済とは何か、p24)
市場経済においては、貨幣を通じた売買によって、製品を交換するのですが、それ以外に大切なものが交換されています。それは「情報」です。(3 経済とは何か、p26)
世界はどんどん自由競争社会になり、グローバル化が進んだのですが、「本当にそれでいいのか?」という見直しも行われています。(3 経済とは何か、p28)
哲学は、人間が生きていく中で出合うさまざまな事象について、根源的に考える学問です。その中でもとくに、「真・善・美」について考えるのが哲学だと思います。(5 マダルの虎、p36)
社会が平和であるためには、社会の秩序が必要であり、その秩序を形成する大切な役割をマスメディアが果たしているともいえます。(8 社会の価値観を作っているのはだれか、p56)
仕事とは、シンプルにいってしまえば、ほかの人の役に立って、または、ほかの人が必要とすることをして報酬を得ることです。(10 仕事とは何か、p63)
人の役に立って、また、ほかの人が必要とすることをして報酬を得るためには、大きく四つの要素がそろっている必要があります。それは「個性」と「学習」と「経験」、そして「社会のニーズ」です。(10 仕事とは何か、p64)
「個性」を十分に発揮できるような、大きくて深い対象を見つけ、「学習」し、「経験」を積み、「社会のニーズ」に応えるのが仕事なのです。(10 仕事とは何か、p67)
起業家にとってたいせつなのはビジョンであり、社会的大義であり、勇気であり、そして、さまざまなことを高速に試みながら事業を育てる粘りです。(11 起業家になろうとする君へ、p74)
科学者や技術者になろうとするならば、自分が社会でどのような役割を担っているのかを強く意識しながら、人生を歩むことになるでしょう。(12 科学者、技術者になろうとする君へ、p77)
マスメディアは大なり小なり、社会秩序を作る保守の影響を無視することはできなかったのですが、インターネットの到来は保守の考えとは異なる意見や情報が行き交うことを可能にしました。(15 政治家になろうとする君へ(1)、p90)
本質的に政治家は、既存の勢力グループである保守によって支えられているのですが、他の社会と競争していくためには、社会変革者である起業家の存在が必要です。(15 政治家になろうとする君へ(1)、p91)
若い君には、「自分の社会」についても「相手の社会にしたのと同じように、徹底的に考察し、構造的に深く理解することに努めて欲しい。そうすれば、戦争をしなくてすむための解決の糸口が必ず見えて来る。(15 政治家になろうとする君へ(2)、p102)
問1 これからはまったく新しい社会が現れるかもしれません。それは、どんな社会でしょうか?(付録 正解のない問題集、p139)
問3 本書の大きなテーマの一つがヘーゲルの弁証法です。ヘーゲルの弁証法で説明できそうなことを一つ挙げてください。(付録 正解のない問題集、p143)
問6 経済学者にとっての大きな研究のテーマに「価値」と「価格」があります。あなたは「価値」をどのように決めていますか?(付録 正解のない問題集、p152)
問11 「才能に恵まれている」とか、「あの人には才能がある」「自分には才能がない」など、「才能」という言葉はよく使われます。「才能」とは何でしょうか。自分なりの定義を考えてください。(付録 正解のない問題集、p165)
dZERO新人HKのひとこと
時代の流行に関係なく、変わらない社会の本質「社会原理」が分かりやすく書かれています。巻末に「正解のない問題集」が付録としてある理由は、この本を読んだ人に考えて欲しいからなのでしょうね。考えるための指南書のようです。難しい言葉を一切使わず、考え出すと難しい事柄について、分かりやすい言葉で説明してくれているので、さらさらと読めました。
巻末の問題集をやりだすと、時間がいくらあっても足りません。正解がないからこそ、いくつもの答えが頭の中に浮かび、どれもが間違っているようでどれもが正しいような気がしてきます。しかしそうやって考えることこそが正解なのだと言われている気もします。自由に答えを出していいからこそ、簡単なようで難しくもあります。
最後に問1の私なりの(問いの本質を理解していないかもしれない)答えを載せておきます。
「社会とは自然に表れるものではなく、大衆が作り出すものである。ゆえに、大衆を先導する価値観の如何(いかん)によって、未来の社会はどのようにも変化する」
おまけ
【著者の監督作品】 阪原淳企画・監督・出演・製作のドキュメンタリー映画「ME AND THE CULT LEADER」の予告編です。
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