マンボウ@血液内科医

血液疾患に対して、患者さんに正確かつ最新の知識を持って頂きたいと思い、病気のこと治療の…

マンボウ@血液内科医

血液疾患に対して、患者さんに正確かつ最新の知識を持って頂きたいと思い、病気のこと治療のことについて書いています。新しく病気の診断をされた方、治療中の方を対象としています。

マガジン

  • 献血Thank you!

    「献血に行ってきました」「輸血いただきました」そんなノートをまとめています。 キャンペーン期間中に私の絵を使って記事を書いていただいた方にはサポートを行います。 献血はどんな感じなのか、どんな気持ちで輸血を受けているのかが知れる温かいマガジンになるといいなと思います。

  • 慢性骨髄性白血病

    慢性骨髄性白血病(CML)の記事をまとめました。

最近の記事

  • 固定された記事

血球は骨髄で作られる

皆さんの血管の中を流れている血液には3種類の血球が流れています。 1. 白血球 2. 赤血球 3. 血小板 です。 白血球は自分じゃないもの(細菌など)を見つけてやっつける働きをしています。 赤血球は体の各臓器に酸素を運んでくれます。 血小板は血液を止める働きをしています。 白血球がないと免疫が落ち、赤血球がないと息切れが強くなり心不全に陥り、血小板がないと勝手に出血します。 これら血球は全て骨の中にある骨髄(こつずい)にある造血幹細胞から作られています。 骨髄

    • 新型コロナウイルス感染予防の注射 エバシェルド

      SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)が出現してから3年が経ちました。 この間にワクチン、治療薬が開発され、またウイルスの変異があり、COVID-19による死亡率は下がってきました。 2021年3月に致死率1.94%であったのが、今は0.2%にまで下がってきているようです。(https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221228-00329722) 死亡率の低下に合わせて、また感染対策の社会的な影響もあり、感染

      • 慢性骨髄性白血病の方の花粉症

        スプリセルを内服したら、花粉症が軽くなったというツイートを元に、なるほどそういうこともあるかもなと思いました。 花粉症は、主に花粉の影響で肥満細胞からヒスタミンなどの物質(メディエーター)が放出されることで、症状がでます。 SYKというキナーゼを抑えると、肥満細胞のメディエーターの放出が抑制されることがわかっています。 スプリセルもこのSYKを抑える働きがあるため、花粉症症状が改善することもありうると考えました。 スプリセルで花粉症が改善する報告があるかを調べましたが、特

        • 造血幹細胞移植後のSARS-CoV-2 mRNAワクチン

          2021年11月26日のデータで日本の一週間のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)平均感染者数が78人となりました。 第5波の真っ只中だった2021年8月24日は23147人から考えるとかなり減り、気持ち的には安心して過ごせるようになってきました。 ただここで新たな変異株オミクロン株が出現し、デルタ株より感染力が強いのではないかと懸念されており、まだ長期的な安心はできないようです。 前回の記事で血液疾患の方は感染しやすく、重症化しやすいと書きました。 血液疾患を

          有料
          100
        • 固定された記事

        血球は骨髄で作られる

        マガジン

        • 献血Thank you!
          49本
        • 慢性骨髄性白血病
          6本

        記事

          血液疾患とCOVID-19

          新型コロナウイルスのことをSARS-CoV-2と呼ぶことは前回の記事で伝えました。 SARS-CoV-2による感染症のことはCOVID-19(コヴィッド ナインティーン)と言います。 今回は血液疾患を持つ方に対してCOVID-19がどういうものなのかを見ていきましょう。 血液疾患を持つ方、治療中の方、造血幹細胞移植後の方は、血液疾患のない方と比べて、免疫が低い状態です。そのためCOVID-19のリスクが高いです。具体的には以下のようなリスクがあります。 感染しやすいど

          有料
          100

          血液疾患とCOVID-19

          SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)とワクチン

          SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)とそのワクチンについてです。 本題に入る前に、名称の整理だけさせて下さい。 2019年12月に新型コロナウイルスが登場して、1年8ヶ月が経ちました。いつまで”新型”なのでしょうか。 英語では初めはこのウイルスを2019 novel coronavirusと読んでいましたが、今はsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2)となっています。 読み方はサーズ

          SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)とワクチン

          献血の日

          本日8月21日は献血の日だそうです。 昔は今のように赤十字の血液センターでのみ献血が行われていたわけではなく、民間の商業血液銀行がありました。そこで血を提供するとお金がもらえるとのことで、頻回に血を売る人がいたりして、提供される血液の質が悪かったりしました。 そこで1964年の8月21日に政府が輸血用の血液は売血ではなく献血で賄うと閣議決定しました。 この閣議決定により、今の献血の体制が整備されていきました。 整備されてきたことで、現在献血・輸血は安心安全なものになっ

          ⭐︎フォロワー1000人キャンペーン!⭐︎

          2020年3月から血液疾患に関連のある一般の方向けにツイッターを始めて、フォロワーが1000人となりました。同時にnoteのビューも2万を超えました。 日頃私のツイート・noteを見ていただきありがとうございます! 「1000人で何か始めようかな」とツイートしていましたが、キャンペーンを2つ行いたいと思います。 ①献血Thank you! キャンペーン献血でいただいた血液があって、日頃輸血を行うことができています。輸血があって、血液疾患の患者さん達は安全に治療を受けるこ

          ⭐︎フォロワー1000人キャンペーン!⭐︎

          胃MALTリンパ腫

          悪性リンパ腫は現在約90種類に分類されていますが、そのうちの一つMALTリンパ腫についてです。 MALTリンパ腫はどこにでも出来うるのですが、一番よく発症する部位は胃です。 今回は特に胃MALTリンパ腫について書きます。 MALTリンパ腫はB細胞性リンパ腫の7-8%を占め、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫に次いで多い悪性リンパ腫になります。(Top画像は古いので濾胞性リンパ腫より多いですが) 胃にできることが多く、胃にできる悪性リンパ腫のうち

          有料
          100

          悪性リンパ腫の治療効果判定

          治療の効き目は人それぞれで、うまくいく人もいれば、残念ながらいまいち効きの悪い人もいます。 病気の診断がつき、治療を開始した後は、治療が効いているかを確認する必要があります。 今回は悪性リンパ腫の治療効果判定についてです。 体から触れるところにリンパ腫がある方は、ご自身でも治療で小さくなってることを自覚できるかもしれません。その場合は効いていると思ってもらって良いです。 医師も診察で触れるリンパ腫を触り、小さくなってることを確認し、治療効果を感じています。 採血で初

          悪性リンパ腫の治療効果判定

          完全寛解とMRD

          白血病や悪性リンパ腫など血液悪性疾患の治療を受けると、治療が効いたかどうかの効果判定をします。 「病気を発症した時に少なかった血球が寛解導入療法後に回復してきた」、「治療を開始してLDHが下がった」、「はれていたリンパ節が小さくなった」 これらどれも治療は効いていると考えられます。 ただ身体中からどれくらい悪い細胞が減っているのかを確認したいですよね。 それらを確認するために、急性白血病なら骨髄検査、悪性リンパ腫ならCTやPET検査などで全身の画像検査を行います。 今

          再生不良性貧血とCOVID-19

          再生不良性貧血は白血球が少なかったり、免疫抑制療法を受けていたりで、免疫の低い状態となります。 好中球が少ないために、細菌や真菌にかかりやすくなります。 細菌や真菌に比べて頻度は落ちますが、ウイルス感染も起こりやすくなります。免疫抑制療法は細胞性免疫を低下させますので、ウイルスを押さえ込む力が弱くなります。 さて、今世界中で流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、再生不良性貧血の方にとって大きな危険性をはらんでいるのでしょうか。 やはり免疫の低い疾患

          再生不良性貧血とCOVID-19

          骨髄不全症のPNH血球

          骨髄不全症とは再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、赤芽球ろう、などをまとめた呼び方です。 再生不良性貧血や骨髄異形成症候群の中でPNH血球があると、免疫抑制療法が聞きやすいことが分かってきています。 そもそもPNHとはPNHは発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria)という病気の頭文字です。 夜寝ている間に赤血球が壊れて、朝のおしっこがコーラ色になることがあるため、このような名

          骨髄不全症のPNH血球

          再生不良性貧血ってどんな病気?

          再生不良性貧血についてです。 どんな病気?再生不良性貧血は骨髄中の血球を作る細胞が減り、血球が減ってくる疾患です。イメージは骨髄が空っぽになる感じです。 白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などは、血液のがんで悪性疾患ですが、再生不良性貧血は良性疾患にあたります。 ですので、悪性疾患と異なり、再生不良性貧血では悪い細胞が増えて困るというようなことは基本的にはなく、もっぱら患者さんが困らされるのは血球が少ない事により起きてくる問題です。 また移植の前処置を除いて、抗がん剤を

          有料
          100

          再生不良性貧血ってどんな病気?

          予後は知りたい?

          自分や家族ががんになった時、悪い予後を知りたいか、知らせたいか。 Twitterでアンケートに答えてもらいました。 自分の事なら悪くても予後を知りたい人が93%と、多くの人が知っておきたいと思っている事が分かりました。 一方で、家族の事になると知らないままにしてあげた方が良いと思う人が33%いて、自分の事とギャップがあります。 悪い予後を知ることは辛い悲しいことで、知らないで済むなら知らないままにして、悲しませないであげようという思いやりからこの様な結果になっているの

          予後は知りたい?

          同種造血幹細胞移植後の二次癌

          先日Twitterで移植後15年での2次癌の発症率について、皆さんの考えを聞きました。 結果がこちらです。 2014年にAtsutaらが日本の移植データ(16歳以上の成人)をもとに解析したところ、移植後15年での固形腫瘍の累積発症率は2.9%でした。(Ann Oncol 2014;25:435) よって、答えは3%です。 適当に選んでも1/4の確率で当たるはずですが、3%を選んだ人は14%という結果でした。 皆さんは知らないというよりも、勘違いしているのだということ

          同種造血幹細胞移植後の二次癌