世代を超えて・・・
最近、何か面白い映画見た?
うちの宿に興味を持ってくれる若い人たちは、どんな映画を見て感銘を受けているのか、そんな素朴な興味から宿泊されていた若いカップルに尋ねてみた。
すると即座に声を合わせて「ルックバック」は最高でしたという答えが返ってきた。いや〜めちゃくちゃ刺さりました、号泣でしたと興奮気味に語る2人。
原作は、漫画家の藤本タツキさん。少女二人があるキッカケで出会い漫画家になる話なのだそうだが、何が良かったの・・・と聞いても、とにかく刺さった、泣いたという話ばかりで要領が掴めない。ただ彼らの心に大きな衝撃を与えたことだけは、痛いほど伝わってきたので、その真相を確かめに奥さんと見に行くことに。
最も得意で自信にあふれる領域で、自分より優れた圧倒的な才能に出会ったときの衝撃。そして、どんなに努力してもそれを超えられないと理解する絶望。その絶望を乗り越えて、葛藤しながらも漫画家として大成していく主人公・・・。
たった1時間の上映とは思えない濃密な時間、気づけば美しいピアノ曲と共にエンドロールが流れており、妙な胸騒ぎを伴う余韻が続く映画だった。ただ私には心に刺さるとか、号泣するというより、自分が駆け出しの映像ディレクターとしてもがいていた日々を思い出し、主人公たちの才能とひたむきな情熱に、爽やかな敗北感みたいなものを感じていた。
宿泊してくれた若いカップルが何度も「刺さる」と語った思いとは、一体何だったんだろうか?
どうしても気になったので、この映画の原作を描いた藤本タツキさんの人気アニメ「チェンソーマン」がアマプラにあると知り、見てみることにした。
ある種のスプラッタームービーというのか、殺しまくって、血や内臓が溢れかえるシーンが連続。それでも、不思議と嫌な感じに包まれることもなく引き込まれる。
何なんだ???・・・この感じ。
主人公のデンジは、親が残した巨額の借金で闇金に追われ、学校に通うこともなくデビルハンターとして命懸けで働くが、働いても働いても手元に金が残らず、まともに飯も食えない。夢は食パンにジャムを塗って食べること、女の子と仲良くなること。「希望を最初から持ちえない」という描写、「今の時代の殺伐としたリアリティーを表現すること」で、圧倒的な支持を得ているようだ。
原作の藤本タツキさんは、1992年生まれ。
バブル経済が崩壊し、大人たちが夢を語らなくなった時代に彼は生まれた。宿泊してくれたカップルが何度も「刺さる」と言っていた思いは、きっとその世代にしか共有できない、そうした時代性が深く関わっているんじゃないだろうか。
ただ、彼が生み出す作品が、60を過ぎた私の心をも揺り動かしたのは確か。夢を諦めざる得ない状況だとしても、その根底に流れる人の欲望や安らぎを求める心は、形は違えど、少なからずどの世代も持ち得ているもの。
だからこそ、彼の作品が多くの人々から支持を集めているんだと思う。
世代という枠を超えて、支持されるものとは?
万人に通じるものこそ、常に新しいものなのかもしれない。
NOMAyadoのあるべき姿が・・・、そのヒントが微かに見えた気がした。
フラワーアーティストのpètaleさんと造形作家で画家のLand Watanabeさんの
展覧会をNOMAyadoで開催します。
NOMAyado special exhibition 海を撒く
2024.9.14 sat ~ 10.14 mon open 10:00~15:00
(オープン日時はNOMAyadoインスタグラムでご確認の上、ご来場ください)
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