造血幹細胞移植後のSARS-CoV-2 mRNAワクチン
2021年11月26日のデータで日本の一週間のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)平均感染者数が78人となりました。
第5波の真っ只中だった2021年8月24日は23147人から考えるとかなり減り、気持ち的には安心して過ごせるようになってきました。
ただここで新たな変異株オミクロン株が出現し、デルタ株より感染力が強いのではないかと懸念されており、まだ長期的な安心はできないようです。
前回の記事で血液疾患の方は感染しやすく、重症化しやすいと書きました。
血液疾患を持っている方にとっては、持っていない方に比べより怖い存在だと思います。皆さんできるだけ感染したくないことと思います。
予防のために個人でできることは、手洗い、マスク、3密を避けること、それとワクチン接種です。(個人的にはうがいの効果は限定的と思っています)
でも免疫が低い状態でワクチンを打って、どこまで効果が出るのでしょうか。
今回は造血幹細胞移植後のSARS-CoV-2 mRNAワクチンの効果について解説していきます。
mRNAワクチンについての説明はこちらの記事をどうぞ↓
移植後の免疫低下
同種も自家も造血幹細胞移植後は、生着をした後であってもしばらくリンパ球に関する免疫が低い状態です。
特に液性免疫、細胞性免疫が長期にわたり低下します。
ワクチン接種で得られる免疫は、この液性免疫と細胞性免疫があって得られるものです。この免疫が下がっている状態で、ワクチンを打ってどれくらい効果があるのでしょうか。
移植後のSARS-CoV-2 mRNAワクチン
造血幹細胞移植後のワクチンの効果をみた論文がいくつか出てきました。
アメリカからの報告(Blood Cancer Discovery. 2021; 2: 1-9)では、mRNAワクチンを受けた同種造血幹細胞移植後の人149人、自家末梢血幹細胞移植を受けた61人、CAR-T細胞療法を受けた7人の抗体反応について調べられています。
まず同種造血幹細胞移植を受けた方の結果からです。
ワクチン接種の時期は中央値移植後1109日(63-5186日)です。2ヶ月ちょっとで接種した人から、何年も経って接種した人まで含まれています。
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