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【小説】オオカミ様の日常

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自作小説『街風』にも登場した大神(オオカミ)様が主役の物語。 個性が強すぎる他の大神様たち、自分の下で働くミカのような神様たち、神様になりたてのカナエとタマ、様々なことに巻き込…
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#短編小説

【小説】 オオカミ様の日常 第8話 「オオカミ様は起こされる」

【小説】 オオカミ様の日常 第8話 「オオカミ様は起こされる」

 「ねえねえ、本当に入って良かったの?」

 「大丈夫だよ。おいで。」

 2人はひそひそと話しながら、勝手に社へと入っていった。いや、勝手というのは少し違うだろう。きちんと門前で何度も挨拶をしたのに、家主からの返事が一向に返ってこなかったので、しびれを切らして社の中へと入ったのだった。

 「ねー、ねー、ネズちゃん。あのおじいちゃんのオオカミ様を一目見てほしいってどういうことなの。オオカミ様とは

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【小説】 オオカミ様の日常 第7話 「オオカミ様は紹介する」

【小説】 オオカミ様の日常 第7話 「オオカミ様は紹介する」

 「おはようございます!」

 オオカミ様は、まだ戻らないオオカミ姿の自分の毛並みを愛おしそうに毛繕いしていた。相変わらず戻るような気配も無い姿に、半ば諦めのようなものも感じていた。朝陽が差し込む大広間で寛いでいた頃に、その声は社の入り口から聞こえた。

 「入ってきてよいぞ。」

 社の入り口に届くように大きく吠えて声の主がやってくるのを待つ。今日は12月も終わりに近づいていたが、差し込んでくる

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