七三分けにグレーのトレーナー、センタープレスの入った安物の黒のスラックス、クラークスの黒のブーツ。淵の細い眼鏡を掛け、薄っすらと髭が生えている。スラックスとブーツの隙間から赤茶けた靴下が覗く。 彼が好きな雑誌は絶対にポパイだ。 少し寒くなったらこの上に古着屋で買ったブルックスブラザーズの紺色のジャケットか、ポロ・ラルフローレンのキルティングジャケットを着るのだろう。 腕時計はチープカシオに違いない。1000円ぐらいの黒ベースに青いラインが入ったデジタルのやつ。少し
1か月ほど新しい仕事を探していたのだが、中々上手くいかない。やはり就職はひとりでやると効率が悪い。経験者や一緒に仕事を探す仲間が必要である。 私はとりあえずプロに相談してみることにした。20代向けの就職、転職の某エージェントに登録すると、すぐに電話がかかってきて面談の日程が決まった。 面談では私の経歴や性格、将来のプランなどを聞いて、10個程度の求人を紹介してくれた。面談をしたアドバイザーと呼ばれる人は、30代前半の男性で、私の話をよく聞いてくれる人だった。 紹介
1 与える 2 受け入れる 3 知らないことを知る 4 他人を理解する 5 考えすぎる前に動く 6 他人に話す 7 人の話をよく聞く 8 もう遅いと思ったときに始める 9 過去を肯定する 10 本物を見に行く #今年やりたい10のこと
2023年は自分史の中で述べない訳にはいかぬ年であった。1月から3月は大学4年生という肩書でヌクヌクしていたから、正確には大学を卒業した4月以降の日々である。就職先がないまま不本意な形で社会に放り出され、モラトリアムの自由を謳歌するどころか、自由がこんなにも不自由で不安定なものなのかと思い知らされた年だった。そして今も何も解決の糸口は見つかっていないが、正月ぐらいは無責任に問題から目を背け、餅で上がった血糖値をなだめつつ、大局観をもって去年を振り返ってみたい。 まず、
結局私に残ったものは、なけなしの貯金と、疲れ果てた肉体だった。 私は彼らの正体が分からないまま、仕事を辞めざるを得なくなってしまった。 そろそろ限界と感じていながら、もう少し続けてみれば何か分かるかもしれないと思い、1か月ほど惰性で仕事を続けていた。11月最後の日、いつものように昼過ぎに出勤して開店の準備をしていると、時々身体に力が入らなくなる瞬間があることに気付いた。 まあ、ここ数日寝不足気味だから、帰ったら早めに寝ようと思ったぐらいで、これが体が発した最後のSO
4月から社会科見学のつもりでフリーターで生計を立て、満足したら辞めて就職すればいいやと思っていたのだが、最近もしかしたらこの生活から抜け出せないのではと思うようになった。 今の仕事は、長時間かつずっと忙しいという大変体力を使う仕事で、給料は埼玉県の最低賃金に毛が生えた程度で、週40時間働いてやっと家賃と食費が払えるという感じである。(筆者は実家暮らしだが) 週末に10時間も働いた日は、2日間病人みたいな生活をしないと疲れが取れないので、私の体力では週に40時間(8時間
頭がボンヤリとして何もする気が起きない日が何日も続く。 SNS上のショート動画の見過ぎだろうか。 最近本を読んでいないからだろうか。 睡眠不足だろうか。 タバコの吸い過ぎだろうか。 エロ動画の見過ぎだろうか。 いやどれも違う。 原因は分かっている。私は、働き過ぎている。 労働時間は普通のサラリーマンと比べて少ないぐらいだが、受けるストレスと、削られる心身の体力はかなり深刻なものである。 アルバイトなんだかキツいなら辞めればいいじゃないかと思うかもし
今年私が最も感銘を受けた文章である。 と言っても私がポール・ヴァレリーの本を書店で手に取るわけはなく(そもそも知らなかった)、ある本に引用されていたのである。 ちょっと難解な言い回しもあるが、これは和訳がかなり古いが故の分かりにくさで、理解できないからと言って自信を失う必要ない。と思う。 全能感と無能感に振り回され、世界を変える力が自分にはあると思えば、自分は何もできないと落ち込み、すぐに何かに感動し、すぐに何かを軽蔑する。自分は特別な存在で、自分に口を出してくるや
消えてしまいそうな火を、私は黙って眺める 息を吹き掛けると大きくなるよ と君は言うけれど 私は疲れた もう何年も、必死で消えないように 息を吹き掛けてきた そろそろ穏やかな呼吸がしたい 薪を焚べれば大きくなるよ と君は言うけれど 私が持ってる薪は全部濡れてしまった よく燃える薪は 昨日までに使い果たしてしまった 君の薪は君のところの火に使っておくれ 「また火が消えそうなんだね笑笑」 「ちゃんとしてよ笑笑」 と君は送ってきたけれど もしかして、君の火は、都市ガスで燃えてる?
もし、身近な人が、この世界に失望して、何もかも諦めてしまったら、私にできることは何だろうか。そんなことを考える一週間だった。 古い友人の状態が、少し前から良くないという一報を受けた。彼は数年前に仕事を辞めて、実家に戻っているということは知っていたが、まさかその理由がそんなに深刻なものだったとは知らなかった。 彼が実家に戻ってから、一度飲みに行ったことがある。その時の彼はいつも通りひょうひょうとしていて、高校時代から変わらない私の知っている彼だった。 彼が元気なこと
私の心は、怒りで満たされている 彼女にあんな歌を歌わせたことに あんな詩を書かせたことに 私の心は悲しみで満たされている 私の友達は死んだ 私との旅の計画を立ててるときにいきなり死んだ せめて美しい景色を見せてあげたかった 私の心は苛立ちで満たされている 「大丈夫だよ」と彼女に言ってやれないことに 奴のところに行って飛び蹴りをかましてやれないことに 奴だって実際に会ってみればいいやつかもしれないことに
本は紙派、電子派、買う派、借りる派、古本派、新品派、様々あると思うが、私は断然、新品を買う派である。 みんな違ってみんな良い。たまに「新品を買うなんてあなたはリッチね」なんて言われるが、それぞれでいいではないか。 ちなみに私が本を新品で買う理由は、単純である。欲しいときに手に入るからである。好奇心というのは簡単に生まれ簡単に冷める。あれが知りたい!あの本が読みたい!と思ったときに買ってしまえば、情熱が覚めないうちに読み始めることができる。そうすれば部屋に読んでない本が
ヒヤリとした冷たい感覚が身体に走った。 "それ"が影を現したのは、9月の終わりのことだった。酷暑も和らぎ、春からの新生活に慣れ平穏な日々が訪れようとしていた。 思えばここ数週間、"それ"の復活の兆候はあったかもしれない。兆候に気づいていれば、復活する前に手を打つことはできたはずである。しかし、最後に"それ"が現れてから数年が経つ。私は気づくことができずに、完全に"それ"の復活を許してしまったのだ。 私が初めて"それ"と出会ったのは、高校2年生の終わりの頃だった
世の中には寝る時間も無いほど長時間働いている人もいる。 今まで八時間働いて、残業はたまにあるぐらいの環境で働いていた私にとって、10時間を超える労働を毎日のように繰り返すという日々は信じられない世界であった。 先日、ある同僚から、彼の前の職場での長時間労働の話を聞いた。 その職場は飲食チェーンで、彼はそこで社員として20代の前半を過ごした。毎日10時出勤で、仕事が終わるのは深夜0時頃。繁忙期は2時や3時を超えることもよくあったという。 家から職場までは30分ぐらい
こんにちは、ダブリン太郎という響きがいまいち気に入っていないダブリン太郎です。 今年4月からフリーターと呼ばれるトライブに仲間入りして約半年、世の中にはこんなにフリーターがいるのかと思うほど、たくさんのフリーターと関わる機会があった。 ひとくくりにフリーターと言っても、さまざまなタイプのフリーターがいる。私がフリーターになる前から思い描いていたような典型的なフリーターから、意外な理由でフリーターをしている人、フリーターでしか生きることができない人たちを観察していると
「朝起きてから最短で何分で家を出られるか」という話題はよくあるけど、「家に着いてから何分で寝られるか」という話はあまりしない。家に着いてからできるだけ早く寝るということは、結構人生において大事なスキルなのではないかと思う。 私の以前の職場が、仕事の終わりが午後9時で、翌日の出勤が朝の7時というよくわからない時間帯の仕事で、仕事が終わり家に着くのが午後9時半、翌朝起きるのは5時45分ぐらいであった。家について遅い夕飯を食べてテレビを見てお風呂に入って、、、としているとあっ