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悪性リンパ腫の治療効果判定

治療の効き目は人それぞれで、うまくいく人もいれば、残念ながらいまいち効きの悪い人もいます。

病気の診断がつき、治療を開始した後は、治療が効いているかを確認する必要があります。

今回は悪性リンパ腫治療効果判定についてです。

体から触れるところにリンパ腫がある方は、ご自身でも治療で小さくなってることを自覚できるかもしれません。その場合は効いていると思ってもらって良いです。

医師も診察で触れるリンパ腫を触り、小さくなってることを確認し、治療効果を感じています。

採血で初め高かった可溶性IL-2RLDHが下がってきた時も、多くの場合は治療が効きリンパ腫が縮小していることを示します。

ただ悪性リンパ腫というのは必ずしも体の表面から触れられる所にのみできるものではありませんし、採血だけで体の中にリンパ腫の塊がなくなったことが分かるものでもありません。

前回の記事に書きました一部の白血病のように骨髄でMRDを測ることもできません。

全身の評価をするのには、CT検査PET検査といった画像検査が最適です。

CT検査

CT検査では放射線を使って体の中を見ることができます。腫れていたリンパ節の大きさを確認することができます。

腫れたリンパ節がなくなっていたら完全寛解です。残っていても小さくなっていたら部分奏功です。逆に大きくなってしまっていたら、それは進行してしまったことになります。

PET検査

ブドウ糖が取り込まれるところに行くような放射性薬剤を使って撮影を行う画像検査です。

悪性リンパ腫を含む悪性腫瘍はブドウ糖をよく使うため、PET検査ではリンパ腫があるところは赤く光って見えます。

悪性リンパ腫がなくても赤く光るところはあって、上の絵に書きました脳・心臓・おしっこは基本的に赤くなります。

CTでは形でしか評価できませんでしたが、PET検査では形によらずリンパ腫があるかないかを確認できます。ですので、CT検査よりしっかりとした評価ができます。

例えば、塊を形成していない骨髄の中にあるかなどは、PET検査で分かります。また塊は残っていても、PET検査では光らず、生きたリンパ腫の細胞はないと判断することもあります。

抗がん剤治療や白血球を増やすグランやノイトロジン、ジーラスタといったG-CSF製剤を使った後は、PET検査で赤く光りやすく、本当はリンパ腫がないのにリンパ腫があるように見えてしまうことがあります。

そのため、一般的には治療中はPET検査をすることはなく、CT検査で評価します。

全ての治療が終わってからPET検査を行い、治療効果判定を行います。

PET検査を受けるときの注意点

ブドウ糖が取り込まれるところに放射性薬剤が集まって、PETの画像を撮ることができるので、検査前に血糖値が上がるとうまく検査できません。

その為、検査前は食事は抜いてください。また糖尿病の方は薬をどうするか決めておく必要がありますので、検査前に主治医と相談してください。

この放射性薬剤はリンパ腫だけでなく炎症のあるところにも集まります。その為、風邪をひいている人がそのままPET検査を撮ると首のリンパ節が赤く光ってしまいます。

PET検査の予定日前に風邪をひいたり熱が出たりした場合は、そのまま検査を受けるのではなく、主治医や検査をする人に伝えてください。

最近の話題

先ほど、「一般的には治療中はPET検査は行わない」と言いましたが、実は治療中にPET検査を行う、interim PET(インテリム ペット)というのがその後悪性リンパ腫が治るかどうかを見る良い指標になることが分かってきています。

StageⅠ-ⅡのDLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を対象とした2019年の研究(NCTN S1001)では、R-CHOP3コース行った後、3コース目の治療開始から15-18日目の所でinterim PETを行っています。

128人に行い、110人がPETでリンパ腫の残存を認めなかったとのことです。この残存を認めなかった方達は、4コースでR-CHOP療法を終了としていますが、5年PFSは89%5年生存率は91%という比較的良い結果となっています。
※PFSとは無増悪生存期間といい、リンパ腫の再発なく生存できている期間のことです。

StageⅠ-ⅡのDLBCLに対しては放射線治療を行わない場合は、R-CHOP療法6-8コースがガイドラインでも勧められている標準的な治療法になります。
interim PETで腫瘍の残存を認めなかった方達は一般的なR-CHOPよりコース数が少なくしているにも関わらず、5年の生存率PFSは比較的良い結果となっています。

途中でPET検査を行うことで、R-CHOP療法がよく効いている人といまいちな人を早期に見分けることが可能になってくるかもしれません。

見分けることができるようになれば、よく効いている人には余計な化学療法を減らし副作用を減らすことが可能になり、効きがいまいちな人には追加の治療を行うことで治癒率の向上が期待されます。

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