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賞レースにもっと絡んでもよかったのでは? 『正欲』稲垣吾郎、新垣結衣。

U-NEXTで『正欲』再見。 基本、映画は一期一会と思う方だが、あるシーンに再び出会いたくなり、そのためだけにまた観ることも。 本作では言うまでもなく、稲垣吾郎と新垣結衣の緊張の糸が張り詰める検事室での対決。そしてそれに続く恍惚となるほど見事なエンディングショットだ。どこにでもいそうな常識人の男を演じていながら、酷薄な父親へと転化した稲垣吾郎。これまでの明るいイメージを封印。まるで死んだ魚のような目で生気を消してみせた新垣結衣。役作りにかけたふたりなくしてはこの映画は成立

    • 清水寺から飛び降りるつもりで観てみた映画『夜明けのすべて』。

      『夜明けのすべて』。元パニック障害者として清水寺から飛び降りるつもりで映画を観てみた。 「清水寺?何を大げさに…」と思われるかもしれないが、その一般に「大袈裟」と思われる部分をどう描くかで映画の方向性は変わってくる。予想どおり、これはファンタジーになっていた。PMSに関しては(こちらが知らないからかもしれないが)過剰と思えるまでに、感情の暴発や抑えられない理性が描かれているのに対して、パニック障害に関しては、そのほとんどが言葉での症状説明。その苦しさが伝わってこない。「電車

      • 『夜明けのすべて』をパニック障害の人が観るという〈難作業〉について考えてみた。

        しばらく放置していたnoteだが、久々に書いてみたいテーマが見つかったのでページを開いた。それは『夜明けのすべて』。 なぜなら自分はこの病気(パニック障害)に四半世紀以上苦しめられ、一生付き合っていかなくては? と悩んだからだ。 やっかいな予期不安。 体がこわばった『キリング・フィールド』 「この映画に出会えてよかった」との感想を書いている人は、(おそらく)周りにそのようないたとしても自分自身は、まずパニック障害とは無縁なのではないか? この病気の恐ろしさは、一回起こった

        • 遠くて近く、近くて遠い。       映画という名の魔物。

          (序章) 猫や植物と語らう日々の暮らしの中、ちょっとしたきっかけで新しいことを始めてみようかなと思う瞬間(とき)がある。 とはいえ、もうかなりの齢を重ねた自分がこれまでとはまったく違うことに手を出すのも勇気がいる。そんなとき、ほんとうに懐かしいものが書棚の奥から出てきた。 それは20代〜30代の頃に在籍していた会社ぴあで手がけた「ぴあオリジナル広告」だ。 オリジナル広告、聞きなれない言葉だが、これはクライアントに企画を持ち込み、その媒体(ぴあ)独自の広告を宣伝部と共に作り

        賞レースにもっと絡んでもよかったのでは? 『正欲』稲垣吾郎、新垣結衣。

        • 清水寺から飛び降りるつもりで観てみた映画『夜明けのすべて』。

        • 『夜明けのすべて』をパニック障害の人が観るという〈難作業〉について考えてみた。

        • 遠くて近く、近くて遠い。       映画という名の魔物。

          リドリー・スコット「女性映画の系譜」としての『最後の決闘裁判』。真実は一つ!

          リドリー・スコットの新作『最後の決闘裁判』はよく黒澤明『羅生門』を引き合いに出される。 大まかのストーリー、それは「妻マルグリットが夫ジャンの不在中、夫のかつての親友ジャック・ル・グリに暴行を受ける。そのことを妻から知らされた夫は激怒し、国王に決闘裁判ですべての決着をつける」というものだ。だが、果たして妻の告白は真実か? このヒロイン、マルグリットをジュディ・カマー。夫ジャンにはマット・デイモン、その元親友ル・グリをアダム・ドライバーが演じる。 製作や脚本にマット・デイモン

          リドリー・スコット「女性映画の系譜」としての『最後の決闘裁判』。真実は一つ!

          『ボクたちはみんな大人になれなかった』のか?

          『ボクたちはみんな大人になれなかった」 あまりにも微妙な映画を観た。 タイトルを『ボクたちはみんな大人になれなかった』という。公開は11月5日だが「SNSでの紹介」を推奨されたので思うままを書いてみよう。 原作はSNSで人気を集める燃え殻さん。 テレビ業界の片隅に生きる主人公・佐藤(森山未來)の現代から25年前までが、フランソワ・オゾン『ふたりの5つの分かれ路』よろしく、時代を遡りながら描かれる。 しかし、まずはこのタイトルからして微妙だ。 【微妙1. 】果たして大人にな

          『ボクたちはみんな大人になれなかった』のか?

          2010年代映画ベストテン

          **ブロガー&SNS映画レビュアーによる10年代(2010~2019)の映画ベストテン** まだバリバリのブロガーだったころ、よくコメント、TBをいただいたしんさんからのお誘いで参加してみました。 (note初投稿) 【10年代 日本映画ベストテン】 1位『この世界の(さらにいくつもの)片隅で』 2位『ペコロスの母に会いに行く』 3位『寝ても覚めても』 4位『横道世之介』 5位『かぞくのくに』 6位『彼女がその名を知らない鳥たち』 7位『ハッピーアワー』 8位『共喰

          2010年代映画ベストテン